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【ライプツィヒ】必然の大躍進~クラブが掲げる明確なプラン~

2017.01.26

2009年、レッドブル社の買収によって発足したライプツィヒの小さなクラブは、わずか7年で5部リーグからトップリーグへと駆け上がり、初挑戦のブンデスリーガでも驚くべき快進撃を見せている。この成功の裏にレッドブル社の後ろ盾があったことは間違いない。だが、RBライプツィヒは親会社にすがるだけの成り上りクラブでは決してない。今回はクラブ広報担当者への取材が実現。その言葉からはライプツィヒが大躍進を遂げている理由の一端が見える。彼らのクラブ経営には明確なプランと、“新参者”としての謙虚さがあった。
[ワールドサッカーキング2017年3月号増刊「2016-2017 ブンデスリーガ後半戦ガイド」]

第2節でドルトムントを勝利したライプツィヒは前半戦でサプライズを巻き起こした  [写真]=Getty Images

第2節でドルトムントを勝利したライプツィヒは前半戦でサプライズを巻き起こした [写真]=Getty Images

「ドルトムントがブンデスリーガ初参戦の昇格チームに敗れる」

 そんなニュースが飛び込んできたのは今から半年前のことだ。

 2016年9月10日、2週間前に行われたマインツとの開幕戦に勝利したドルトムントは、開幕2連勝を懸けて敵地ライプツィヒに乗り込んでいた。アウェーゲームとはいえ、昇格チームが相手となれば彼らにとっては勝利が義務づけられた試合。ところが、第2節にして優勝候補の一角に早くも土がつくことになる。

 ヴィリ・オルバン、ディエゴ・デメ、エミル・フォルスベリ、そしてナビ・ケイタ……。強豪ドルトムントを相手にピッチで躍動する彼らの名前や国籍、年齢やプレースタイルを、この時点で正確に把握している者はほとんどいなかったに違いない。だが、あれから半年が経った今、ブンデスリーガのファンであれば彼らの名前は誰もが知っている。正確にはシーズンが進むにつれて自然に覚えたと言うべきだろうか。

 ドルトムントを撃破したライプツィヒはその後も快進撃を続け、第16節を終えた時点で首位バイエルンと3ポイント差の2位。歴代の昇格チームが打ち立ててきた様々な記録を塗り替えながら、一時は首位にも立った。こうなるとファンの頭の中には当然の疑問が浮かび上がってくる。

ライプツィヒはなぜ大躍進を遂げたのだろうか?」

クラブの土台を作ったラングニックの手腕


 RBライプツィヒは09年、当時5部のSSVマルクランシュタットのライセンスを、飲料メーカーのレッドブル社が買収して新たに誕生したクラブである。レッドブルはそれ以前からオーストリアのザルツブルク、アメリカのニューヨークなどでもフットボールクラブを運営。ライプツィヒはレッドブルが運営・サポートする4つ目のクラブだった。

「10年以内のブンデスリーガ参入」を合言葉に始動したライプツィヒは翌年に早くも4部に昇格。しかし、当時からブンデスリーガにたどり着くための明確なビジョンがあったかと言えば、決してそうではなかったようだ。

 それでも2012年のある人事がクラブにとっての決定的な転機となる。シャルケやホッフェンハイムの指揮官としてブンデスリーガで辣腕を振るっていたラルフ・ラングニックが、ライプツィヒおよびザルツブルクのスポーツディレクターとして招へいされたのだ。取材に応じてくれた広報担当者はこう説明する。

「彼がスポーツディレクターに就任すると、クラブ全体の再定義と再構築が行われました。ラングニックはクラブが掲げるフットボールのスタイルについて、明確なプランを打ち出したのです」

ラングニックがライプツィヒのSDに就任したのが2012年。クラブの躍進はここから始まった [写真]=GEPA pictures

ラングニックがライプツィヒのSDに就任したのが2012年。クラブの躍進はここから始まった [写真]=GEPA pictures

 ラングニックがライプツィヒでまず着手したのが、育成環境の整備だった。「2012年の始めには若い選手たちのポテンシャルを最高レベルへと引き上げるために、18歳から23歳までのプレーヤーをトップチームに加入させるという戦略を立てています」

 今シーズンのライプツィヒはブンデスリーガで最も平均年齢が若いチームとなっているが、これが偶然でないことは明らかだろう。ラングニックは若年層を育てるにあたり、クラブのプレースタイルやその基本となる哲学を、U-8の子どもたちからトップチームに至るまで、クラブ全体に浸透させた。それがいかに健全かつ効果的であるかは、バルセロナなどが実証してくれている。

 レッドブルの資金力は単に選手を獲得するためではなく、多くは育成の整備に注がれた。「レッドブル社は現在、25名を超えるユース世代の代表選手を抱えたアカデミーに、多大な労力と資金を注入しています。そうすることで、自前のスター選手の育成を目指しているのです」

 ライプツィヒが短期間で4部から、3部、2部とカテゴリーを上げていく過程で、ドイツ国内では批判の声も多く上がっていた。彼らが資金力にモノを言わせた成り上がり集団のように見えたからだ。だが、現チームにそうした「寄せ集め」のイメージはない。実際、主将を務めるドミニク・カイザーはラングニックがSDに就任した頃からクラブに在籍し、3度の昇格をともに分かち合ってきた生え抜きのような存在である。

 1部リーグに昇格した途端に古参選手を切り捨て、実績のある選手たちでチームを再構成するクラブもある。だが、ライプツィヒは主力のほとんどが下部リーグからプレーしてきた選手たちだ。

 選手の給与体系もいわゆる金満クラブとは一線を画す。「クラブは1選手あたりの年俸の上限を300万ユーロ(約3億6000万円)に定めています。もちろん、今後クラブが成功を収めれば増額される可能性もあります」

 あくまでもブンデスリーガ初挑戦の“新参者”である。身の丈に合わない経営はクラブの意思にそぐわない。その姿勢は細部にも表れている。「選手にはその年齢に応じた車が支給されます。年齢が上がるにつれて、より排気量の多い車が与えられるという仕組みです」。若くして大金を手にした選手が、高級車を乗り回して道を踏み外すこともないのだ。

ワールドサッカーキング2017年3月号増刊「2016-2017 ブンデスリーガ後半戦ガイド」では、ライプツィヒ躍進のさらなる秘密に迫ります!/strong>

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