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【コラム】動く額が少なかったスペイン冬の移籍市場…補強に頼らない下部組織の充実

2017.02.06

スペイン勢は今冬の移籍市場ではあまり大きな補強を行わなかった [写真]=Getty Images

 欧州主要リーグにおける冬の移籍市場が1月31日にクローズした。スペインの1部クラブは、この冬に総額で2655万ユーロ(約32億円)を補強に費やした。そして選手を移籍させ、2780万ユーロ(約33億円)を手にした。出費よりも、実入りの方が多く、経営的にはポジティブなバランスだとスペイン紙『アス』は伝えている。

 冬の移籍市場でスペインのクラブに入団したのは40人で、セビージャのMF清武弘嗣を含め退団したのは44人だった。補強を最も多くしたチームがレガネスで7人、次にグラナダで6人となっている。リーガ・エスパニョーラ第20節終了時点でレガネスは降格圏内からひとつ上の17位、グラナダは20位と底辺にいる。冬の補強は問題があるチームがするものであり、下位のチームが積極的に入れ替えを行った。40人の新加入選手のうち、実に33人を下位10チームが迎え入れた。

 一方で補強をしなかったのは6チームあった。FIFAから補強禁止を言い渡されているレアル・マドリードとアトレティコ・マドリードの2チームにバルセロナ、レアル・ソシエダ、エイバル、エスパニョールだ。最も大きな買い物を行ったのは、セビージャだった。アルゼンチン1部ロサリオ・セントラルからワルテル・モントーヤを獲得し、550万ユーロ(約6億6000万円)を使った。そして最も選手を高く売ったのはビジャレアルで、元ブラジル代表FWアレシャンドレ・パトを1800万ユーロ(約22億円)で中国に売却した。

『アス』にはスペインだけでなく、欧州主要リーグの移籍市場で動いた金額も掲載されていた。

▼プレミアリーグ(イングランド)
支出:2億3380万ユーロ(約284億円)
収入:2億7710万ユーロ(約433億円)

▼ブンデスリーガ(ドイツ)
支出:1億70万ユーロ(約122億円)
収入:8140万ユーロ(約99億円)

▼セリエA(イタリア)
支出:9700万ユーロ(約118億円)
収入:7120万ユーロ(約86億円)

▼リーグ・アン(フランス)
支出:1億4760万ユーロ(約178億円)
収入:3500万ユーロ(約42億円)

 スペインの移籍市場と比較すると、動いた額は他国の方が大きかった。レアル・マドリードとバルセロナを除くスペインのチームは、特にプレミアリーグのクラブと比較すると予算が大きく違う。とはいえ、ヨーロッパリーグでセビージャが3連覇を達成したように、スペイン勢は欧州の舞台で好戦績を残している。

 その強さを支えている要因のひとつとして、下部組織の充実が挙げられる。

 スペインは他国に比べてライセンスを持つ指導者の数が多く、各チームは育成に力を入れている。下部組織のリーグ戦の競争力も高い。この冬の移籍市場では、トップカテゴリーと同様に下部組織の移籍報道も目にした。マンチェスター・Cのフットボールディレクター、チキ・ベギリスタイン氏は1月にバレンシアを訪れているが、同クラブの下部組織の選手の交渉のためだったとスペイン紙『スーペル・デポルテ』は報じた。

 富ある者が、下部組織でも選手なり、監督なり優秀な人材を引き抜いている。この動きは数年後、トップカテゴリーの勢力図にどんな影響を与えるのだろうか。

文=座間健司

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