2015.02.14

欧州デビューが迫る南野拓実が移籍したザルツブルクってどんなクラブ?

南野拓実
ヒュッター監督の下、ザルツブルクで練習に励む南野 [写真]=Getty Images

 今年の1月にセレッソ大阪から、オーストリア1部の名門、レッドブル・ザルツブルクへ移籍した南野拓実。14日に行われるオーストリア・ブンデスリーガ第20節のウィーナー・ノイシュタット戦での欧州デビューが期待されるが、南野がプレーするレッドブル・ザルツブルクとはいかなるクラブなのか。

 現在のザルツブルクを語る上で、スポーツ・ディレクターのラルフ・ラングニックの存在は欠かせない。「南野のことはずっと追いかけてきた。高い潜在能力を持っている」とコメントしたラングニックは、かつてシャルケなどで監督を務め、「プロフェソア(教授)」の異名で呼ばれた智将だ。内田篤人を指導したこともあり日本人への理解も深く、今回の移籍はこのランゲニックが南野を高く評価したことから実現したといっていい。

「攻撃的なスタイルがとても気に入っています」と南野本人が話すように、現在のザルツブルクはこのラングニックが掲げるモダンで攻撃的なサッカーを実践している。昨季は2位に勝ち点18差をつけてリーグ優勝を果たしたばかりか、36試合で110ゴールというリーグ最多得点記録を打ち立てた。当時の監督のロジャー・シュミットはレヴァークーゼンに引き抜かれたものの、現在は後任のアドルフ・ヒュッター監督がスタイルを継承し、今季のヨーロッパリーグでは6試合で21ゴールと欧州の舞台でも破壊力を見せつけている。

 ザルツブルクの培ってきた歴史もまた、南野を引き付けるのに十分だろう。クラブの創立は1933年。前身のカジノ・ザルツブルク時代と合わせて8度のリーグ・タイトルを持つ強豪だ。オーストリア1部リーグは1911年に創設、イギリスを除くヨーロッパ大陸で最も古い歴史を持つが、そのなかでも近年、大陸規模で高い評価を得られているのは、このザルツブルクと、90年代にイビチャ・オシムが率いていたシュトゥルム・グラーツくらいのものだろう。

2005年から世界的な清涼飲料メーカー「レッドブル」社がスポンサーとなり、潤沢な資金を携えたクラブは、バイエルン・ミュンヘンと提携を結び、翌年にはイタリアの世界的名将ジョヴァンニ・トラパットーニとドイツの闘将ローター・マテウスによる2頭体制を実現。トーマス・リンケ、アレクサンダー・ツィックラー、ニコ・コヴァチら元バイエルンの世界的選手を次々と呼び寄せた。元日本代表の宮本恒靖、三都主アレサンドロ、彼らの通訳としてモラス雅輝(元浦和レッズ・コーチ)が在籍していたのもこの頃だった。

 ホームタウンのザルツブルクは、オーストリア第2の都市。旧市街の町並みは美しく、ユネスコ世界遺産にも登録されている。ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの出生地であり、市民の文化的素養が高く、観光地としても人気が高い。日常生活には不自由しない都会的要素もある。距離的にウィーンよりもドイツとの距離が近く、元々はオーストリアではなくドイツの一部としてウィーンと対立していた歴史を持つ。バイエルン・ミュンヘンの後ろ盾を得て、首都のクラブ勢とライバル関係にあるのは、こうした背景があるからだ。

 2007年に改装されたホームスタジアム「レッドブル・アレーナ」の収容人数はリーグ最多の3万200人。特徴は、人工芝が使われている点と、ピッチとスタンドの距離が驚くほど近い点。試合の日はほぼ満席状態となり、臨場感は満点だ。

 南野はザルツブルクでどのような役割を担うだろうか。現在のチームを見ながら検証してみたい。システムは主にボックス型の4-4-2、またはダイヤモンド型の4-4-2を併用。昨年12月からは後者のシステムが重用されている。

 GKはかつてリヴァプールに所属していたペーテル・グラーチが不動の存在。エリア外のスペースをカバーする近代的GKで、昨年、ハンガリー代表デビューを果たし、名手ガボール・キラーイの後継者として期待を集める若手GKだ。

DFラインの中央は22歳の若きオーストリア代表マルティン・ヒンテレッガーと、来季のレヴァークーゼンへの移籍が決まったブラジル人アンドレ・ラマーリョが固める。右サイドはロングスローが得意なアンドレアス・シュヴェクラ―、左サイドのアンドレアス・ウルマーがともにダイナミックなオーバーラップで攻撃に厚みを加える。

MFはダイヤモンド型の場合、オーストリア代表のシュテファン・イルザンカーを後方に、テクニシャンのクリストフ・ライトゲープがトップ下でゲームをコントロールする。サイドは昨年までスロベニア代表ケヴィン・カンプルの突破力を売りにしていたが、カンプルは1月にドルトムントへ移籍。昨年、オーストリア代表デビューを果たしたヴァレンティノ・ラザロ、ベルギーの新鋭マッシモ・ブルーノらが、カンプルの後釜に名乗りを挙げる。ボックス型の場合は、19歳のギニア代表MFナビ・ケイタがイルザンカーと中盤の底でコンビを形成して守備的役割を担う。

 FWは2トップを採用。絶対的なエースは、昨季、17試合で19ゴールと驚異の得点力を発揮したホナタン・ソリアーノだ。キャプテンを務めるこのカタルーニャ人のパートナーだったブラジル人のアランが中国の広州恒大に移籍。その代役として今シーズン、ライバルクラブのシュトルム・グラーツで11ゴールを挙げているマルコ・ジュリチンがファーストチョイスとなると予想される。バックアッパーにはオーストリア代表マルセル・ザビツァー、20歳のドイツ人ニルス・クアシュナーが控える盤石の体制だ。

 ソリアーノが健在な限り、FWの一枠は不動。南野のライバルとなり得るのはジュリチン、ザビツァー、クアシュナーの三人となる。また、カンプルの移籍により層の薄くなったサイドMFでの出場機会もあるだろう。ただし、ザビツァーとクアシュナーは南野と同様にMFをこなす柔軟性を持つため、レギュラーへの道のりはそう簡単ではない。

 昨年1月の親善試合で、ザルツブルクがクラブ・ワールドカップを制し、世界一になったばかりのバイエルン・ミュンヘンを3-0で下したことも、記憶に新しい。相手が強豪ともなれば、前線から絶え間なくプレッシングを仕掛け、ボールを奪ってすぐに速攻を仕掛ける戦術を持つ。南野にはそれに適応できるだけのスタミナとスピード、技術、決定力が求められる。もちろん、語学力も必要とされる。

 道のりは平坦ではない。が、南野と同世代の若手も多く、生き残るために守備一辺倒のサッカーに甘んじるスモールクラブに移籍するよりは、ヨーロッパ最先端の攻撃的サッカーでリーグ優勝を争える点は、彼にとって大きなアドバンテージである。仮にカンプルの穴を埋めるか、ソリアーノのパートナーの座を射止めるようなことがあれば、有無を言わさずビッグクラブへの扉が開けることになるだろう。

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