2015.12.14

まさにサッカーの宝石箱…“MSN”だけではない、欧州王者バルセロナの魅力とは

ネイマール
脅威の攻撃力を誇る“MSN”だが、バルサの魅力はそれだけではない [写真]=Getty Images
サッカージャーナリスト。プレー分析を中心に、海外サッカーから日本代表までカバー。

 過去2回のFIFA クラブワールドカップ優勝を誇るバルセロナは4年ぶりの参戦となる。今回の看板はもちろん“MSN”と言われるFWリオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの3トップだが、世界トップレベルの下部組織とスカウティング網を持つバルセロナは中盤から最終ラインまで魅力的なタレントを揃えている。

 ルイス・エンリケ監督の体制下で“MSN”が前線に定着して以降、3人が中盤から仕掛けとフィニッシュの両面で中心となり、“ティキ・タカ”と呼ばれる伝統的な細かいパスワークや中盤の選手がトップを追い越す動きが少なくなったことが指摘されるが、4-3-3の3ハーフによる組み立ての質は依然として高い。

 長身ながら技術が高くバランスワークに優れたMFセルヒオ・ブスケッツ、高度な展開力を誇り、長短のパスを振り分けるMFイヴァン・ラキティッチ、そして柔軟な足技と的確な判断を組み合わせて良い形で“MSN”につなぎ、時に相手が予期できないタイミングでゴール前に顔を出すMFアンドレス・イニエスタ。彼ら3人が中盤のファーストチョイスだが、ここに来て指揮官と周囲の評価を高めているのがMFセルジ・ロベルトだ。

 14歳からバルセロナの下部組織に在籍するテクニシャンは177cmのしっかりした体格を備えるが、ボールを扱う身のこなしは小兵の選手を思わせる。また機動力が高く、ボールを持ってもトップスピードで持ち上がれることから、ブラジル代表のDFダニエウ・アウヴェスをアクシデントで欠いた今シーズンの序盤戦は右サイドバックを担当。ほぼ完璧に穴を埋めると共に、戦術的なプレーの幅を広げた。

 彼の評価を一気に高めたのが10月31日のヘタフェ戦。中盤の左ハーフで先発したセルジ・ロベルトは正確なパスとキープ力で中盤の支配力を高めると、ヒールキックのラストパスでスアレスの先制ゴールを演出し、さらに鋭いカウンターからドリブルを仕掛け、絶妙のタイミングでネイマールの追加点を呼び込むクロスを送り届けた。

 確かに“MSN”はアタッキングサードで前を向ければ3人でも相手の守備ブロックを崩し切ってしまう破壊力を誇るが、その偉大さから“ドン・アンドレス”(ドンはスペインで男性に付ける敬称。アンドレスはファーストネーム)の異名を持つイニエスタに加え、クロアチア代表の名手ラキティッチ、そして急成長を遂げるセルジ・ロベルトがもたらす攻撃のアクセントはテレビより是非スタジアムで目撃したい妙技だ。

 バルセロナの中盤でもう1つ注目してほしいものがある。それはパスを受ける選手がトラップの直前に行う“瞬間視”だ。“首振り”と表現されることも多いこの動作は周囲の状況を的確に把握し、効果的なプレーを選択するために重要な情報収集の手段なのだが、バルセロナのMFはそれが素早く、回数が多い。その理由は流れの中で、周囲の選手が動く場所とディフェンスの位置関係を常にアップデートする必要があるためだ。

 必要だからすると言っても、ボールを回しながら“瞬間視”や同時的な視野を駆使して周りの状況を収集し、整理することは決して簡単ではない。常にボールに意識を集中していなくても正確に扱える高い技術と洞察力、そして明確な判断力が揃っていなければ、かえってミスの要因になってしまうだろう。バルセロナはそうしたプレーを基本戦術に沿いながら、下部組織から指導しており、20歳にしてトップチームに名を連ねるMFセルジ・サンペルや大会中の12月18日に21歳の誕生日を向かえるジェラール・グンバウ(バルセロナB)も高いレベルで身に付けている。

 現在のバルセロナはジョゼップ・グアルディオラ(現バイエルン監督)や故ティト・ビラノバが率いていたチームに比べると、アタッカー陣が精力的にボールを追って奪い取る守備スタイルから、3ハーフと4バックでじわじわプレッシャーをかけて相手のミスを誘うスタイルに移行している。その理由は単に“MSN”の守備貢献が少ないだけでなく、彼ら3人がサイドより中央志向の強い攻撃スタイルを取っているためだ。

 つまり、相手にとっては攻撃の開始時点で左右のサイドが空いているわけだが、無理にそのスペースを埋めようと頑張るよりも、その手前に守備ゾーンを敷いた方が安定して守りやすい。全体のバランスを取る分、ボールサイドに多くの人数をかけることは難しいが、3ハーフの中央に構えるブスケッツに加え、昨年の夏からラキティッチが加わったことが大きい。テクニシャンでありながらフィジカルが強く、チームのために汗をかくことを厭わない大型MFは一発のタックルでボールを奪う能力も備えている。4-3-3という基本システムだが、流れによってはブスケッツとラキティッチが2ボランチの様なポジションでバイタルエリアの手前に構えるケースも多く、相手にとって堅固な中盤の防波堤となっているのだ。

 4バックも攻守の高い能力を兼ね備える選手が揃うが、特に注目したいのはアルゼンチン代表のDFハビエル・マスチェラーノだ。もともと本職は中盤のディフェンシブなMFだったが、バルセロナでチーム事情からDFラインに入ると驚異的な守備能力を発揮し、センターバックとして新境地を開拓した。高い位置までラインを上げながら果敢にインターセプトを狙うイメージが強いが、ゴール前での粘り強さも折り紙付きで、170半ばの身長だが空中戦に強く、10cm以上も高い相手に競り勝つことも。跳躍力もあるが、純粋な高さではなく、いち早く良いポジションを取り、相手にうまく飛ばせず自分の頭に当てるという形だ。

 また球際の強さだけでなく、ボールが無いところでのアタッカーとの駆け引きは非常に見所がある。スタジアムに足を運んだファンが攻撃陣の華やかなプレーを観るのは当然として、こうしたテレビに映りにくいところでワールドクラスの凄さを感じ取るのも現場ならではの醍醐味。サイドバックのD・アウヴェスやDFジョルディ・アルバが攻め上がるタイミングや、広大なカバーリングとキックセンスを兼ね備えるGKクラウディオ・ブラボのポジショニングや美しい軌道のロングフィードなど、世界を感じられる要素が詰まっている。バルセロナの試合はさながらサッカーの宝石箱なのだ。

 準決勝で対戦するアジア王者の広州桓大はご存知の通り、ネイマールの恩師でもあるブラジルの名将ルイス・フェリペ・スコラーリが率い、MFパウリーニョやFWリカルド・グラールなどブラジル代表クラスと中国を代表する選手たちがチームとしてよくまとまっている。

 12日に行われたデポルティーボ戦から移動を含め中4日、左足の内転筋にケガを抱えるネイマールの状態など不安要素はあるが、“闘将”ルイス・エンリケ監督のもと選手たちも4年ぶりの世界制覇に向け、テンションを上げて臨むはず。期待通りのパフォーマンスで観る者を魅了するのか、それとも広州恒大に予想以上に苦しめられることになるのか。14日現在、バルセロナ対広州恒大戦のチケットは若干残っている模様。世界が注目する一戦を是非、スタジアムで目撃してほしい。

文=河治良幸

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