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【9連覇の軌跡】 アントニオ・コンテ時代編 | 黄金期へ導いた偉大なるレジェンド

2021.02.17

黄金期の礎を築いたコンテ監督 [写真]=Getty Images

 セリエAへの“復帰”から3シーズン、ユヴェントスは“らしくない”迷走の時間を過ごしていた。

 その流れを一変したのが、サンプドリアから引き抜かれる形でGM職に就いたジュゼッペ・マロッタと、彼が選んだ指揮官アントニオ・コンテである。バーリ、アタランタ、シエナで残した監督としての実績を疑問視する声も少なくなかったが、マロッタは名将としての資質を確信していたという。マーケットの立ち回りにも定評がある新GMは、夏の移籍市場でミランからアンドレア・ピルロ、レヴァークーゼンからアルトゥーロ・ビダル、ラツィオからステファン・リヒトシュタイナー、ローマからミルコ・ヴチニッチと即戦力を次々に獲得。ポジティブなニュースを連発させて停滞感を払拭した。

 現役時代から中盤のファイターとして鳴らし、ユヴェントスの選手としてチャンピオンズリーグ制覇を経験したこともあるコンテは、実質的には初挑戦となるセリエAで稀代のモチベーターとしての真価を発揮した。当初は自身の代名詞である4-2-4システムを試しながら、それに不具合を見つけると4-3-3や3-5-2に変更。選手たちの個性を引き出してチームを軌道に載せた。

 ピッチ上で最も輝いたのは、ミランから加入したアンドレア・ピルロだった。ミランではマッシミリアーノ・アッレグリとの確執が噂されて契約満了でのフリー移籍となり、「ピークは過ぎた」と見る向きも確かにあった。シーズン前半は守備面の不安を指摘されたが、特にクラウディオ・マルキージオとビダルを両脇に従える4-3-3システムでは圧倒的な攻撃センスを発揮。「剛」の印象が強いコンテのスタイルにアクセントを加えて相手に的を絞らせず、中盤で相手を圧倒して常に主導権を握るチームを主導した。

 そうして内容、結果ともに“らしさ”を取り戻したユヴェントスは、9シーズンぶりにスクデットを獲得。15年近くチームの象徴的存在だったアレッサンドロ・デル・ピエロをこの年の優勝をもって送り出せたことにも、やはり特別な意味があった。

デル・ピエロ

[写真]=Getty Images

 続く2年目、2012-13シーズンも圧巻の強さでセリエA連覇に成功した。中盤にポール・ポグバを加えたチームはさらに進化。アンドレア・バルザーリ、レオナルド・ボヌッチ、ジョルジョ・キエッリーニによって形成された3バックは「BBC」と称され、中盤ではピルロを軸とする攻守のコンビネーションがさらに進化。ポグバの加入によって厚みが加わり、隙のない陣容が整いつつあった。技巧派FWヴチニッチのパートナーがなかなか定まらなかったことが唯一の課題だったが、リヒトシュタイナーとクワドォー・アサモアの両サイドも質の高いプレーを連発し、チームの“格”をさらに1つ上げた。

 結局、シーズン開幕から1度も首位を明け渡すことなくスクデットを獲得。ベスト8に終わったチャンピオンズリーグの結果が悔やまれるが、相対的なレベルとしては欧州のどのビッグクラブと対戦しても引けを取らない完成度にあった。

 この時、すでにクラブとしての最大目標は「チャンピオンズリーグ制覇」に定まりつつあった。マロッタGMが前年の“課題”を克服するために連れてきたのは、アルゼンチン代表ストライカーのカルロス・テベス。デル・ピエロ以来となる背番号10を身にまとった新エースはしっかりとその期待に応え、同じく新戦力のフェルナンド・ジョレンテとともに最前線で躍動した。

テベス

[写真]=Getty Images

 2012-13シーズンと同様に国内で無敵の強さを誇ったユヴェントスは、勝点「102」という盛大な記録を打ち立てて見事3連覇に成功。過去2年間で築き上げた強固な守備とピルロを中心とする中盤の構成力を落とすことなく、攻撃陣を1段階パワーアップさせて迫力あるチームを作った。

 しかし、やはりこの年もヨーロッパの舞台で結果を残すことができなかった。チャンピオンズリーグはまさかのグループリーグ敗退。それが引き金になったかどうかは定かではないが、シーズン終了後の7月半ば、突如としてアントニオ・コンテの退任が発表された。イタリア代表監督に就任したコンテの後任に就いたのは、同年までミランを率いていたマッシミリアーノ・アッレグリだった。

 迷走していた“セリエA復帰後”のユヴェントスにとって、コンテが率いた2011-12シーズンからの3年間は、“勝者のメンタリティー”を取り戻すための価値ある時間だった。チャンピオンズリーグ制覇という次なる目標が明確に定まったことで両者は進む道を別にしたが、クラブのヒストリーを前に進めたかつてのレジェンド、コンテの貢献は計り知れない。

文=細江克弥

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