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かつら会社CMで大農場主になったアルシンドが日本にエール。「本田ゲンキは日本ゲンキ!」

2014.03.10

写真は1994年3月26日、ジェフユナイテッド市原対鹿島アントラーズ戦でのアルシンド [写真]=Getty Images

「トモダチなら、アッタリマエ!」。義父が代表を務める農業技術関連会社のオフィスに現れたアルシンド・サルトリ(46)は、90年代前半に一世を風靡した日本のかつらメーカー、アデランスのCMでの名物フレーズと共に、温かく記者を迎え入れてくれた。

 ブラジル時代にフラメンゴで共にプレーしたジーコに誘われ、Jリーグが開幕した93年に鹿島アントラーズに入団した。リーグ戦通算130試合80得点という確かな実力に加え、特徴的な“河童あたま”に陽気な性格は、多くのサッカーファンに愛された。

 来日当時について尋ねると「ジーコは恩師であり、先生みたいな存在。彼にものを言われて断ることなんて絶対ないよ。結局、年棒がいくらなのかも聞かされないまま日本行が決まった」と苦笑いしつつ、「今の自分があるのは日本での経験があったからこそ。Jリーグは今でもチェックしているし、日本のチームから監督のオファーがあればいつでも応じる。鹿島で1年間プレーした息子のイゴール(2011年シーズン。現在はフラメンゴ所属)も日本を気に入っていて、また戻りたいと言っているしね」と日本への深い愛着を垣間見せた。

 2011年の東日本大震災の際には、ジーコとともに発起人となって、いち早くチャリティーマッチを開催するなど、復興支援にも尽力した。

 現在は、世界最大の瀑布として名高いイグアスの滝に程近い、一面に大豆畑が広がる緑豊かな町、パラナ州サンミゲル・ド・イグアス市に400haの農地を所有し、農場を経営する。前述の義父の会社にも役員として在籍しており、二束のわらじを履く立派な実業家だ。

 農地の敷地内に建てられた自宅には、プールやサッカーコートも併設。豪華な邸宅を案内してくれたアルシンドは「日本で稼いだお金のおかげ。アデランスのCMの報酬は、鹿島の年棒より良かったしね。後にたくさん広告の話をもらえたのも、あのCMがあったから」と冗談めかして笑った。

 日本代表の入ったW杯の予選グループについて、「全てのチームに突破の可能性のある、実力が拮抗した組」との印象を語りながらも、「初戦さえうまく切り抜ければきっと大丈夫。ブラジル人は(昨年6月の)コンフェデ杯で善戦した日本チームに良い印象を持っているだけに、観客も後押ししてくれるはず」と親指を立てる。

「ホンダ、ゲンキは、日本、ゲンキ!」と日本語で語った通り、日本チームの注目選手には、今年1月にイタリアの名門クラブACミランに移籍した本田圭祐を挙げ、グループの結果を「コート・ジボワールに1対0、ギリシャと1対1、コロンビアと0対0で2位通過。ホンダが1点は決めるね」と予想した。

 加えて「日本代表の試合はなるべく見るようにしているが、昨年Jリーグ創設20周年記念試合(浦和レッズ対鹿島、浦和スタジアム)に招待された際、改めて日本サッカー全体のレベルの向上を感じた。勿論マリーシア(ずる賢さ)など、強豪国と比べて足りない部分も多い。それでも、この20年の経験を全てぶつける気で、全力でぶつかっていけば、きっと良い結果を残せるはず」と語ったアルシンド。日本チームにかける期待は大きい。

 取材した4人に共通していたのは「グループ戦突破間違いなし」という期待感だった。伯人帰化選手がいない初めてのW杯日本代表の舞台は、このブラジルだ。

 当地では「応援団は12人目の選手」という言葉がある。たとえチーム内にはいなくとも、今大会における“12人目の選手”はやはり日本を愛するブラジル人、日系人であり、間違いなく彼らは、会場の中でも外でも熱烈な応援を繰り広げるに違いない。(敬称略)

(文/酒井大二郎、記事協力/MEGA BRASIL、記事提供/ニッケイ新聞 W杯特別企画=サッカー兄弟国 日伯の絆=元助っ人からのエール)

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