FOLLOW US

【コラム】首位浮上逃したアーセナル、好調ウォルコットとともに勢いを取り戻せるか

2016.10.28

今季これまで通算8ゴールと好調のウォルコット [写真]=Getty Images

「冴えない顔をしているだろう?」

 22日に67歳の誕生日を迎えたアーセナルのアーセン・ヴェンゲル監督が、同日ホームで行われたミドルズブラ戦で0-0の引き分けに終わった後、そう悔しそうに呟きこう続けた。

「どんなにボールを支配しても、それだけでは不十分だ。ボールを支配した半面、我々は疲れを見せ、相手のカウンターに対応しきれなかった。75パーセントの支配率を持ってしても、負ける可能性もあった。今日は勝てなかったが、少なくとも負けなかったことを前向きにとらえたい」

 ボール支配率75パーセントを記録したアーセナルの枠内シュート数が5本であったのに対し、ミドルズブラが4本と、カウンターから決定機を許し、その度にチェコ代表GKペトル・チェフの好セーブに救われた。この試合までプレミアリーグで6連勝と上り調子だったアーセナルは、同節で首位マンチェスター・Cが引き分けたため、勝てば首位に浮上する可能性もあった。それだけにヴェンゲル監督はナポレオンの格言を用い、「誕生日はお酒でお祝いするものだが、勝利の酒は飲む価値があり、そうでない時は飲まないといけない」と冗談交じりに話した。

 連勝が断たれたのは不安要素だが、一方でアーセナルは開幕戦でリヴァプールに敗れて以来、無敗を維持しており、前向きな要素もある。アーセナルの好調を支える選手が、今シーズン通算8ゴールと波に乗るイングランド代表MFセオ・ウォルコットだ。彼はこれまでにプレミアリーグで5ゴール、チャンピオンズリーグで3ゴールをたたき出しており、両リーグの得点ランキングにおいてそれぞれ3位タイに付けている。

 そんなウォルコットについて、アーセナルOBで現在はイギリスメディア『BBC』の解説者を務める元イングランド代表DFマーティン・キーオン氏は次のように話す。

「今シーズン、ウォルコットは一皮むけた。選手として成長したし、頭の中でスイッチが入ったみたいな好プレーを見せている。彼は希望していたストライカーではなく、ウインガーとしての自覚が芽生えている。すでに昨シーズンの自らのゴール記録を更新しており、2013-14シーズンに記録した最多記録である14ゴールをも塗り替える勢いだ。さらに彼は守備面でも改善を見せており、タックルの成功率が今までで最も高い。年齢も27歳と脂がのっており、10年以上アーセナルに所属する選手として、定位置確保への意志も強くなった。今シーズンは8試合連続して先発しており、これまでの最長先発記録は2011-12年シーズンの10試合だっただけに、それにも迫る勢いだ」

「今シーズン、ウォルコットは自分のプレーに自信を持ち、心と体が一致している。ヴェンゲル監督が彼について『前よりも自由にプレーできるようになっている』と語ったのはそれが理由だろう。ワントップを(フランス代表FWオリヴィエ)ジルーから(チリ代表FWアレクシス)サンチェスに変えたことも、ウォルコットと(ドイツ代表MFメスト)エジルの連係を良くしている。アーセナルのビルドアップは速くなったし、サンチェスが相手の裏を突くようになった。アーセナルの速攻は非常に流動的だし、特に、右サイドのウォルコットと(スペイン代表DFエクトル)ベジェリンの連係とオーバーラップは素晴らしい。ただ、ウォルコットもアーセナルも、今の好調を維持し続けることが成功のカギとなる」

 アーセナルは25日にホームで行われたフットボールリーグ・カップ4回戦でレディングを2-0で撃破し、公式戦無敗記録を13試合に伸ばした。次戦は敵地でのプレミアリーグ第10節、サンダーランド(最下位)戦が控えるが、再び白星を築いて勢いを取り戻したいところだ。

文=藤井重隆

SHARE

LATEST ARTICLE最新記事

SOCCERKING VIDEO