2012.03.07

真の輝きのために 菊池大介(湘南ベルマーレ MF)

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 弱冠20歳。しかし菊池大介は2012年でベルマーレでのキャリア6年目を迎えた。彼がデビューを果たしたのは、高校に入学して間もない時のことだ。

 2007年7月7日、わずか16歳で湘南ベルマーレの一員として平塚の芝に降り立ち、J2の最年少出場記録を塗り替えた。初年度の出場はこの1試合のみに終わったが、翌年の7月27日にはリーグ初ゴールを叩き込み、こちらも最も若いレコードを打ち立てた。“湘南の至宝”と称されたクラブの新たなアイドルは今、多くの期待とともにファンに愛されている。

 だがすべてが順風満帆ではなかった。反町康治監督が就任すると出場機会は激減した。2009年はわずか6試合のみの出番に終わり、1部昇格を果たしたチームとは対照的に苦しいシーズンを過ごした。試合に飢える若武者が選んだのは、2部のチームへの期限付き移籍だった。

「移籍はすんなり決まりました。ベルマーレで出場機会があまりない状況でザスパ草津からオファーをもらい、僕の中ではすぐに『行こう』と」

 草津でもすぐにファンの心をつかむ。シーズン終盤、ヴァンフォーレ甲府戦での活躍は今でもザスパファンにとっては語り草だ。2ゴール1アシストと見事な活躍を披露したのだが、このアシストはFW高田保則のJ2単独最多ゴールを導くパスだった。

 異なる環境で得たものは大きかったようだ。

「向こうには知り合いも誰もいなかったですし、環境も未知でした。そんな中でのプレーはすべて自分次第で成長できると思いました。実際に行ってきての収穫は、大人になれたかな、と。色んな人に出会えてサッカー観も変わりましたし、人間的にも成長できました」

 修行の成果は2011シーズン、大きく表れる。湘南に帰還し反町監督の信頼をつかみ取ると、リーグ34試合に出場した。本来のサイドハーフだけでなく、トップ下で新境地も開き、攻撃の中心として躍動した。チームの不調にと共に一時は先発を外れたものの、終盤には再びスターティングメンバーに返り咲く。

 複数のポジションを巧みにこなしたためだろう。本人も好感触を得ている。

「攻撃にかかわれればどこでもこなす自信はあります。今はFWに近い位置でプレーしていますが、試合を重ねるごとにいろんなことが学べますし、楽しめています。周りとの関係という意味でも重要なポジションなので、攻撃の時だけでなく守備の時もコミュニケーションがとれればいい形でボールに触れます。ただ、やっぱり攻める時に僕の動きがカギになってくるので、その点はすごく楽しいですね」

菊池
昨シーズンは本来のサイドハーフだけでなく、トップ下で新境地も開き、攻撃の中心として躍動した

 チームは昇格を逃したが、彼個人は心身ともに調子はいいようだ。メンタル面のケアもプレーに影響したと話している。

「体もよく動くし、コンディションはいいです。やっぱり気持ちというのはプレーにも影響しますし、普段の生活から心を充実させることを考えています。その部分が上手くいっているのは、連戦でも楽しんで走りきれている要因になっているのかなと思います」

 調子が良ければ代表でのプレーも頭をよぎる。これまで年代別代表に各カテゴリーで選出されており、U-19日本代表では韓国に敗れ、U-20ワールドカップ出場を逃すという悔しい経験もした。当時のチームメートの多くは、現在ロンドン五輪出場を争うU-22日本代表に名を連ねている。

「J1や五輪予選のチームにも、一緒に戦ったことのある選手がたくさんいます。試合を見て『自分だったら……』とイメージもします。代表での経験というのは、普段とは違うメンバーとチームメートになるので、すごくいい刺激になるんですよ。年齢も近いし、仲間ではあるんですけど、ポジション争いもあるので負けたくない。世代で言えば僕にもチャンスはあるので、また選ばれたいですね」

 大きな舞台へ意識を向けるだけの根拠はある。昨シーズンは傍目にはこれまでのベルマーレでのキャリアでは最も充実した一年だったように映る。だが自身が掲げる目標にはまだ及ばず、納得もしていない。決して浮き足立つことはなく、目の前に集中している。

「U-22代表を見て考え込んだりもしました。かつての仲間を見て『自分は本当にこのままでいいのか』って。実際、クラブの成績もよくなかったですし、入ってないのは当然だと思います。シーズンを通しての出来で言うならば満足は出来てないです。それでも僕には僕の道がありますし、周りと比べるよりも、今はベルマーレで結果を残せるようにしていきたいです。それがまた代表にもつながっていくと信じています」

 代表、そしてその先へ。しかし、いや、だからこそ“今”という言葉を繰り返す。

「具体的に考えたことはありませんが、いずれ海外に出たいという希望はあります。でもそのためにも大事なのは今なので。2011年の苦しい戦いというのも貴重な経験値になりますし、新シーズンに生かせればと思います。まずはこのチームで結果を残したい」

 「結果」とは間違いなくJ1への復帰だろう。かつて中田英寿、ホン・ミョンボらを擁しアジアを制した湘南の暴れん坊も、今ではセカンド・カテゴリーでくすぶる存在になってしまった。かつての栄光をクラブにもたらすために、未完成の自身を磨き上げるために、まずは1部昇格を目指す。それこそが菊池大介の“今”なのだ。真の輝きのために――“湘南の至宝”に立ち止まる暇はない。

取材・文=中村 僚(サッカーキング・アカデミー
写真=兼子愼一郎

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