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風間監督退任後の名門・筑波大が最下位に低迷、原因不明の不調

2014.05.27

ドリブルで持ち込む筑波大MF片岡(中央)。試合内容では上回ったのだが……【写真】=川端暁彦

文=川端暁彦

 大学サッカーのみならず、日本サッカー界の中でも指折りの歴史と伝統を誇る筑波大学蹴球部。その名門チームが苦しんでいる。

 第88回関東大学サッカーリーグ。その第1回大会から名を連ねている筑波大は、第10節を終えたところで0勝2分8敗。まさかの未勝利で最下位となっている。関東大学リーグは全22節なので、10節を終えた現時点は折り返し地点の1歩手前。関東大学リーグの歴史の中でも唯一「一度も落ちたことがない(正確には『最初からずっといる』)」チームである筑波大が、深刻な降格危機に瀕しているわけだ。

 毎週、順位表を眺めながら不思議な気持ちになっていたので、大学サッカー関係者に尋ねてみたのだが、その回答は「いや、弱いからだよ」というシンプルなモノ。とはいえ、その方も開幕から数節を観たのみだという。百聞は一見にしかずということで、早稲田大学と激突した第10節を観に行ってみた。

 正直な感想を言おう。試合を観ながら思っていたのは、「あれ? 強いじゃん」というもの。取り立てて選手個々のコンディションが悪いようには見えなかったし、ボールもよく動いている。3位の早大を堂々と押し込んでいく展開である。対戦相手である早大GK松澤香輝は、その攻勢を受け止めながら「なんで筑波はこの順位なんだろう?」という素朴な疑問を膨らませていたそうで、「内容は完敗ですよ」という感想もまた、謙遜ではなくて本音だろう。

 観る前にしていた勝手な想像は、風間八宏元監督(現・川崎F監督)が残した個性の強いサッカー観と、新しい指導陣が持ち込むサッカー観がバッティングしてしまって機能不全に陥っているような光景だったのだが、どうやらそうではない。正確に言えば、そうした過程はあったのかもしれないが、すでに通り過ぎた地点なのだと思う。そしてこの早大戦、筑波大は縦1本から鮮やかに抜け出される失点を挽回できず、0-1での敗戦となった。

 筑波大主将のMF片岡爽は「この試合だけじゃなくて、ボールは持たせてもらえるんです。でも、相手が守備を固めてくる中で、カウンター1本でやられてしまうことが多い。圧倒されて負けている試合はないんですが……」と言う。なるほどスコアを観ていても、3点差で負けている試合は1度だけ。「『良い試合をしているのに……』とは、よく言われます」(片岡)。

 原因は何か。そんな意地悪な質問に対して片岡は「僕たちもちょっと分からないですよ」と苦笑を浮かべつつ、「いけるという雰囲気が出て来ない」と首をひねる。第7節・駒澤大学戦では、2点のリードを奪ってハーフタイムを迎えたにもかかわらず、勝ちムードが出て来ないままに後半へ臨み、まさかの大逆転を許してしまう最悪の展開。しかも2-3から3-3に追い付く粘りを見せながら、89分に再度失点して3-4で敗れるという心理的にも大きなダメージを負う敗戦となってしまった。

 名門ゆえのプレッシャーもあるのだろうか。片岡は「これだけ結果が出ていないのだから、(外野からネガティブな声が)出てくるのは仕方ない」と率直に認めつつ、同時に「リーグ戦が始まったころに比べると、ずっと良い状態だと思っています。結果は出ていないけれど、やろうとしていることはできるようになってきている」と前向きな姿勢を強調した。

 確かにこの試合、ボールを動かして主導権を握る彼らのやりたいサッカーはできていた。開幕当初とは異なり、サッカーそのものへの手ごたえはあるのだ。あとはネガティブな空気感をどう振り払っていくのか。その切っ掛けをどうやって得るのかだろう。「勝利に優る良薬なし」と言うが、この週末にはアミノバイタルカップ(総理大臣杯関東予選)が行われる。リーグ戦で低迷するチームがカップ戦での勝利を機に再生するのはJリーグでも各国リーグでも頻繁に観られる光景だ。「泊まり込みで環境も変わるし、切っ掛けにできれば」と片岡。果たして週末のカップ戦は、低迷する名門が良薬を手にする千載一遇の好機となるだろうか。

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