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技巧派対決を制した昌平の立役者は、ちょっと異色のFW本間椋

2016.07.31

本間の活躍もあり、昌平は静岡学園を撃破した [写真]=森田将義

 初のインターハイ出場ながらも、2回戦で2連覇中の東福岡高校を撃破すると、続く3回戦では前橋商業高校をPK戦で退け、ベスト8まで進んだのが埼玉県代表の昌平高校。技術、判断に拘り、2007年に強化を開始した新興を準々決勝で待ち受けたのは、高校年代屈指の技巧派集団・静岡学園高校だった。藤島崇之監督から「どっちが上か勝負してこい」と試合に送り出されたように、序盤は互いに持ち味であるテクニックを活かしたパスによる崩しを披露。MF若山修平と渡井理己を中心とした連携からサイドを狙った静岡学園に対し、昌平は奪ってからテンポよくボールをつなぎ相手ゴールを狙ったが、ともに均衡を崩せない。

 こう着した状況を崩したのは「自分の特徴は裏への飛び出し」と口にするFW本間椋。足元の技術に長けた昌平では異色と言える存在だが、「下(足元)だけでは相手は崩せないから、本間の裏へと飛び出しが効いてくる」と司令塔のMF針谷岳晃が明かすように色が違うからこそ、効き目は絶大。序盤から細かいパス回しのスパイスとして、本間への縦パスを交えることで静岡学園のディフェンスに刺激を与えていたが、34分には自陣からのロングボールに左前方で反応。思い切りよく仕掛けた突破が相手DFの一発退場を誘い、昌平に有利な状況を作り出した。

 1人多い状況で迎えた後半開始からは彼の飛び出しがより効力を増す。中盤で自由を得た針谷のスルーパスに対し、果敢に飛び出すことで静岡学園のディフェンスラインは徐々に後ろへ下がっていく。彼の飛び出しは直接的な脅威となるだけでなく、相手の間延びも生み出し、昌平は空いたスペースを効果的に突く場面が増え始めた。50分に生まれた得点シーンも彼の働きによるもの。針谷のパスを受けたMF松本泰志が中央左寄りをフリーで持ち上がり、中央の本間へとパスを入れると、本間はドリブルで相手DFを引き寄せ、ペナルティーエリア左に展開。走り込んだ松元が冷静にゴール右上にシュートを決めると、この1点が決勝点になった。

 昌平では異色なタイプではあるが、「自分は身長が低いので、蹴るチームだと特徴が活きない。昌平のパスサッカーなら、得意な一瞬の抜け出しが活かせると思った」と振り返るように彼が選んだ道は理に適っている。ちょっと違った色を持つ男は頂点までの残り2試合でも光り輝くはずだ。

文=森田将義

By 森田将義

育成年代を中心に取材を続けるサッカーライター

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