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元アイルランド代表ロイ・キーン、“自虐ジョーク”でユーロ出場を祝福

2015.11.18

アイルランド代表のオニール監督(右) の下でコーチを務めるR・キーン(左) [写真]=Getty Images

 フットボール界きっての“怒れる男”も、この日ばかりは笑顔を見せた。

 アイルランド代表のアシスタントコーチを務めるロイ・キーンは、ユーロ予選プレーオフでボスニア・ヘルツェゴヴィナを2戦合計3-1で下して2大会連続3度目の本大会出場を決めると、マーティン・オニール監督と抱き合って大いに喜びを分かち合った。

『RTE(アイルランド放送協会)』の試合後インタビューでも、元マンチェスター・Uの闘将はゴキゲンだった。本大会に向けた準備について聞かれると、ニヤリと笑って「サイパンに行かない限り、我々は大丈夫さ」と自虐的なジョークを届けたのだ。

「サイパン」はキーンにとってあまり思い出したくない地名である。2002年日韓ワールドカップ直前のサイパン合宿で当時の代表監督ミック・マッカーシーとキャプテンだったキーンが衝突し、キーンが代表を追放された“事件”の舞台だったからだ。結局、キーンは同胞たちがワールドカップを戦っている間に、英国で愛犬と散歩する姿が世界中のメディアにさらされて赤っ恥をかいた。

 そんな悲しい記憶さえ自ら引き合いに出せるほど、キーンにとって今回のユーロ2016出場権獲得は嬉しい出来事だったのだろう。

 現役引退後、キーンは解説者として歯に衣着せぬ毒舌で人気を博した。だが、指導者としては過激な言動が物議を醸す一方、サンダーランド、イプスウィッチの監督として肝心の結果を出せなかった。

 代表コーチと兼任でアストンヴィラのアシスタントコーチを務めた昨シーズンも5カ月足らずで退団。表向きは「代表に専念するため」という理由だったが、その裏で教え子と一触即発の関係だったという報道も絶えなかった。

 自分を曲げられない意固地な性格だからこそ、2013年11月にアイルランド代表でオニール監督とタッグを組むことが決まった際も、GKシェイ・ギヴンが「本当にうまくやれるのかと思った」と振り返るように疑いの目は多かった。だが、ギヴンいわく今では「彼らは本当にバッチリ合っているし、この2年で本当の友情を築いた」のだとか。

 オニール監督も、「ロイ・キーンを引き入れたことは、私がしてきた決定の中でも最高のものだった」と一蓮托生の相棒を称えている。選手を“褒めて伸ばす”タイプのオニールと、選手に高いハードルを設定して追い込むタイプのキーン。両者の相性は案外いいようだ。

 本大会で目指すのは、3連敗でグループステージ敗退に終わった前回大会の雪辱である。

 2012年のアイルランドは情熱的なサポーターの姿がいい意味で話題になったが、当時解説者だったキーンは「合唱会のために国際大会に出るのはもうやめろ」と、参加できただけで満足という国内の風潮に腹を立てていた。

「数合わせのためにフランスへ行くつもりはない。国の誇りを示すために行くんだ」

 チームの一員となった今回は、そう力強く意気込みを語る。予選でのしぶとい戦いぶりを見るに、4年前と比べて主力が若返った現チームには、元闘将の現役時代を彷彿とさせる戦う姿勢やハードワークの精神、泥臭さが浸透しつつある。来年6月、フランスの地で“緑の嵐”が見られるかどうか楽しみだ。

(記事/Footmedia)

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