2015.06.17

女子フットサルの存在を広めていきたい 眞境名オスカー(VEEX TOKYO Ladies監督)

眞境名オスカー
眞境名オスカー

「フットサルもサッカーも男子がやるスポーツだとよく言われるけど、今はそういうものじゃない。女子もやっているんです」

 眞境名オスカー氏は、真剣な顔でそう話してくれた。

 オスカー氏は日系3世のブラジル人で、サンパウロから600キロほど離れたトッパンという町で1964年に生まれた。15歳の頃まではサッカーをしていたが、仕事の都合上、続けるのが難しくなり、たまたま友達と興じたフットサルに魅了されてフットサルプレーヤーに転身することになる。

「フットサルは、体格差があまり関係ないじゃないですか。コートが狭いので、頭を使ってパスを回し、スピードを生かせば勝負できる。そこがフットサルを好きになった理由ですね」

 17歳の時にブラジルの2部リーグでプロデビューを飾り、「アラ」というドリブルやシュートの能力、そしてスピードが重要なポジションで活躍する。1987年に日系人選抜チームの一員として初来日。1989年には移住を決断した。

フットサルのラインがないのはショックだった

 移住してきた当初、日本にはまだフットサルという概念がなく、サッカーがオフシーズンの間に室内で行うミニサッカーという程度の認識だった。そのため、いろいろな衝撃を受けたようだ。

「日本の体育館にはフットサルのラインがなかったし、ゴールもパイプをつなげたものだった。選手たちの動きも、フェイクしながら動いてパスを受ける技術すらなかった。ただ走ってボールを蹴るだけだったんですよ。コートの周りにスポンサーの看板がないのもショックでしたね。今、Fリーグには看板がありますが、実はあれがあると、ボールをどこのスペースに出すかの目安になるんですよ。ないとどのあたりにパスを出せばいいかのイメージが湧かなくて難しい。何もかもが大変でした」

 1998年にフットサルチーム「FIRE FOX」(ファイルフォックス)を結成。始めは選手兼監督という立場だったが、徐々に両立が難しくなり、1年後には監督業に専念することになる。

「試合に出たいけど、他の選手も起用しないといけない、というジレンマが大きくなってきていました。チーム発足から1年くらい経った頃には若手も育ってきて、選手を指導する責任も自分にはあるし、兼任するのは中途半端だったので、監督一本にさせてもらったんです」

 2001年には全日本フットサル大会で優勝を果たす。徐々にフットサルが日本に浸透し始め、2006年には日本初のプロフットサルクラブである大洋薬品/BANFF(現・名古屋オーシャンズ)の監督に就任する。翌年には全国リーグの日本フットサルリーグが開幕。その後はステラミーゴいわて花巻などの監督に就任するが、当時は選手のプロ意識に、若干の違和感を覚えていたようだ。

「スタッフや選手のプロ意識は、まだまだ低かったですね。ブラジルでは、一流の選手はフットサルだけでも生計を立てられるんですけど、それ以外は会社で働きながら選手を続けている。日本に来るような選手にしても、絶対にプロで食べていく気持ちを持って来ていますし、チームで活躍しないと契約更新できない。スタッフや選手にそういう気持ちを根付かせて、もっとプロに近付けたかったんです」

眞境名オスカー

解散を乗り越え新しくなった「VEEX TOKYO Ladies」

 日本で約10年間、男子フットサルチームの監督を指揮した後、2010年に「FUNフットサルクラブ」の監督に就任し、初めて女子フットサルチームの指揮を執ることになる。オスカー氏の下、チームは全国規模の大会で11回ものタイトルを勝ち取ったが、2013年3月21日、第13回東京都女子フットサル大会優勝の翌日に突然、解散を発表。オスカー氏はFUN時代の選手とともに「VEEX TOKYO Ladies」を発足させ、エントランスリーグからの再出発を図ることになった。

 東京都女子フットサルリーグは、女子エントランスリーグ、東京都女子フットサル2部リーグ、東京都女子フットサル1部リーグと3つのカテゴリーに分かれている。1部リーグに優勝し、関東女子フットサルリーグ参入戦を勝ち抜くと、FUN時代に所属していた関東女子フットサルリーグに参入できる。

 新たなスタートを切ったVEEXは、エントランスリーグで優勝。翌年には2部リーグ優勝も果たした。その他にも東京都女子フットサル大会で優勝するなど、FUN時代と遜色ない実力を発揮しているが、一方で苦労も絶えないという。

「FUNのときは必要なものが揃っていたけど、VEEXになってからはコートを借りるところから始めなければならない。選手たちの自信、チームとしてのまとまりも、ゼロから作り上げなければならなかった。練習中の役割を分割したり、遠征時のホテルの予約を選手に任せたりすることで、少しずつ一体感を生み出していくようにしました」

VEEX TOKYO Ladies、そして女子フットサルの未来

 現在、VEEXは東京都女子フットサル1部リーグに所属している。今シーズンは5月3日に開幕し、現在は第2節までを終えて1勝1敗、8チーム中4位という状況だ。リーグ優勝し、参入戦で勝ち上がれば関東リーグに戻ることができ、目標である全日本女子フットサル選手権の優勝にも近付ける。

「自信を付ければ、そう遠くないと思うんです。東京都1部リーグで優勝して関東リーグに行き、関東代表になって全国大会のナンバーワンになりたい。ナンバーワンになれば若手も自信を付けてチームが変われるし、プレーにもそれが表れてくると思います」

 チームの強化に加え、オスカー氏には女子フットサルの普及というもう一つの使命もある。一般的認知度の低い女子フットサルを普及させるためには、どうするべきなのか。オスカー氏は最後に熱く語った。

「Fリーグのように、女子も全国規模のリーグ戦が必要です。それから、現状では地方開催の大会が多く、観客は選手や関係者ばかりなんです。会場が国立代々木競技場第一体育館や駒沢オリンピック公園総合運動場体育館なら、少しでも興味のあるサポーターが見に行きやすくなるんじゃないかな。そうやって環境を整えて、少しずつ女子フットサルリーグの存在を広めていきたいですね。選手たちは良いパフォーマンスを見せているので、興味がある方はぜひ見に来てください」

インタビュー・文=鈴木寛多(サッカーキング・アカデミー

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