FOLLOW US

日本勢初の決勝進出へ…大番狂わせ狙う広島、リーベル戦は中盤の攻防に注目

2015.12.16

青山(左)とクラネビッテル(右)のプレーは見どころのひとつ [写真]=LatinContent/Getty Images

 歴史を変える1勝をつかめるか――。

 現在開催中のFIFAクラブワールドカップ準々決勝でアフリカ王者を破り、クラブ初となるベスト4進出を果たした広島。16日の準決勝ではファイナル行きの切符を懸けて南米王者のリーベル・プレート(アルゼンチン)と激突する。

 広島にとっては、2日に行われた明治安田生命Jリーグチャンピオンシップ第1戦からの15日間で5試合目。疲労蓄積が懸念されるが、選手たちの表情は明るい。準々決勝のマゼンベ(コンゴ)戦で先制点を決めたDF塩谷司が「こういう相手と試合ができる機会はなかなかないですし、とにかく楽しみ」と語れば、MF柏好文もまた「疲れよりも充実感や試合をやりたいという気持ちのほうが大きい」とモチベーションは高く、大一番を待ち切れない様子。

 過去、Jクラブ勢は2007年の浦和レッズ、2008年のガンバ大阪、2011年の柏レイソルと3度準々決勝に挑みながら、ファイナルへの道を世界の壁に阻まれてきた。だが、広島としてはもちろんリーベルとの対決を経験だけで終わらせるつもりはない。アルゼンチン国内リーグで最多優勝回数を誇る名門を相手にどこまで通用するのか。リーベル優位の下馬評に、森保一監督は「サッカーは何が起こるかわからない。我々にも必ず勝つチャンスはある」と勝機があることを強調した。

 リーベルは8月のスルガ銀行チャンピオンシップでガンバ大阪に3-0で圧勝。個の能力が高いのはもちろん、球際にも強く、中盤でボールを支配しながら攻撃的なサッカーを展開した。今回も序盤から押し込まれることが予想されるため、「球際の部分で相手としっかり戦わなければ、試合をいい形で進めることはできない」(森保監督)と持ち前の粘り強い守備を見せられるかが重要になってくる。

 試合のカギを握ることになりそうなのが中盤の攻防だ。リーベルのマルセロ・ガジャルド監督は広島について「特にキャプテンを軸にして攻撃するチーム」と攻守にわたって影響力を発揮するJリーグ屈指のボランチ青山敏弘に警戒感を示した。青山はこれを受けて、「自分が激しくマークされるほど、他の選手にチャンスが生まれる。僕はこのチームを信頼していますし、それで結果を出してきました。このスタンスは次の試合でも変わらない。僕を止めてもチームは止まらないです」とあくまで冷静な姿勢を崩さない。マゼンベ戦ではチーム3点目を演出しており、その優れたパスセンスを発揮できれば、広島がゴール前に迫る回数は自然と増えるはずだ。

 一方、森保監督もリーベルの要注意選手として中盤のMFマティアス・クラネビッテルを挙げ、「攻守をつなぐ役目をしている」と評価した。クラネビッテルは攻守のバランス感覚に優れ、ボール奪取を得意とすることから「ハビエル・マスチェラーノ2世」とも称される。大会終了後にはアトレティコ・マドリードへ移籍することが決定しており、決勝へ勝ち進めばバルセロナでプレーする“本家”との激突が見られる可能性もある。青山、クラネビッテルともにチームの心臓と呼ぶべき存在。中盤の底でチームを統率する両者のプレーが、試合の流れを左右すると見ていいだろう。

 この大会期間中、広島の選手たちは「挑戦者だから」と常々口にしてきた。Jリーグ王者でありながら、あくまで挑戦者として挑む。それがクラブW杯における広島のスタンスだ。リーベルが格上であることは百も承知。エースのFW佐藤寿人は「やれない相手ではない。決勝進出は高い壁だと思っています。ただ、自分たちは決して勢いでここまで来ているわけではない。しっかりとしたサッカーでタフなリーグ戦からずっと戦ってきていますし、全員の力でやれてきている」と闘志を燃やした。

 今季、Jリーグで最多得点、最少失点という完成度の高いサッカーでタイトルを奪った広島には“Jリーグ王者”としての確固たる自信、そして今大会で2試合完封勝利を収めているという手応えもある。勝ち上がってきた勢いと団結力、そして試合勘は決して南米王者に劣るものではない。

「この舞台で勝てば、それは間違いなく“ジャイアントキリング”」(佐藤寿)

 南米王者が立ちはだかろうとも、強敵に恐れる様子などない。日本勢初の決勝進出へ――。全世界が注目する大舞台で番狂わせを起こす気概と準備はすでにできている。

文=高尾太恵子

By 高尾太恵子

サッカーキング編集部

元サッカーキング編集部。FIFAワールドカップロシア2018を現地取材。九州出身。

SHARE

LATEST ARTICLE最新記事

SOCCERKING VIDEO