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退場者出すも初戦突破…東海大仰星、勝利のための準備と貫き通したポリシー

2017.01.01

勝ち越し点を決めた東海大仰星の松井 [写真]=高見直樹

取材・文=川原宏樹(提供:ストライカーデラックス編集部)

 大阪府と静岡県という全国でも屈指の激戦区を勝ち抜いてきた同士の戦いは、東海大仰星がゲームの主導権を最後まで藤枝明誠に渡さず、2-1で逃げ切り勝利した。細かいパスワークで後方からゲームを組み立てようとしていた藤枝明誠は、初戦の硬さからかミスによる自滅が目立ち、序盤から東海大仰星に決定機を与えてしまう。その後も負の連鎖は続き、前半23分にFKからオウンゴールという形で相手に先制を許してしまった。後半に入り、メンバーチェンジとポジションチェンジをきっかけに自分たちの形を作ろうとした藤枝明誠は丹羽一陽のドリブル突破からFKのチャンスを得る。それを中道慶人が左足でファーサイドのネットへ突き刺し同点に追いついた。ここから藤枝明誠のペースになるかと思った直後のプレーで、東海大仰星のキャプテン・松井修二が目の覚めるようなシュートで得点し、藤枝明誠の追撃ムードを打ち消した。その後、退場者を出した東海大仰星だったが10人で守り切り、苦しい展開の試合をものにした。

 前半は全くといっていいほど、自分たちのサッカーをさせてもらえなかった藤枝明誠だが、勝てるチャンスは十分にあった。丹波一陽がドリブル突破からFKをもぎ取り、そのチャンスを中道慶人が直接ゴールへ沈めた。チーム一のテクニシャンとキッカーが、この試合で初めて仕事をして、会場は追い上げムードになっていた。

 しかし、「ハーフタイムで『1点を取られるかもしれないね』と話をしていました。その中で、『失点後も慌てずにしっかりと声をかけあって、もう一度キックオフから集中してやっていこう』ということも話をしていたんですけど、本当にうまくゴールを奪ってくれたかなと思います」と試合後に東海大仰星の中務雅之監督が語ったように、東海大仰星は勝利のためにあらゆる場面を想定しシミュレーションしてきていた。後半27分、藤枝明誠・藤本一輝の突破から与えたPKも「取られるかもしれない」と振り返り、想定内の出来事だったようで「(GK宮本一郎は)この年間を通して試合中のPKが2度ほどありましたが、その2回ともうまく止められていた。この試合も集中して反応してくれた」と、PKを止めた宮本を称賛した。

 試合終盤の後半35分に藤山海星が退場となった場面も、「近畿大会の準決勝で1人退場者を出しました。レッドカードが出た後の10人での戦い方というのは、近畿大会で1試合やれていたので、自信を持ってやっていました」とキャプテンの松井修二が語ったように、過去の経験を生かしてこの試合最大の危機を乗り切って勝利した。

 ありとあらゆる場面を想定し、できる準備をしてきた東海大仰星は結果的に藤枝明誠に主導権を渡さなかった。藤枝明誠の松本安司監督は「勝つために徹底されていますよね」と感想を語ったが、「勝つだけのサッカーをやろうとは思わない。負けてもそうは思わない」と語気を強めた。「勝ちだけを目指すサッカーをやりたいとは思わない。局面、局面の技術的な部分をもっと細かく追求していかないといけない。フィジカルを鍛えようとは思わない。フィジカルだけでゴリゴリと押してというのはない。しっかりと技術があって、戦術があってという部分でこれからもう少し微調整をしていなかないといけないのかなと思います」とも説明。「静岡のチームが王国復活を掲げられるように、明誠高校もしっかりと胸に置いてまた始動します」と、ポリシーを貫き通して自分たちの目指すサッカーの質を高め再チャレンジすることを誓った。

(試合後コメント)

東海大仰星
中務雅之監督
静岡のチャンピオンですごく力がありましたが、選手が最後まで踏ん張ってくれました。立ち上がりで1つ2つ点が取れていれば、ゲームがもっとうまく展開できたかなとは思うのですが、やはり全国大会に出てくるようなチームは最後のところの粘りというのが他とは違うので、やはり簡単にはいかないということを痛感しました。

10番 松井修二
(得点シーンは)振り抜こうという気持ちで、自信を持って打ちました。残り少ない時間の中で、選手同士の言い合いというのは意識していました。特に、時間のない中での時間の使い方は、日ごろの練習からやっています。それと僕自身は「応援席を見ろ」といいました。応援を信じた結果で勝つことできました。

藤枝明誠
松本安司監督
40分、無駄なサッカーをやった。自分たちのやるべきサッカーを全くやれずに40分が終わった。後半は、しっかりとボールを大事につなぎながらゴールを目指すということが70パーセントくらいはできたのかなと思いますが、やはり最後のところですよね……。良さがあまりでなかった。選手個々の良さが、場面、場面でちょっと薄れたところがあるのなと思います。ハーフタイムには「このサッカーをやるんだったら、つないで点を取られて負けろ」といいました。そういうトレーニングを1年間やってきたわけではない。それだったら、つないで(相手に)引っかけられて5、6点ぶち込まれたほうがスッキリする。そういう意味で後半は、自分たちで少しは考えながらゲームを運べたんじゃないかなと思います。

ストライカーDX高校サッカー特集ページ

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