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大逆転スクデットへ…ユヴェントスvsベネヴェント戦を見るべき4つの理由

2021.03.21

ユヴェントスはセリエA第28節でベネヴェントと対戦する [写真]=Cygames/Juventus

「ここから先、取れるだけの勝ち点を取りにいく。つまり、すべての試合で勝ちにいく。奇跡は起こせる」

 沈着冷静で知られるユヴェントスのアンドレア・ピルロ監督は、静かな表情のまま熱い言葉を発するときがある。越えるべきシーズンの難所を迎えたときだ。

 ユーヴェは21日、セリエA第28節でベネヴェントをホームに迎える。

 春の訪れに呼応するようなカンピオナートでの怒涛の追い上げを見るに、大逆転スクデットの可能性も見えてきた。3-0で快勝した27節カリアリ戦の後、指揮官は己とチームの決意を表明した。

 ベネヴェント戦はシーズン終盤に向けた山場の一つ、決して落とせない重要な一戦だ。是が非でも見ておきたい理由をいくつか挙げてみたい。

①CL敗退からのリスタートと2位浮上のチャンス

 大きな目標だったチャンピオンズリーグでポルト相手によもやのベスト16ラウンド敗退。しかし、失望が深ければ深いほどより強く再起するのがユーヴェだ。
敗退後の初戦となったカリアリ戦では、FWクリスティアーノ・ロナウドがトリプレッタ(ハットトリック)で批判や雑音を払拭した。ミランの結果次第では、2位浮上の可能性も十分ありえる。

②ピルロ×インザーギ。戦友対決2ndラウンドの勝敗は?

©Cygames/Juventus

 クラブや代表でともに世界の頂点を極めたピルロとフィリッポ・インザーギ両指揮官の信頼関係は深い。彼らは親友同士だからこそ、手加減せずにお互いを全力で倒しにいく。それが礼儀だ。
シーズン序盤9節での初対決では、ピルロの判断でメンバーを落としたユーヴェがFWアルバロ・モラタのゴールで先制するも、インザーギが戦力の差をものともせず1-1のドローに持ち込み、指導者として先輩の意地を見せた。
これを教訓とした元天才司令塔は、2度目の対戦でどう修正するのか。2人の采配に注目せざるをえない。

③地元ファンも昂ぶる“Cygamesマッチデー”

©Cygames/Juventus

 唐突だが、筆者が普段世話になっている近所の自動車整備工場の2代目ジュゼッペもまた熱烈なユヴェンティーノだ。コロナ禍が始まる前、アリアンツ・スタジアムに何度か通った彼から言われたことがある。
「あのサイゲームスってのは……すげえよ!」
 CygamesのマッチデーでショーアップされたVTRを見たらしい。アリアンツ・スタジアムの最新音響設備とレーザー照明システムは、イタリア随一だ。NBAやプレミアリーグを参考にした演出は、まるで巨大なライブ会場のように観る者へゲームの興奮をもたらす。
「さすが日本の会社だよ。ハイテク感やファンタジー感あるねえ」。ジュゼッペもさぞ度肝を抜かれたのだろう。ベネヴェント戦もCygamesマッチデーになることが決まった。試合前やハーフタイムに同社のロゴマークがセンターサークルを彩る。
 今、イタリアは国の半分が厳しいロックダウン(都市封鎖)状態にあり、あらゆるユヴェンティーノにとって“アリアンツ詣で”は難しい状況だ。ユニフォームの背中を支えるCygamesの心根は、ジュゼッペら世界中のユヴェンティーノたち一人ひとりと同じ。熱い思いで遠いトリノへエールを送っているのだ。

④鉄人ブッフォンの先発濃厚。生ける伝説を瞼に焼き付けよ

©Cygames/Juventus

 ベネヴェント戦でユーヴェのゴールマウスを守るのは、おそらくGKジャンルイジ・ブッフォンになる可能性が高い。もともと前節カリアリ戦で先発するはずだったブッフォンだが、腰痛で出場を回避。万全を期して復調し、ベネヴェント戦のスタメン濃厚と、17日時点の現地メディアは伝えている。
 2月22日のクロトーネ戦出場で、セリエA歴代最多出場記録は「654」にまで伸びた。ブッフォンは同カードでも3-0のクリーンシートに貢献しており、鉄人ぶりは健在。
「現役を辞めるのは、自分が(セーブのために)飛びこめなくなったと感じたとき。俺はまだ飛べている。だから前へ進む」(ブッフォン)
 彼にとってベネヴェント戦は、2カ月先を見据えた重要な試金石といえる。盟友である指揮官ピルロは、5月19日のコッパ・イタリア決勝戦でも不世出のゴールキーパーに先発を託すはずだからだ。
 ベンチに職を変えたピルロとインザーギの2人を尻目に、ブッフォンは現役としてゴールマウスに立つ。2006年ドイツW杯王者の3人が一堂に会するシーンもベネヴェント戦の見どころだ。

 今のユーヴェは、前半戦のカードでベネヴェントから引き分けに持ち込まれた頃のチームとはちがう。昨秋のユーヴェはまだ慣らし運転の段階で、戦術の運用もチームの根幹も定まっていなかった。

 だが、今や中盤の鍵としてMFウェストン・マッケニーが台頭し、DFマタイス・デ・リフトとDFメリフ・デミラルの若手CBコンビが凄まじい勢いでユーヴェ流守備の真髄を会得しつつある。

 もちろん、現在23ゴールで得点王レースを引っ張るC・ロナウドは、今季こそイタリア半島のゴール王になることを視野に入れ、ベネヴェント守備陣に襲いかかるだろう。最近、ロナウドは「Sempre insieme. Fino alla fine(いつ何時もともに。最後の最後まで)」と、力強く自身のSNSにメッセージを掲げた。奇跡の逆転スクデットへの堅い決意表明だ。

 ユヴェントスは不撓不屈である。目指すは怨敵インテルからの首位奪還、ビアンコネーロの狼煙は上がった。手始めの獲物はベネヴェントだ。

文=弓削高志

By 弓削高志

1973年生まれ宮崎県出身。地元の出版社を経て、2001年に単身イタリアへ渡る。以降、セリエAやチャンピオンズリーグ、イタリア代表を中心に取材している。イタリア在住スポーツライター。現地暮らしは23年目、『Sports Graphic Number』『SOCCER KING』等でサッカーから社会全般まで幅広く寄稿。

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