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高円宮杯プレミア“京都ダービー”で火花を散らした“岐阜対決”

2014.05.09

【写真】=安藤隆人

 本連載の著者である安藤隆人氏は、元銀行員という異色の経歴を持つサッカージャーナリスト。今では、高校サッカーを中心に日本列島、世界各国を放浪し精力的な取材を行っている。巷ではユース教授と呼ばれる。本連載では安藤氏の“アンダー世代”のコラムをお届けする。

文=安藤隆人

 ゴールデンウィークの最終日となった6日、京都の宝ケ池球技場で高円宮杯プレミアリーグウェスト第4節の京都橘VS京都U-18の『京都ダービー』が行われた。この試合、共に勝ち星がなく、下位に低迷するチーム同士の対決。どちらに初勝利がもたらされるかという注目点以外に、岐阜県出身の筆者はもう一つの対決に注目した。

 京都橘の3年生ボランチの志知大輝と、京都U-18のナンバー10を背負うFW松下英右。2人は共に中学時代、岐阜の同じクラブの先輩後輩だった。共に中学卒業後は、チームは違えど、京都のチームへ進み、ついに公式戦で初対決の時を迎えたのであった。

 松下は中学時代から岐阜ナンバーワンの能力を持つ選手として注目されており、多くのクラブからスカウトを受けた末、京都U-18に進み、昨年は京都選抜のエースとして、東京国体に出場。今年はナンバー10を託されている。

 志知は昨年2年生ボランチとして、選手権ベスト4とプレミアリーグ昇格に貢献。広い守備範囲と高いボール奪取能力が特徴だ。

「同じ京都でやっているし、京都橘がプレミアに上がってきたので、対戦できることが凄く楽しみでした」(松下英右)

 松下は先輩との戦いを心待ちにしていた。しかし、それと同時に期するものがあった。昨年から不動のレギュラーである志知に対し、松下は今年に入ってあまり調子が上がらず、プレミアリーグではずっとベンチスタートであった。

「(川勝博康)監督から『スピードもあるし、スーパーサブとして点を取ってくれ』と言われたけど、やっぱり先発から出たい。でもそれはすべて自分次第。だからこそ自分の中で試合に出たい一心で練習に取り組んできました。ここ1週間は紅白戦でも調子が良かったので、チャンスはあるかもと思っていました」(松下英右)

 川勝監督は松下のアピールをしっかりと受け止め、先輩との直接対決でついに今季初スタメンを勝ち取った。ツートップの一角に入った松下は、スピードを生かした裏への飛び出しだけでなく、中盤に落ちてボールを収めては、2列目の飛び出しを引き出すプレーも見せ、チームの攻撃を活性化させた。

 試合は京都U-18が4-0で勝利。松下は得点こそ挙げられず、66分に交代となったが、存在感は際立っていた。

「点が欲しかった。出られたことは嬉しいけど、点が取れていないので、納得はしていないです」(松下英右)

 チーム最多タイの4本のシュートを放つなど、あくなきゴールへの意欲を見せたが、結果は出なかった。ゴールなしでは満足感を得られず、さらにもう一つ悔しい思いが残った。

「やっぱり志知くんは本当に厄介な選手だった。運動量あるし、うまいし、ボールを奪う力は本当に凄い。マッチアップする機会は少なかったけど、味方の選手達がことごとく志知くんに止められていた。さすがだなと思ったし、刺激になった」(松下英右)

 京都橘は0-4と完敗をしたが、志知の守備面での貢献がなければ、もっと崩れていたかもしれない。松下と同様に志知の存在感も際立っていた。

 岐阜で磨かれた2つのタレントが、京都の地で存在感を見せた。明暗ははっきりと分かれたが、勝者である松下からこういう言葉が発せられたのは、お互いがいい刺激になっている証拠だ。

 次回の対戦は9月14日。この日までに2人がどこまで成長し、どんな試合を見せてくれるのか。それが今から楽しみだ。

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