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磐田・名波監督が練習参加の高校生MFを“名波二世”と大絶賛「昔の俺を見ているようだ」

2016.09.14

名波監督を唸らせた高校生MF針谷岳晃 [写真]=川端暁彦

 日本サッカー史上に名を残す希代のレフティーが、練習参加の高校生MFを自らの現役時代と重ね合わせて大絶賛した。

 9月13日、ジュビロ磐田の練習場にU-19日本代表MF針谷岳晃(昌平高)の姿があった。この時期、高校生や大学生が“就職活動”で練習参加するのは別に珍しくもないのだが、練習後に監督からここまで言われる選手は珍しいかもしれない。練習生の印象を聞かれた名波浩監督は「やっとその質問が来たか」とばかりにニヤリと笑って、「最高だね」と語り始めた。

「何のストレスもない。俺の高校時代を見ているようだった。まず、ムダがない。ボールの置きどころもいいし、(リスクのあるパスを)やめられるのもいい。ボールを失ったのは3回かな。でも、2回は縦パス。ミスで失ったのは1回だけだった。よく(サッカーを)知っている。トライアングルに入っていく判断などは(川辺)駿よりもいい」

 レギュラークラスの選手を引き合いに出しながら、2泊3日の予定で練習にきたばかりの高校生に、相当な手応えを感じたことを明らかにした。「俺のようだ」という表現は、日本代表の司令塔だった名波監督にとって、同じセントラルミッドフィールダーの選手に対して贈る“最高級の賛辞”と言えるだろう。

 針谷本人も「雰囲気がすごく入りやすかった」と、一歳年長のFW小川航基などにも親切にしてもらったようで、最初のボール回しの練習から徐々に溶け込んでいった。

針谷岳晃

プロの練習に参加しながらも、持ち味を発揮した針谷 [写真]=川端暁彦

 プレーのフィーリングは磐田の哲学と合う部分も多いようで、名波監督については「足下で持つイメージが一緒かな」と相思相愛を思わせる。特に9対9(GK含めて10対10)の練習では「ゲーム形式のほうが自分を出せる。(マークを)外すところ、スルーパス、自分がいつもやっていることを出せた」と好感触の様子だった。名波監督が「ドリブルのコース取りもいい」と認めたように、いきなりプロに混じってしっかりと得意なプレーを出すのはなかなかできることではない。周囲が徐々に信頼してボールを預けるようになっていったのも印象的だった。

 針谷は茨城県のFC古河ジュニアユース時代までは全国的に無名の選手。ポジションも左サイドバックで、当時を知る関係者はいずれも「目立つ存在ではなかった」と口をそろえる。当時、本格的に「欲しい」とオファーを出してきたのは昌平高だけだったそうで、進路の選択肢も少なかった。ただ、そういう選手が化けることがあるのが高校サッカーの醍醐味と言うべきだろう。進学後にボランチという天職を見付けて、才能を開花させていった。

 磐田とは縁もある。U-19日本代表の内山篤監督が針谷の存在を意識するようになったのは、彼が2年生だった高円宮杯プリンスリーグ関東でU-19のエースストライカー小川を擁する桐光学園高相手に活躍していたからだった。「小川の様子を見に行ったら、何か相手の昌平高校にいいのがいるぞと気付いた」(内山監督)。そもそも内山監督自身が磐田の出身であり、名波監督を含めてフィーリングが合うのは必然なのかもしれない。

 これまで針谷は川崎フロンターレ、セレッソ大阪、湘南ベルマーレに練習参加。「大学は考えていない」とキッパリと言い切り、プロ一本に道を絞っている。身長165センチと身体的に恵まれているわけではないため、「プロでやれるかどうか」の一点に関してスカウト陣の中でも評価の分かれる選手なのだが、サッカーの妙味が詰まったような好選手であることは誰もが認めるところ。元日本代表の天才司令塔が初日で早くも押してみせた太鼓判は、そのセンスを証明するものだった。

文・写真=川端暁彦

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