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愛を持ってクラブで働く 奈良 彬(東京V 事業本部 営業・ホームタウン推進部)

2012.02.28

 きっかけはイタリアでの一年間だった。フィレンツェの熱狂的なサポーターが、サッカークラブで働きたいという思いに火をつけた。

「大学生の時に一年弱、イタリアのフィレンツェに留学していたんです。その時にフィオレンティーナの試合を見に行ったんですけれど……」。そう言って、サポーターの熱烈すぎる応援を思い出した。

 東京ヴェルディの奈良彬(なら ただし)さんは、イタリアのスタジアムをなつかしみながら熱狂的な応援の根底には地元への愛があると語る。

「とにかくサポーターはフィレンツェ愛が強いんですよ。その地元愛の裏返しもあるんでしょうね、セリエAファンならよく知っているように、フィオレンティーナのサポーターはユヴェントスが大嫌いなんです。ユーヴェ以外との試合でもユヴェントスを野次るぐらい、とにかく嫌いなんです」

 クラブで働きたいという動機はこの瞬間に生まれた。イタリアで芽生えた夢を次のように語る。

「その時、強い地元への愛を目の当たりにして思ったんです。『自分の住む街のクラブを応援するっていうことはこんなに素晴らしくてこんなに熱いことなんだ!』って。そういった経験をしたので、地元に愛されるクラブって良いな、そんなクラブで働きたいなと思うようになりました」

 愛する地元クラブは東京ヴェルディだった。

「Jリーグが始まった当時、小学校5年生で東京に住んでいました。当時見たヴェルディのパスサッカーには子供ながら魅了されましたね。その時からヴェルディを応援していたので、そういった意味でもこのクラブで働けたら一番良いなと思っていました」

 大学卒業後、いったんは一般企業に就職したがサッカークラブで働きたいと思う気持ちは消えなかった。しかし一般公募の少ないスタッフ職、なりたいと思ってなかなかなれるわけではない。それでも奈良さんは容易に夢を諦めなかった。ヒューマンアカデミー主催の東京ヴェルディ公開講座を通しクラブの仕事の一部を経験。2010年、晴れて東京ヴェルディに転職した。

「ずっと憧れていたヴェルディで働けていることは、すごくうれしいです」。子供の頃から応援していたクラブのスタッフとして充実した毎日を過ごしている

 2011シーズンまでは企画・広報、2012年からは営業を担当し、充実した日々を送っている。

「企画・広報としては主にホームページの更新、選手の取材対応などを行いましたね。ツイッターやフェイスブックで情報を発信するといった業務も担当しました」

 平日はクラブの情報を常に発信し続け、週末はホームゲームの運営と、働き尽くめだった。「休みは少ないですよね」と激務に苦笑しつつも、子供の頃から憧れていたヴェルディで働いている事実に充足感が漂う。

「子供の頃スタジアムで見たラモスさん、カズさん、北澤さん、都並さんなど黄金期のヴェルディは憧れでしたから」

 原体験がよほど強烈だったのだろう、幼少期から抱き続けてきたヴェルディへの思いは今でも色褪せない。

「ずっと憧れていたヴェルディで働けていることは、すごくうれしいです。スタッフジャージとかエンブレムが付いている物を身に着けているときはヴェルディで働けて良かったなと感じますし、同時に責任も感じて仕事をしています」

 ヴェルディへの愛着は無意識に現れる。手元にある緑色の手帳にちらりと視線を送る。「ヴェルディで働き始めてから緑色の小物が増えていくんですよ。小銭入れとか、時計とか緑が増えていくんですよね」

 ヴェルディへの愛がクラブで働くモチベーションの一つであることは言うまでもない。熱い思いとともに目指すクラブ像は、イタリアで衝撃を受けた地元に愛されるクラブだ。

 奈良さんは言う。「黄金期のヴェルディはどちらかというと全国思考という感じだったと思うのですが、今のヴェルディは地域密着でホームタウンに根ざした存在にならないといけないなと感じています」

 力強く語った理想像への道筋は見えている。イタリアで感じたとおり、地域に根ざした関係が不可欠だと言葉をつなぐ。「もっとホームタウン活動をしてたくさんの子供たちにスタジアムに来ていただきたいですね。地元に愛されるクラブになるには楽しいサッカーで勝利するヴェルディの姿を子供たちに見てもらうことが非常に大切だと思います」

 子供の頃ヴェルディに魅了された経験は、理想とする地域密着とは無関係ではない。目指す未来と幼少期の自分が重なり、希望に満ちた口調で続ける。

「子供は試合で得た感動をずっと覚えています。それこそ僕もそれでヴェルディが好きになったので。子供の頃に得た感動で長くヴェルディを好きになってもらえれば最高ですね」

 ホームチームの試合を見てヴェルディを好きになった少年。その幼いサッカーファンが成長し、クラブ職員として地域に愛されるクラブを作っていく。愛を持って地域密着を体現していく。彼のような存在は、間違いなく地元に根ざすクラブの理想型の一つだろう。

インタビュー・文=川上敬之(サッカーキング・アカデミー
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サッカーキング・アカデミー

By サッカーキング編集部

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