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躍進する東南アジアのポテンシャルを感じる戦い!トヨタ・メコンクラブチャンピオンシップ

2017.01.23

「トヨタ・メコンクラブチャンピオンシップ(TMCC)2016」を2年連続で制したタイ代表のブリーラム・ユナイテッドFC

■メコン地域のクラブ王者を決める大会

昨年11月からこの1月にかけて、東南アジアを舞台に「トヨタ・メコンクラブチャンピオンシップ」が開催された。「メコン」とは東南アジアを南北に貫く大河・メコン川のことで、タイ、ラオス、ミャンマー、カンボジア、ベトナムの5カ国を流れる。その名の通り、この5カ国の間でクラブ王者を決める大会だ。

同大会は2014年にラオス、ミャンマー、カンボジア、ベトナムの4カ国でスタートし、2015年からはタイのクラブも参戦。タイ以外の4カ国からは基本的にリーグチャンピオンが、タイからは国内主要タイトルの一つであるトヨタリーグカップの王者が出場して覇権を争う。

大会の冠スポンサーであるトヨタは、タイリーグやベトナムリーグのリーグスポンサーを務めるなど、これまでも東南アジアのサッカー界に深く関わってきた。そのトヨタがスポンサードする形で、これまでこの地域には存在しなかった本格的なクラブ間の国際大会として新たにスタートすることとなった。

東南アジアといえば近年、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)やワールドカップ予選などでタイが存在感を見せているが、このエリアには他にも興味深い可能性を秘めた国々がひしめく。トヨタ・メコンチャンピオンシップは、その可能性を感じさせる新たな場ともなっている。

■タイの王者を苦しめたカンボジアとラオス

2014年の第1回大会はベトナムで集中開催され、トーナメント方式の一発勝負でタイトルが争われた。結果はベトナム代表のベガメックス・ビンズオンFCがカンボジアのプノンペン・クラウンとの初戦を制し、決勝ではミャンマーのエーヤワディー・ユナイテッドを4-1と下して初代王者に輝いた。

2015年の第2回大会では国内三冠を達成したタイの絶対王者、ブリーラム・ユナイテッドが参戦。大会はまず、ラオス、ミャンマー、カンボジアの代表がそれぞれホームで1試合を戦う総当たり戦を行い、トップとなったチームが前回優勝国ベトナムのクラブと戦う。その勝者が決勝戦でブリーラム・ユナイテッドに挑むという方式が採用された。

決勝に駒を進めたのは、カンボジアのボンケット・アンコールだった。先日、J3の藤枝MY FCへの移籍が発表された「カンボジアの至宝」チャン・ワタナカが準決勝でのハットトリックを含む5ゴールの大活躍でチームを牽引。ブリーラム・ユナイテッドの圧倒的優位が予想された決勝でも0-1と善戦し、強い印象を残す見事な準優勝だった。

3回目を迎えた今大会も前回と同様の方式で行われ、前回準優勝のカンボジアが準決勝から、優勝したタイが決勝から登場。決勝戦は今大会からホーム&アウェイでの開催となり、ブリーラム・ユナイテッドとラオスの王者ランサン・ユナイテッドの対戦となった。予想に反してランサン・ユナイテッドがホームでの初戦を1-0と勝利し驚かせたが、第2戦をブリーラム・ユナイテッドがきっちり2-0で制して連覇を果たした。

■高いポテンシャルを秘めるメコン諸国

アジアの勢力図におけるタイの台頭は、日本でも周知のこととなりつつある。だが、ACLでも存在感を見せているブリーラム・ユナイテッドがカンボジアやラオスのクラブに苦戦していることからもわかるように、この地域には高いポテンシャルを秘めた国がまだまだ存在する。

ロシア・ワールドカップ予選における初の2次予選進出を機に大変なサッカー熱が巻き起こっているカンボジアは、国内リーグも年々新たな展開を見せながら一歩ずつ前進している。選手、指導者、スタッフなどさまざまな形で多くの日本人が関り始めた現状は数年前のタイに重なるものがあり、その点からも「第2のタイ」となる可能性を感じさせる。

今大会でランサン・ユナイテッドが決勝進出を果たしたラオスも近年、国内リーグ「ラオス・プレミアリーグ」が徐々に盛り上が見せている。トヨタ自動車のラオス法人を母体とするラオ・トヨタFC、ラオスの財閥企業であるランサン・イントラ・コーポレーションがバックアップするランサン・ユナイテッドなど資金力のあるクラブが台頭し、ここでも多くの日本人選手がプレーする。

さらに、代表チームの実力ではタイに次ぐ存在のベトナム、かつてはアジアの強国だったミャンマーと、メコン地域には面白い国が揃っている。このエリアにはもともとストリートサッカーやセパタクローなどの文化が根付いているため「足技」の素地があり、それが昨今の経済成長によって一気に花開こうとしている。

■「東南アジアのプレミアリーグ」を目指すタイ

Jリーグが推進する「アジア戦略」によって日本と東南アジアの関係は深まり、東南アジア出身のJリーガーも多く誕生するようになった。その一方で今、タイを中心として次第に東南アジア内での横のつながりも生まれつつある。

タイリーグを代表するビッグクラブであるブリーラム・ユナイテッドとムアントン・ユナイテッドは、昨年からプレシーズンにカンボジア、ラオス、ベトナムなどの国々で親善試合を行う「東南アジアツアー」を実施。その結果、タイのビッグクラブのブランド力は周辺国にも及び始めている。

さらに、タイリーグでは今季から下部リーグで「東南アジア枠」が設けられ、来季からは上位リーグでも全てのクラブが1名以上の東南アジア出身選手を保有する方向で調整が進められている。「アジアのプレミアリーグ」を目指すJリーグに対して、タイリーグは今、「東南アジアのプレミアリーグ」への道を歩もうとしている。

昨年の同大会で大活躍し、今季は初のカンボジア人Jリーガーとして日本でプレーすることになったワタナカのもとにはタイからも複数のオファーが届いていたという。トヨタ・メコンクラブチャンピオンシップは今後、東南アジア内での選手交流の面からも意義ある大会となっていくことだろう。

(アジアサッカー研究所/本多 辰成)

By アジアサッカー研究所

東南アジアを中心としたアジアサッカーの今を伝える情報サイト

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