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定位置を確保したS・ロベルト、“バルサ史上最高の右SB”の幻影を消す

2016.09.27

今シーズンは右サイドバックのレギュラーとしてプレーしているセルジ・ロベルト [写真]=NurPhoto via Getty Images

 バルセロニスタにとってブラジル代表DFダニエウ・アウヴェス(現ユヴェントス)は、難しい存在だった。

 敗戦後に彼の恋人を真似た女装姿でメッセージを発したり、ミックスゾーンでは議論を生む刺激的なコメントをしたり、対戦相手に敬意を欠くようなセレブレーションを踊ったり。ピッチ外で余計な話題を振りまく。それでも彼がクレから支持を集めたのは、ピッチでのパフォーマンスが圧倒的だったからだ。

 右サイドを何度も上下し、右サイドではアルゼンチン代表FWリオネル・メッシと絶妙のコンビネーションで決定機をつくった。クロスの精度が低いという批評は少なからずあったが、豊富な運動量と攻撃時の高いスキル、そして時にポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド(レアル・マドリード)をも封じるディフェンスの強度の高さは、バルセロナにとって、まさに理想の右サイドバックだった。だからD・アウヴェスが、例のごとくピッチ外で話題を振りまいても、契約更新時にクラブに対して挑発的な発言をしても、顔をしかめながらも寛容した。

「気に入らない。だけど、バルセロナであいつの代わりが務まるサイドバックが、世界のどこにいるんだ」

 ブラジル人サイドバックについて議論すると、バルセロニスタは必ずこう言って結論づけた。

 クラブ史上最高の右サイドバックと言われた選手が夏に去った。そして秋になろうとしている今、彼を懐かしむ声は聞かれない。大きいと思われていたD・アウヴェスの穴を、スペイン代表MFセルジ・ロベルトが完全に埋めているからだ。

 カンテラ育ちのS・ロベルトは、2013年からトップチームでプレーするようになったMFだったが、ルイス・エンリケ監督が右サイドバックにコンバート。どのポジションでもプレーできる才能はあったが、昨シーズンから右サイドバックでも起用されるようなり、今シーズンはすでにその位置でレギュラーの座をつかみ、スペイン代表でも同ポジションで先発出場を果たした。今では、レアル・マドリードの同代表DFダニエル・カルバハルのライバルとして認知されている。

 リーガ・エスパニョーラ第6節のスポルティング・ヒホン戦では3アシストを記録。アウェーで5得点を決めたチームを文字どおり、けん引した。

 試合後にS・ロベルトはこうコメントした。少なくとも、必要のないことは言っていない。

「試合ごとにこのポジションの居心地がよくなっているし、慣れてきた。攻撃とディフェンスに関して動きを学んでいる。僕にとっては新しいポジションだけど、僕の希望は試合に出場することだ。サイドバックでプレーする度に、このポジションがもっと好きになっていくんだ」(スペイン紙『ムンド・デポルティーボ』)
 
 ルイス・エンリケ監督は手放しで称える。

「バルサにとってS・ロベルトよりもいい右サイドバックは見つからない。彼がサイドバックのポジションを好きになっていると聞いて、嬉しいよ。チームに多くをもたらしてくれる」(スペイン紙『ムンド・デポルティーボ』) 

 スペイン紙『マルカ』は、バルセロナで今シーズン最も走っている選手として、S・ロベルトを紹介。スポルティング・ヒホン戦、ベティス戦、そしてチャンピオンズリーグ・セルティック戦では各試合で11キロ以上走っていたと、運動量の豊富さを裏付けている。

 スペインラジオ局『カタルーニャ・ラジオ』は、センタリングの的中率を挙げた。D・アウヴェスは昨シーズン、29試合で4アシストを記録。70本のクロスの内、味方のシュートにつながったのは、42.8パーセントだった。一方、S・ロベルトは今シーズン4試合4アシストで、16本のクロスの内56.2パーセントが味方のシュートにつながっている。つまりD・アウヴェスよりもクロスの確度は高い。
 
 バルセロニスタが前任者の郷愁にかられていないという事実は、S・ロベルトにとって順調な滑り出しを意味する。とはいえ、シーズンは始まったばかり。カンテラ上がりの右サイドバックは、D・アウヴェスの偉大な軌跡を塗り替えられるか。

文=座間健司

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