2016.10.04

【コラム】重国籍者が当たり前となった21世紀 スペイン代表も人材の奪い合いに直面

D・コスタ
ブラジル代表として親善試合に出場したこともあるD・コスタだが、最終的にスペイン代表を選択した [写真]=VI Images via Getty Images
フリーライター&フォトグラファー。スペインで活動中。

 新生スペイン代表は順調なスタートを切っている。ワールドカップ、ユーロを制覇したビセンテ・デル・ボスケ監督がユーロ2016で退任し、その後をフレン・ロペテギ監督がスムーズに引き継いだ。ロペテギ監督は2012年にU-19、2013年にU-21スペイン代表を率い、欧州王者に輝いた。今後脂が乗ってくるタレントある若いスペイン人選手を熟知しており、黄金期を終え、世代交代を迫られたチームに、まさに適任だ。実際にGKイケル・カシージャス(ポルト)を招集リストから外すなど改革を進めながら、W杯予選を戦っている。

 インターナショナルマッチウィークになっても、スペインの主要スポーツ紙のレアル・マドリード、バルセロナの2大クラブに割くスペースは特に変わらない。代表のニュースにしても、レアル・マドリードで出場機会を得られていないMFイスコの選出など、必ずクラブと絡めて報道される。

 だが、最近代表に関して、毛色の違うニュースもよく目にする。帰化の可能性や重国籍についてだ。

 欧州ではEU連合が象徴するように、多くの人種が国境に関係なく交流する。国際結婚はもちろん、重国籍者はもはや珍しくもない。たとえば血のつながった兄弟なのに兄チアゴ(バイエルン)は生まれ育ったスペイン代表でプレーし、弟のラフィーニャ(バルセロナ)は両親の母国であるブラジル代表を選択した。彼らのように代表チームを選択できる選手は現代には多く、そのため代表同士でも人材の奪い合いが始まっている。

 2014年ブラジルW杯前にはジエゴ・コスタ(チェルシー)がブラジル代表とスペイン代表の間で争奪戦になった。同W杯後には、スペイン代表が当時バルセロナのトップチームでデビューし、華々しい活躍をしていたムニル・エル・ハダディ(バレンシア)を招集し、フル代表でデビューさせた。元代表監督のデル・ボスケ氏は否定したが、スペインとモロッコの2つの国籍を持っているムニルを奪われないために、スペインが迅速に動いた。フル代表で公式戦をプレーすると、代表チームを変更することができなくなる。ムニルは途中出場でデビューこそ果たしたが、その後はフル代表で1試合もプレーしていない。

 先月のインターナショナルマッチウィークでスペイン紙『マルカ』は、代表チームの動向以上に、アスレティック・ビルバオに所属するDFアイメリク・ラポルテについて報道した。フランス人のラポルテは年代別代表でプレーし、U-21フランス代表でキャプテンを務めた。しかし、現在はまだフランスのフル代表でのプレー経験はなく、2010年からスペインに居住している。報道によればロペテギ監督はラポルテに「スペイン代表でプレーしたくないか?」と電話で打診したという。ラポルテはスペイン国籍取得の申請を進めているという。この報道を受け、フランスサッカー協会のノエル・ル・グラエ会長は「ラポルテの幸運を祈るが、彼は間違えた」と意見した。

 一方、スペイン紙『エル・パイス』によると、セルビアが、ストークに所属するスペイン人FWボージャン・クルキッチのフル代表招集の許可をFIFAにリクエストしたという。

 現在26歳のボージャンは8年前にW杯欧州予選の公式戦に途中出場し、スペインのフル代表でデビューしたが、その後は代表に招集されておらず、父親の母国が代表招集に手を挙げた。しかし、セルビアの申請はFIFAに却下されている。

 重国籍者が当たり前の21世紀。今後は代表チームによる人材の奪い合いがスタンダードになり、さらにはクラブ間での選手獲得競争同様に激化の一途を辿るのだろうか。

文=座間健司

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