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関東初制覇&全国ベスト4…桐蔭横浜大FW今関耕平、GK田中雄大が語る躍進の理由

2016.10.07

 桐蔭横浜大学は関東大学1部リーグに昇格して4年目を迎えた今年、大躍進を果たした。関東大会初制覇、そして初めて臨んだ全国大会でのベスト4進出。その原動力となったFW今関耕平とGK田中雄大が、飛躍の理由を語った。そして、さらに新たな歴史を構築すべく、桐蔭横浜大は進化を続ける。

インタビュー・文=平柳麻衣、写真=岩井規征

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■「去年の4年生の存在が大きかった」(今関)


――「アミノバイタル」カップ2016第3回関東大学サッカートーナメント大会で初優勝、そして2016年度第40回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメントでベスト4進出を果たしました。この成績を率直にどう感じていますか?
今関 ビックリじゃない? 
田中 そうですね。
今関 去年は「日本一」を目標に掲げて取り組んだんですけど、現実味がなくて。
田中 漠然としていましたね。
今関 今年の目標を決める時に、僕たち4年生で話して、漠然としたものにはしないようにしようと。まず全国大会に出たことがなかったので、大臣杯に出よう、インカレ(全日本大学サッカー選手権大会)に出よう、という目標を決めたことが良かったと思います。

――昨年より前のシーズンはどのように戦っていたのですか?
今関 自分が入学した年は、1部に昇格して1年目だったので、「失うものは何もない」と勢いで乗り切りましたね。前期リーグは3位で、後期は失速しましたけど、天皇杯(第93回天皇杯全日本サッカー選手権大会)にも出場できました。2年目は雰囲気があまり良くなく、すごく苦しかったです。年々、チーム内競争が激しくなってきて、筋トレをする選手が増えたり、一人ひとりがストイックになってきたことで、チームの雰囲気も変わっていったと思います。

――4年間をかけてチームが徐々に変わっていったのですね。
今関 僕たちが入学した当初は1年生だけのチームで神奈川県強化育成リーグに出ていたんですけど、最初の試合で監督から「この代で関東リーグ優勝を達成したり、大臣杯で日本一を狙っていきたい」と言われたことを今でも憶えています。他の代にも同じことを言っているかもしれないですけど(笑)、自分は「この代で」という思いを持ってやってきました。あとは、去年の4年生の存在が大きかったかな。
田中 去年の初めに、いきなりガラっと雰囲気が変わりましたね。
今関 去年は結果が出なかったですけど、練習に取り組む姿勢や、試合に出られない人のベンチでの振る舞いなど、先輩たちから学ぶことがたくさんありました。

――リーグ戦は昨季まで3年連続で9位に終わっています。同じ順位ですが、それぞれどのように感じましたか?
今関 1年目は前期リーグを3位で終えたんですけど、後期でその貯金を使い果たしてしまいました。でも、最終節の前には残留が決まっていましたね。2、3年目は前期からずっと下位で、残留争いが厳しくなってきてから勝ち始めて……。
田中 あれは本当に苦しいです。

――その経験のおかげで、メンタル面が鍛えられたのでは?
田中 桐蔭は前に特長のある選手がいて、攻撃のバリエーションも多いので、得点は取れるんですけど、リードしても守り切れない弱さがあります。僕も含め、苦しい残留争いを経験してきた人間が、「これからはもっと上位で争おう」という意識をチームメートに伝えなければいけないのですが、まだまだその経験を十二分には生かせていないのかなと思います。

――今季は前期リーグを6位で終えました。昨季までと比べ、勝ち切れる試合が増えてきたのでは?
今関 そうですね。まだ隙はありますけど、一昨年、去年よりは良くなりましたし、今年は開幕戦に勝てたのがすべてだと思います。
田中 今季は逆転勝利が多いです。先制点を取られても、複数失点せずに耐えれば、最後の最後に前の選手がしっかりと仕事をしてくれる。
今関 失点数が減ったよね。
田中 でも、前期は11試合で15失点と、1試合1点以上失点しているので、自分としては納得してないです。自分がセービングをもっと磨いて、チームに貢献できるGKになれば、チームはもっと上に行けると思っています。

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■ターンオーバーは「1回戦だけだと思っていました」(田中)


――お二人とも、チーム内に同じポジションを争う強力なライバルがいます。FWの今関選手は、3年生の鈴木国友選手、石川大地選手などとの関係はいかがですか?
今関 最近は大地が右サイドをやっているので、自分と国友が2トップで固定されつつありますけど、2人が入学してきてからずっと、すごく良い関係を築けていると思います。また、桐蔭はFWやGKに限らず、中盤やDFも誰が出ても遜色ないプレーができるようになってきたなと感じています。

――アミノバイタル杯では、全試合で見事にターンオーバーして勝ち上がりましたね。
今関 2部の関東学院大学が準々決勝まで勝ち上がって来たからこそ、できた部分もあると思います。でも、チャンスを与えられた時に力を発揮できるよう、みんなが常に準備をしているのはすごく良いことですね。まぁ、あそこまでターンオーバーするとは思わなかったけど(笑)。
田中 1回戦だけだと思っていました。
今関 決勝も準決勝から半分くらいメンバーを替えたので、驚きはありましたけど、出たメンバーは普通にやれていました。
田中 準決勝でベンチ外だった選手も起用されましたよね。
今関 そう! 準決勝の翌日が決勝だったから、全く体を動かしていない状態だったのに……監督の考えていることが分からないです(苦笑)。
田中 勝負師ですね。

――起用について、監督からの説明はないのですか?
田中 以前、自分が試合に出られなかった時、監督に聞いたんですけど、「全員にプロになってもらいたいから、経験を積ませたい」と言っていました。

――トーナメント戦をターンオーバーで戦うと、モチベーションの維持が難しいのでは?
今関 1回戦では、2回戦で確実に出る選手はベンチで、僕は1回戦の出来で決めると監督から言われていました。それで1回戦で点を取れてホッとしたんですけど、すぐに交代させられて、「あぁ、やっぱりダメだったのかな」と思ったら、監督から「明日もあるから」と言われて、そこから次の試合に向けて気持ちを作りました。また、僕は全試合でメンバー入りしていたので、みんなの気持ちの変化も見ていたんですけど、やっぱりいろいろでしたね。悔しい思いをしている人もいれば、いきなりメンバーに入って驚いている人もいたし。

――外から見て、勝ち上がっていくうちにチームの雰囲気が良くなっているように感じました。
今関 関学戦に勝ったところで、チームがまとまったと思います。準決勝も厳しい試合に勝てて、決勝戦は応援も含めて一体感があり、チームで戦っている感覚がすごくありました。自分が交代する時も、後から出てくる選手が絶対にやってくれると信じることができましたし、ターンオーバーが本当にうまくハマったなと思います。

――GKは1回戦から田中選手と三浦和真選手が交互に出場し、決勝戦は三浦選手でした。コーチ陣からは田中選手を推す声もあったそうですね。
田中 スタッフが監督に言ってくれたらしいんですけど、監督は自分の意見を大事にする人なので……。監督のことは本当にリスペクトしていますし、監督が決めたことなら受け入れるしかないと思いました。

――決勝のメンバーは、いつ選手に伝えられたのですか?
田中 準決勝の直後です。ロッカールームでシャワーを浴びている時に、明日のメンバー出たよと言われて見たら、「あれ!?」って。さすがに決勝は自分が出ると思っていたので、納得できなかったというか、頭の中が疑問だらけでした(苦笑)。
今関 その日一緒に帰って、ご飯も食べたよね。電車の中でずっと「いや~」とか「はぁ~」って言ってた(笑)。

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――メンバー発表の場で三浦選手と会話をする機会はあったのですか?
田中 いや、サブメンバーは早くロッカーを出てしまうので、自分がシャワーを浴びて一息ついた頃にはもういなかったです。その時はなかなか現状を受け入れることができなかったですけど、和真は本当に人間性が素晴らしいですし、今まで僕がリーグ戦に出ている時もサポートをしてくれていたので、ここで自分がサポートしなきゃいけないな、と思いました。

――実力面では、日頃から三浦選手のことをライバル視しているのですか?
田中 ライバルではなく、完全にリスペクトしています。実力も人間性も和真の方が上だと思っているので、自分がリーグ戦に出ていても、「和真の方がうまいのに自分が出ている」というスタンスです。

――決勝戦の後、三浦選手は「雄大のおかげでここまで来られた」と話していましたし、とても良い関係ですね。
今関 2人はずっと競い合っていて、すごいなと思います。FWもそういう感じで、例えば自分が出られなくても、「チームが勝つことが一番」だと思うことができています。

――コンディション面は抜きにして、もしターンオーバーせずにアミノバイタル杯を戦っていたら、チームはここまでうまく回ったと思いますか?
今関 みんなの気持ちに温度差が出てしまっていたと思います。みんな大学生ですし、いくら「チームのために」と言っても、やっぱり出られなかったら難しい。少しでも自分が試合に出て結果に貢献できているという意識があったからこそ、心から応援できて、優勝を喜ぶことができたんだと思います。そういう意味では、本当に良い大会になりました。

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■「やっと『日本一』という目標が現実味を帯びてくる」(今関)


――総理大臣杯は、桐蔭横浜大として初めての全国大会でした。
今関 個人的には全国大会という実感がなかなか湧いてこなかったです。トーナメントの組み合わせが良かったのもあって、普段リーグ戦で戦っている関東のチームの方が強いなという印象を持ちました。
田中 すべてのチームと対戦したわけではないですけど、僕も関東リーグの方が苦しい試合が多いという印象です。

――準決勝で敗れた相手は、関東大学リーグ所属の明治大でしたね。
今関 阪南大学や関西学院大学など、関西の強豪校と対戦できなかったのは少し残念でした。個人の能力はやっぱり関西も高いと思うので。結局ベスト4で終わって、その時は本当に悔しかったですし、自分が決定機をもう1本決めていれば、という後悔もありましたけど、大会が終わって冷静に考えてみると、初出場でベスト4という歴史をつくることができて良かったなと思います。やっぱり優勝した明治大などと比べると、「日本一」に対する思いや経験が足りなかった。これでやっと「日本一」という目標が現実味を帯びてくると思います。

――4年生の立場からすると、来年以降にこの経験をつなげてほしい、と。
今関 これからどんどん結果を残していけるチームだと思っているので、大臣杯の借りは来年返してもらいたいです。その前にまず、今年まだ日本一を取るチャンスがあるので、夏の経験を生かして後期リーグでしっかり戦えればいいなと思います。

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――後期リーグでの上位進出、そしてインカレ出場に向けて意気込みを聞かせてください。
今関 インカレも出たことがないので、まずは出ることを目標にして、歴史をつくりたいです。リーグ戦の優勝争いも経験したことがないですが、上を狙える位置につけているので、本気で狙っていきたいと思います。
田中 これからより厳しい戦いになるので、しっかりと良い準備をして後期に臨むことと、個人としてもっとレベルを上げたいと思います。

――上位進出のためには、何が課題だと感じていますか?
今関 終了間際の失点です。あとはアミノや大臣杯で延長戦を戦ったように、90分以内で勝ちきれないことも課題だと思います。僕はFWなので、ゴールという結果を出して、チームのために貢献したいと思います。
田中 僕は本当に自分のレベルを上げることに尽きます。失点を少なくすれば勝利の可能性は上がるので、もっと自分が成長しなくてはいけないと思っています。

――後輩として、「4年生を良い形で送り出したい」という思いはありますか?
田中 去年の4年生の挑戦を引き継いで、今年の4年生がチャレンジしている姿勢は後輩から見て刺激を受けます。だからこそ4年生に良い思いをさせてあげたいし、そのために自分ができることを精いっぱいやって、チームを勝たせて、良い形で卒業してもらえたらなと思っています。
今関 良いこと言うね、ありがとう(笑)。僕たちのようになりたいと思ってもらえるようなプレーをしなきゃいけないと思いますし、プレー以外の面も変えていかなければいけない部分はたくさんあるので、僕は4年生としてチームをしっかりと引っ張っていきたいです。ラスト半年は本当にあっという間に終わってしまうと思うので、大学サッカーに懸ける思いを試合にぶつけたいと思います!

桐蔭横浜大4年 FW今関耕平(いまぜき・こうへい)
▼生年月日/1994年6月23日 ▼身長・体重/178センチ・69キロ
ジェフユナイテッド千葉U-18から桐蔭横浜大へ。1年時からトップチームで出場機会を得ると、同年の天皇杯予選でゴールを記録し、レギュラーに定着。最終学年を迎えた今季は、アミノバイタル杯で4試合出場3得点と大活躍し、チームの初優勝に貢献した。同大会期間中は、チームメートの心境の変化にも配慮するなど、気配り上手なキャプテン。


桐蔭横浜大3年 GK田中雄大(たなか・ゆうだい)
▼生年月日/1995年11月17日 ▼身長・体重/184センチ・72キロ
青森山田高校時代は、U-18日本代表候補に選出された経歴を持つ。「自分を一番評価してくれていると感じた」ことから桐蔭横浜大に入学。1年時に関東大学リーグデビューを果たし、2年時からは同学年の三浦和真(東京ヴェルディユース出身)と激しい定位置争いを繰り広げている。チームの練習がない日もグラウンドに行くというほど、ストイックな守護神。

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