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「今となっては…」アイスランド指揮官、注目集まるあの“儀式”に嫌気?

2018.06.22

アイスランド代表の選手たちに声援を送るファン [写真]=Action Plus via Getty Images

 4年に一度のワールドカップでは必ず、“ファンの心をつかむチーム”が現れる。2018 FIFAワールドカップ ロシアで言えば、世界王者ドイツ代表から金星を奪ったメキシコ代表、そして前回準優勝のアルゼンチン代表とドローゲームを演じたアイスランド代表になるだろうか。

 特にアイスランドは、記念すべきW杯デビュー戦で、あのリオネル・メッシのPKを阻止して勝ち点を獲得したこともあり、日本でも大きな話題となった。殊勲のGKハンネス・ソール・ハルドーソンが映像ディレクターとの二足のわらじをはいていること。全人口は東京都新宿区とほぼ同じ約35万人で、W杯史上最少人口の国であること。その国民全体の99.6パーセントがアルゼンチン戦をテレビ観戦していたこと――。誰もが興味を抱きそうなネタがいくつも転がっていたこともブームに火をつけた。

 そんな彼らの伝統的な儀式となっているのが、「バイキングクラップ」と呼ばれる手拍子だ。選手が観客席のサポーターと一体になり、両手を頭の上で叩く。同じく初出場でベスト8入りを果たしたユーロ2016で有名になったこの応援は、今やアイスランドサッカーの代名詞となっている。

 しかし、代表チームを率いるヘイミル・ハルグリムソン監督はロシアW杯開幕前に行われたイギリス紙『サン』のインタビューで、「今となっては、(バイキングクラップが)大嫌い」だと打ち明けている。「少しばかり度が過ぎる」のが、その理由だそうだ。

 実際のところ、街を歩いていると、通りの反対側から必ずといっていいほど手拍子が始まるのだという。「特に多いのは外国人だ」と、51歳の指揮官は話している。

 ユーロ2016に代表される近年の躍進によって、アイスランドに対する注目度は急速に高まっていった。しかし、スポットライトが当たるのは、チームの戦いぶりよりもむしろ、応援スタイルの方が多い。2011年に代表コーチ、そして2013年からはスウェーデン人のラーシュ・ラーゲルベック氏と共同監督を務め、2016年7月からは“独り立ち”した指揮官からすると、本来、主役となるべき選手や綿密な戦術の方にこそ焦点が当たって欲しいというのが本心なのだろう。

 そもそも、バイキングクラップの起源はスコットランドのサッカークラブ、マザーウェルだと言われている。同クラブがアイスランドのクラブチームと対戦した際に、サポーターが行った手拍子を“輸入”。それがアイスランド国内で広まったという説である。

 真相は定かではないが、ハルグリムソン監督は「バイキングクラップは今やグローバルなものだし、我々は何か新しいものを探さないといけない」と訴える。だからこそ、W杯デビュー戦で強豪アルゼンチン相手に真の実力を証明したことは、大きな意味を持つはずだ。

 もっとも、彼らがそれで満足することはない。「成功は目的地ではない。正しい方向へ進むための終わりなき旅路なんだ」。これは、アイスランド代表の面々が最も気に入っているフレーズだという。“島国”であるアイスランドのさらに離島、ヘイマエイ島に生まれ育ったハルグリムソン監督も、「アイスランドのサッカーは立ち止まることはないし、今夏のロシアW杯がピークでもない」だと強調する。

 勝ち点1の次に狙うのは、もちろん勝ち点3。22日に行われるナイジェリア代表戦は、その絶好の機会となる。もしもW杯初勝利を挙げることができたならば、試合後に味わう“バイキングクラップ”は指揮官にとっても格別なものになるはずだ。

(記事/Footmedia)

By Footmedia

「フットボール」と「メディア」ふたつの要素を併せ持つプロフェッショナル集団を目指し集まったグループ。

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