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【特別対談】安西幸輝、鈴木優磨がファンに贈る“パス”。欧州で見た現実と夢、そしてその先

2020.07.20

安西、鈴木両選手のオンライン対談が実現(画像はZOOM画面のキャプチャ)

「まだ25歳」か、「もう25歳」か。プロサッカー選手にとっての時間は、一般人とは別次元の価値を持つ。

 安西幸輝鈴木優磨。ともに2019年まで鹿島アントラーズに所属し、次世代日本代表の中核を担うべくヨーロッパへと飛び出していった。明治安田生命J1リーグ、天皇杯、AFCチャンピオンズリーグ。2人が日本で獲得してきたタイトルを見れば、彼らが持つ才能、積み上げてきた努力の大きさがうかがえる。しかし、ポルトガルやベルギーの景色は日本とは全く異なっていた。

 安西、鈴木の2人は、新サービス『PasYou』に出資し参加していくことを発表した。その裏側には、欧州でのどんな経験が影響していたのか。それぞれの国で挑戦を続ける2人が、オンライン対談でその想いを語った。

取材・文=生駒 奨(サッカーキング編集部)


★欧州サッカーで感じた驚き、日本との違い

安西幸輝(以下 安西) 僕も優磨も、こちらに来てから大体1年が経つけど、やっぱりJリーグとヨーロッパはサッカーの種類が全然違うよな。もう別競技というか。Jリーグで活躍した選手がヨーロッパでそのまま活躍できるわけじゃないし、その逆もそう。単純なレベル以外の部分で違いがある。

画像はZOOM画面のキャプチャ


鈴木優磨(以下 鈴木) そうだな。それに、ヨーロッパのなかでも国によってやっぱり違いがあるね。特に、欧州5大リーグと違ってベルギーやポルトガルは結果がすべてのリーグ。アントラーズにいたときは、自分がボールを受けたらなるべく時間を作って、味方のためにプレーしようという思いがあったけど、ここじゃ「起点になるプレー」よりも、とにかくゴール、アシストを目指してプレーしないと誰にも認めてもらえないね。

画像はZOOM画面のキャプチャ


安西 優磨ともよく話すけど、環境面もアントラーズ時代とは大きく違うよね。アントラーズは日本のビッグクラブで、移動も飛行機や新幹線が当たり前。でも、ポルティモネンセは基本的にバス移動。本拠地のポルティマオはポルトガルのなかでも端っこに位置しているから、アウェイ戦のときはバスで7時間移動する、なんてことも(笑)。プロ生活で経験したことがない過酷な環境だけど、「ここで結果を出してやる!」というハングリー精神はかなり鍛えられたかな。

鈴木 本当に、もともと貪欲に上を目指すつもりで移籍してきたけど、ますますハングリーになっているよな。海外で活躍した日本人の先輩選手から「早く海外に出たほうがいい」と言われてきたけど、本当にそうだなと実感するよ。僕も安西も、Jリーグでそれなりに実績を積んできたけど、そんなことこっちでは誰も気にしない。僕は24歳、安西は25歳と、サッカー選手としては決して若くないなかで、今この場で結果を出さないと。シント=トロイデンVVというクラブも、選手全員がビッグクラブにステップアップしたいと思って必死にアピールしている。日本で学んできたことはたくさんあるけど、それを一度忘れて、一からのスタートのつもりでやらないと埋もれてしまうという危機感は常にある。

★海外に出たからこそ感じた、日本の良さ

鈴木 サッカー以外にも目線を広げると、やっぱり日本って素晴らしい国だなってこっちに来てから実感したよな。

画像はZOOM画面のキャプチャ


安西 それは本当に間違いないね。

画像はZOOM画面のキャプチャ


鈴木 時間をしっかり守ったり、仕事に対するまじめさだったりは、日本人が世界一だね。本当に誠実な国だと思う。

安西 こっちの選手はみんな時間にルーズだからね(笑)。「朝10時から練習開始」と言われたら、10時ちょうどにロッカールームにやってきて、そこからゆっくり準備し始めたり。最初のころはそんな選手にちょっとイライラしていたけど、チームメイトの権田(修一)選手に「海外でそれを気にしていたらキリがないぞ」とアドバイスをもらって。それからはできるだけ気にしないようにしているよ。

鈴木 新型コロナウイルスへの対策でも、やっぱり日本はしっかりと対応しているなと感じたよ。ヨーロッパは感染拡大の状況が深刻だったけど、マスクを着ける習慣がもともとないから、政府がすごく厳しく外出規制をしていた。僕はベルギーリーグが中断したあとの3月ごろに日本に一時帰国していたけど、その当初はヨーロッパに比べて日本は深刻な状況じゃなくて、正直「こんなに普通に過ごして大丈夫かな」と心配していたくらいだった。でも、すぐにみんなが深刻さを理解して、自主的に外出を控えたり、手洗いうがいを呼び掛ける情報発信をしたりしていたよね。こういう意識の高さは、日本人の素晴らしいところだと思う。

★新サービス『PasYou』に込めた想い

鈴木 新型コロナウイルスの話をしたけど、今回安西と一緒に参加させてもらった『PasYou』に出資しようと決めた理由が、この状況でサッカーができなくなったことだったんだ。今までは試合で活躍することで、ファンの期待に応えてきた。でも、誰も予想できないような理由でプレーできなくなる可能性がある。それが今回で身に染みて分かった。さらに言えば、ファンの皆さんからの声援やメッセージは、プレーできない期間も絶え間なくもらうことができた。だったら僕も、試合以外の表現でもファンに何かを届けられるようにならないと。

安西 本当にそうだよね。僕の元にも、「高校最後の大会が中止になりました」といった、やりきれない思いを抱えた学生たちからの声がたくさん届いている。そういった子供たち以外にも、励ましや応援を必要とする人たちはたくさんいるはず。僕のメッセージがその助けになるなら、『PasYou』を通じてぜひ届けたいと思う。それに、実は『PasYou』を作ったのは、僕の東京ヴェルディユース時代の後輩。彼自身から、「試合に出られなくて苦しいときに長谷部(誠、フランクフルト)選手や長友(佑都)選手の本を読んで、何とか踏ん張ることができた。あこがれの人からメッセージをもらうことが、大きな力になることを実感した」という話を聞いていて。そんな後輩から、「力を貸してください」って言われたら、そりゃ「やる」って答えるよね(笑)。

鈴木 長谷部さんは本当にすごいよね。あれだけの実績を残して、ドイツサッカー界、日本サッカー界で確固たる地位と名誉を築いているのに、まだサッカー選手として上に行けるって言い続けているから。僕たち現役選手も、長谷部さんのような先輩から力をもらっている。僕も誰もが憧れるくらいプレーで結果を残しつつ、『PasYou』のような活動もプロサッカー選手の大事な仕事の一つとしてしっかり取り組んでいきたいね。

安西 優磨、お前、成長したなあ……。そんなしっかりしたことを言えるようになって……(笑)。

画像はZOOM画面のキャプチャ


鈴木 昔から、取材は俺のほうが上手いだろ!(笑)

画像はZOOM画面のキャプチャ

◆『PasYou』(パスユー)とは?

憧れの選手、応援している選手から『あなただけにむけた』ビデオレターが届く新サービス。憧れの選手に『子供への誕生日メッセージが欲しい!』『友人や家族を鼓舞したり、励ますメッセージが欲しい』といった想いをオーダーすれば、それに応える60秒程度のビデオメッセージが届きます。安西幸輝、権田修一(ともにポルティモネンセ)、鈴木優磨、シュミット・ダニエル(ともにシント=トロイデンVV)といったサッカー選手に加え、フットサル、卓球、バスケットボールなど他競技の一流選手も参加しています。

安西幸輝鈴木優磨は収益で地元支援

安西、鈴木の両選手は『PasYou』で得た収益を地元のサッカー少年たちに還元する「地元支援キャンペーン」を実施予定。安西は地元・埼玉県川口市の少年団に、鈴木は地元・千葉県銚子市の少年団に、それぞれサッカーボールを寄贈します。

安西幸輝コメント】
「いただいた収益を使って、僕が育った地元少年団にサッカーボールを贈らせていただきます。皆さんと素敵な企画にしていきたいと考えています! リクエストメッセージやコメント、お待ちしております!」

鈴木優磨コメント】
「今回の企画では、ファン・サポーターの方々からリクエストをいただければ、一人一人に向けてビデオメッセージを贈ります。そしていただいた収益を使って、地元、銚子市の少年団にサッカーボールを贈らせていただきます。僕が銚子市で過ごしていたときは、身近でプロの存在を感じたりすることができなかったので、僕が少しずつそういう機会を作っていきたいなと思っています。リクエストやコメント、お待ちしております!」

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