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【コラム】新天地でも輝きを…アンデルレヒトで第一歩を踏み出した森岡亮太の可能性

2018.02.05

名門アンデルレヒトでデビューを果たした森岡亮太 [写真]=Photonews via Getty Images

 1月31日に、今シーズン頭からプレーしていたベルギー1部のワースラント・ヴェフェレンから同リーグの強豪・アンデルレヒトへステップアップすることが正式発表された森岡亮太。朗報からわずか4日後の2月4日のメヘレン戦で、彼は背番号10のユニフォームを身にまとい、本拠地であるコンスタン・ヴァンデン・ストックスタディオンのピッチに立った。

 今シーズン途中までFW久保裕也のいるヘントを率いていたハイン・ヴァンハーゼブルック監督は、ここまでリーグ7得点という傑出した実績を残す新戦力に期待を寄せ、3-4-2-1の左シャドウでスタメン起用。ヴェフェレンでは4-2-3-1のトップ下を担っていた森岡が新たなチャレンジに打って出た。

森岡亮太

早速スタメン出場を果たした森岡 [写真]=Photonews via Getty Images

「環境が変わって不思議な感覚ではありましたが、適応に関してはそこまで難しくはなかった」と本人も言うように、出足は悪くなかった。

 森岡の非凡な能力がいきなり発揮されたのが、前半10分の先制点の場面。ロングボールを受けた彼は左サイドのゴールラインギリギリの位置から左足ダイレクトでピンポイントクロスを入れる。それを1トップのシルヴェル・ギャンブラが豪快なヘッドで叩き込み、幸先良く1点を手に入れたのだ。

 だが、彼自身もチームもこれで勢いに乗るかと思われたが、守備陣のイージーなプレーから瞬く間に2点を献上。前半を1-2の劣勢で折り返すことになり、サポーターからは大ブーイングが浴びせられる。スモールクラブのヴェフェレンでは1点をリードされるだけでブーイングされることはなかったはずで、森岡自身もビッグクラブの重圧を改めて感じたのではないだろうか。

 迎えた後半、指揮官はスタート時から2枚替えを行い、攻撃のテコ入れを図った。その成果が出て、57分に同点に追いつく。この流れのまま逆転を狙ったアンデルレヒトは79分、森岡がペナルティエリア内で倒されPKを獲得する。キッカーはもちろん背番号10。次の瞬間、名刺代わりの新天地初得点が生まれるはずだったが、蹴ったボールはまさかの左外。試合中こそ表情は崩さなかったものの、「決めないといけないシーンで外したのは本当に残念」と試合後に悔恨の念を吐露するほど、悔しいPK失敗にほかならなかった。これが響いて試合は2-2のドロー。最下位相手に勝ち点2を落とす結果を余儀なくされた。

森岡亮太

PKを失敗し、初ゴールはお預けとなった [写真]=Photonews via Getty Images

「2シャドウの一角というのは、ヴェフェレンの時とは役割が違うので少し難しいところはありましたけど、1点目は狙い通りにできました。ああいう形も含めて、もっといろいろ攻撃のバリエーションを増やせたらいいと思います。アシストの場面はよかったけど、それ以外の部分ではもっと自分らしさを出す必要があるかなとも感じました」

 森岡は新天地デビュー戦をこう振り返った。確かに3日しか練習していない中、新たなメンバーの特徴をいち早く把握し、それを理解しながらプレーしたこと、実戦でアシストという結果を残したことは前向きに評価していいだろう。

 ただ、ボールを受ける回数はヴェフェレン時代に比べると圧倒的に少なかった。前所属クラブは彼が攻撃の絶対的中心で、すべてが彼から始まると言っても過言ではない状況だったが、アンデルレヒトにはすでに積み上げてきたスタイルや戦い方がある。そこに森岡が合わせつつ、自身の長所である高度なテクニック、創造性やアイディアを出していくのは容易ではない。

 しかも、ヴァンハーゼブルック監督はベルギー屈指の戦術家として知られていて、かつて指導を受けた久保も「とにかく戦術に細かい人。自分が結果を出していれば、ある程度の自由は許されるけど、結果が出ていない時は動きの1つ1つを事細かく指示してくる」と語り、やりづらさを覚えた様子だった。

 森岡の場合も、今回は最初のゲームということでそこまで多くの要求はなかった様子だが、得点に直結する結果をコンスタントに出さなければ、久保のように細かい指示を受けるようになる可能性も高い。10代の頃からテクニック志向の強い彼は「もともと自分は『自由を愛する男』だった」と話していただけに、その自由を勝ち取るべく、新戦力としてチームを劇的に変えるほどのインパクトを残すことが肝要だ。

 メヘレン戦は悲喜こもごもの内容だったが、次からはマイナス面を極力、少なくしていく努力が求められる。それはポーランドからベルギーにステップアップし、さらに半年で強豪クラブにのし上がったこの男なら、その重要性を誰よりもよく分かっているはず。「今後も2シャドウの一角でやるかはまだ分からない」と本人は言うが、不慣れなポジションでもトップ下の時と同等のクオリティを見せなければならない。

 そのためにも周囲とのコミュニケーションを増やし、より多くボールを配球してもらえるような関係を築くべきだ。森岡はボールを持っている時が最も輝く。その輝きを新天地でも放ち続け、4カ月後に迫った2018 FIFAワールドカップロシアのメンバー選出、そして長年の夢であるチャンピオンズリーグ出場を現実にしてほしいものである。

文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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