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【ラ・リーガツアー/1日目】バルサという名のフルコース料理

2018.10.26

 サッカーキング編集部員の朝は早い。もっとも、今朝の僕の場合は意識の高さゆえに早起きをしたわけではなく、時差ボケと昨夜飲んだアルコールが原因で寝付けなかっただけなんだけれども。

 昨日はバルセロナに到着してすぐホテルに荷物を預け、近隣のレストラン『Tragaluz』に移動。世界各国から招待されたジャーナリストたちと夕食を共にした。

 カタルーニャ地方の料理として知られるパンコントマテは、一口かじれば完熟トマトの風味が鼻に抜ける。イベリコ豚の生ハムも、魚介類をすりつぶしたスープも、年代物の白ワインも、何もかもが舌を喜ばせた。

テーブルのそこかしこに、バルセロナを感じ取れる極上の一品が並ぶ。

 僕がレストランに到着した時、すでにテーブルには多くのジャーナリストが座っていた。ニュー〇ライズン仕込みの英語で話しかけてみると、彼らの国籍はイギリス、メキシコ、コロンビア、中国、カナダ、ナイジェリアと、非常に多種多彩であることが分かった。まさに“人種のるつぼ”である。

 ただ、やはりというか、僕のつたない英語力はすぐに使用不能の状況に陥った。自分の意思は何とか伝えることができるが、リスニングが壊滅的にできない。今回のツアーではスペイン在住のカメラマンであるムツ・カワモリさんに通訳を依頼しているのだが、ムツさんと合流できるのは翌朝のツアー1日目から。援護射撃がない緊張感からか、知らないうちにアルコールの摂取量が増え、夕食会がお開きになる頃には頭の中で鐘が鳴り響いていた。

 そんなわけで、ホテルに帰っても深い眠りにつけず、濃い目の下のクマと共に朝を迎えた。時差ボケも引きずっているため、正直かなり疲労感はある。だが、それよりも、いよいよ本格的にラ・リーガツアーが始まるんだという期待感の方が強い。この胸の高鳴りを栄養剤にしてしまおうと思う。

 9時半にホテルのロビーでムツさんと合流。ようやく言葉の問題がクリアになったことに安堵する。そして僕たちジャーナリスト一行は、ツアー最初の目的地、『シウタ・エスポルティバ・ジョアン・ガンペール』に向かった。

『シウタ・エスポルティバ・ジョアン・ガンペール』は、バルセロナ市郊外に佇むバルサの練習場である。選手たちが静かな環境で練習ができるよう、外から様子が見られない作りとなっているが、今回はラ・リーガがツアーの旗振り役を担っていることで、特別に施設の中に入れることになっている。普段は許可されていない写真や動画の撮影も、限定的に許されていた。

『シウタ・エスポルティバ・ジョアン・ガンペール』の説明を受ける。


バルサのエスクードがあしらわれた、近代的な建物。

 きれいに区画整理されている施設内を、ジャーナリストたちはカメラのシャッターを切ったり、レポート動画を撮影したりしながら歩いていく。僕も目ぼしい建物をスマートフォンでパシャパシャ撮っていると、向こうからクラブ専用のポロシャツを着た人物が近付いてきた。彼の名はマリオ・ルイス。バルサ下部組織の統括ディレクターだ。

「練習は常に、ボールとともに行う。小さい子どもたちも、トップチームの選手たちも同じだ。全ての年代が一貫した理念の下で練習を行うことで、バルサのスタイルが育まれてきたんだ」

 少しかすれてはいるが、力強い声で、彼ははっきりと述べた。たしかに皆が同じ方向にベクトルを向け、鍛錬を積んでいけば、いずれはそれが自分たちの血や肉となり、アイデンティティにまで昇華されていくのだろう。他のクラブより、とかく哲学を重んじるバルサの源流が見えたような気がした。

 僕は彼に聞いてみたいことがあった。かつてバルサの下部組織で注目を集め、現在はJリーグの横浜F・マリノスに所属する久保建英のことである。「18歳でのバルサ復帰」がまことしやかにささやかれている彼は、本当に青とえんじのシャツに袖を通すことができるのだろうか。

「私がディレクターになった時、クボはすでにクラブを去っていた。だから、彼を直接この目で見てはいないんだ。だが、クラブは引き続き彼の成長を見守っている」

 下部組織を束ねる身として言葉を選びながらも、誠実に答えてもらえた。バルサに帰還できるかどうかは、何より久保自身の成長に懸かっている。

一見怖そうに見えるが、マリオは時間の許す限り僕たちの質問に答えてくれた。

 施設内には、新しく作り直された『ラ・マシア』がある。元々は育成組織に所属する選手たちの寮のことを指していたが、現在はバルサの育成組織の総称として用いられる。

『ラ・マシア』の歴史は、クラブの伝説的な選手であり、監督としても一時代を築いたヨハン・クライフの提唱によって、1979年に幕を開けた。グアルディオラ、ビクトル・バルデス、プジョル、ピケ、シャビ、イニエスタ、メッシ、ブスケツ……。綺羅星の如く次々と才能あふれる選手たちを輩出してきた『ラ・マシア』では、トップチームでプレーすることを夢見ている少年たちが今日も汗を流している。

幾多の名選手を生み出してきた『ラ・マシア』。廊下ですれ違った少年たちが、未来のバルサを担う逸材になるかもしれない。

 続いて僕らが向かったのは、バルサのホームスタジアム『カンプ・ノウ』。敷地内に隣接する『Tapas 24』で昼食を取り、スタジアム見学に移った。

 まず、『カンプ・ノウ』内に併設されているミュージアムに案内された。ミュージアムのツアーガイドであるロジェール・マタスによって、展示品のトロフィーやユニフォーム、シューズなどについての説明がなされていく。

ガラスケースに並んだ貴重な品々を見てまわる。

 そして、選手たちが使用するロッカールームやミックスゾーンといった、特定の権限を持った人間でなければ立ち入れない場所にアクセスしていく。個人的に面白いと感じたのはロッカールーム。ホームチームのロッカールームより、アウェイチームのロッカールームの方が、はっきりと質素な作りになっているらしい。日本であれば、敵が使用するものであれ同等レベルのものを用意しようと心を砕きそうなものだが、ここではもっとドライな感覚が持たれているようだ。

 貴賓席から見下ろすと、『カンプ・ノウ』がいかに巨大なスタジアムなのかがよく分かる。選手たちにとって、この光景はパワーの源にもなるし、畏怖の心の元凶にもなり得るだろう。

ここで数々の名勝負が繰り広げられてきた。壮大なスケールに、心が震える。

 突然だが、皆さんは“エスパイ・バルサ”という言葉を聞いたことがあるだろうか。クラブが計画している、スタジアムとその周辺施設の大規模なリニューアルプロジェクトのことを指す言葉である。エスパイはカタルーニャ語で「スペース」の意味。直訳すれば、「バルサ・スペース」といったところか。

 プロジェクトのディレクターであるビル・マナレッリは、“エスパイ・バルサ”によってどのような変化がもたらされるのかを詳細に説明してくれた。原稿の尺の関係上、その全てを明記していくことはできないが、たとえば『カンプ・ノウ』がフル3階席になり、収容人数は10万5千人にまで増えること、全天候型の屋根が付くこと、充実のホスピタリティスペースが併設されること、車やバイクが約5,000台収容できる駐車場ができることなどが挙げられる。

 プレゼンテーションを聞いて感じたのは、“エスパイ・バルサ”は、ただのスタジアム改修プロジェクトではないということだ。「バルサ・スペース」で人々が有意義な時間と経験を手にし、スポーツを通して心が豊かになるようにという心意気が感じられる。「MES QUE UN CLUB(クラブ以上の存在)」という標語を掲げるクラブらしい、誇りと自信に満ちた一大プロジェクトの推移を、これからも見守っていきたい。

スタジアム周辺は様相をがらりと変える。クラブは、このプロジェクトが多くの感動を呼ぶと確信しているようだった。

 『カンプ・ノウ』を出ると、時刻は18時をまわっていた。バルセロナの空はまだ明るい。ホテルに戻って少し落ち着いたら、少し街を散策してみようか。何しろ、今日は一日かけてバルサという名のフルコース料理を堪能したのだ。明日からも極上の料理に舌鼓を打つために、腹ごなしをしておかなければ。

文=松本武水

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