2017.05.19

[アカデミーの存在意義を語る]浮嶋 敏 × 関口 潔「育成型クラブの真髄」

浮嶋アカデミーダイレクター(左)と関口アカデミーサブダイレクター(右) [写真]=兼子愼一郎
唯一のJリーグ専門誌。毎月、約60ページを活用して1クラブをクローズアップし、月刊誌ならではの奥深い特集企画を展開します。さまざまな角度からチーム、選手を取り上げ、クラブの新しい魅力や試合観戦の楽しみ方などを提供します。

アカデミーからトップチームに、多くの選手を送り出している湘南ベルマーレ。どのような育成理念を掲げ、どのようなメソッドで子どもたちを育てているのか。アカデミーダイレクターの浮嶋氏、そしてサブダイレクターの関口氏に話を聞いた。

Jリーグサッカーキング5月号[湘南ベルマーレ特集]共走-KYOUSOU-

常に自分たちの基準を大事にしっかり選手を見なければ(浮嶋)

浮嶋さんは2013年からアカデミーダイレクターを務め、関口さんは今年2月に同サブダイレクターに就任しました。お仕事の内容を教えていただけますか?

浮嶋 12年から曺貴裁監督がトップチームを率いて湘南ベルマーレのスタイルが確立されていく中で、根本的な考え方を共有し、どういう選手を育てるのか、トップとすり合わせながら育成の指導の現場にメソッドとして落としていく作業を行ってきました。今シーズンからはU-15、U-18、強化特待クラスと、アカデミーの中でも育成を中心に私が見て、サッカースクールの責任者を関口が担います。ベルマーレのスクールは7市3町のホームタウンを中心に新規を含めて16カ所と、広範囲にわたって子どもたちに普及活動を展開しています。

関口 スクールにはサッカーを好きになってもらう普及と、原石を上の年代に引き上げる強化と、二つの面があります。その意味ではトップから受け継がれる芯となるものをスクールにも落としていかなければいけないと思っています。ただ、もちろん子どもですし、未就学児もいるので、いかにボールと遊ぶか、いかにサッカーを楽しむかが大前提になります。

浮嶋 「たのしめてるか。」というキャッチフレーズが象徴するように、サッカーを楽しむことと一生懸命プレーすることがベルマーレのフィロソフィーなので、スクールとしても一番、大切な理念になると思います。その中で、14年から「強化特待クラス」を設置しました。発想としては「ベルマーレでトップチームを目指す特長のある子どもたちが集まってくる広場」。所属クラブに在籍しているので、月謝を取らずウェアもこちらで用意してトレーニングを行う。昨年末、高円宮杯全日本ユース(U-15)サッカー選手権大会でベスト4に進出したメンバーには強化特待クラス出身の選手もいたんですよ。

スクールの年代では昨年、神奈川県サッカー協会との共催で『2016 COPA BELLMARE U-11 ~湘南で大志を抱け。~』(以下・コパベルマーレ)を初開催しました。ベルマーレの強化特待クラスのチームを始め、海外からパルメイラスとフィリピン選抜、国内では浦和レッズジュニア、清水エスパルスU-11、東京ヴェルディジュニア、神奈川県U-11選抜、ホームタウンのトレセン9チームが参加しています。

浮嶋 コパベルマーレもスクールと意義は同じで、地域の人たちとともに選手を育成していくことが一番の目的です。U-11にしたのは、小学6年生にはすでに大会がたくさんあるから。スポンサーの方々にご協力をいただき、JリーグやJFAにもご支援いただいて、ブラジルに行かなければ見られないものを子どもも大人も体感できた。指導者の方々も自分たちの育成についてあらためて考えたと思うし、湘南地域全体の育成を考えていくうえで、世界レベルのチームを呼んだことには非常に大きな意義があったと思います。

スカウトにも関わると思いますが、育成において選手のどこを見ていますか?

浮嶋 トップも同じだと思いますが、選手を獲得する基準は「ゴールを目指すための特長を持っていること」、この一言に尽きると思います。例えば得点を奪うためにゴールへ向かっていくドリブルもそうでしょうし、素晴らしいクロスを上げられるサイドプレーヤーもスルーパスを出せる選手もゴールを目指すための特長を持っていると言えるでしょう。また守備の局面で言うと、ベルマーレはゴールを守るよりボールを奪うことを重視しています。それもまたゴールを目指すために大事になるからで、育成でも非常に重きを置いています。今年高校を卒業してトップに上がった齊藤未月と石原広教はまさにそうで、だからうちのアカデミーには、やむを得ない局面は別にして、ブロックを敷いて後ろで守る考え方はありません。突出した特長がある選手はプロでも長く活躍できると思うので、常に自分たちの基準を大事に、しっかり選手を見なければいけないと思っています。

関口 今、浮嶋さんが言ったように、クラブで大事にしているところを現場でもコーチがしっかり共有していると感じます。例えば前に行けるのにボールを下げたらコーチが敏感に反応して選手に前を意識させるようにコーチングする。それはトップも育成も同じ。誰がどの年代を見ても大切にしているものが一緒で、ほめるポイントや叱るタイミングが共有されているのは理想的な形だと思います。

今、話に出た齊藤選手や石原選手にはどんなことを期待していますか?

浮嶋 彼らがトップに上がったことはクラブとして大きな意義があると思います。でも上がることではなく、トップで活躍することが彼らの目標だと思うし、その意味でまだ何も成し遂げていないことは彼ら自身が思っているはず。トップのメンバーとして活躍することをまずは期待していますし、日本代表も目指していると思うので、応援しています。

アカデミー出身の齊藤未月(左)と石原広教(右)は今季トップチームに昇格した [写真]=Getty Images

ブレないものをつくることが継続的な育成につながる(関口)

横浜F・マリノスや川崎フロンターレを始め、神奈川県は競争が激しく、かつてはいい選手が県西から流れてしまう傾向もありましたが、現在はどうでしょうか。

浮嶋 例えば先ほど話した高円宮杯のメンバーの中には、自分から望んでベルマーレに来た選手もいます。もちろんホームタウンのチームだからという理由もありますが、でも他に誘われながらベルマーレを選ぶという現象はこれまでにはなかった。トップチームの躍進も含めて、ベルマーレのブランド自体が高まっているからこそ変わってきているのかなと感じます。

浮嶋さんは横浜FCでも育成の立ち上げに携わり実績を残しています。何かコツがあるのでしょうか?

浮嶋 いや、実績と言えるようなことは残せていませんけど、どうですかね……。たぶん曺監督と一緒だと思うんですけど、選手を育成するうえで、もちろん苦手なことの修正もしますが、常に考えているのは、その子のいいところをいかに伸ばしていくか。他人とは違ういいところを本人に気付かせて、磨くように促すことで伸びていくと思うし、体感として、長所が伸びれば苦手なところも克服されていく。チームの勝ち負けは相対的な結果でしかなくて、自分たちが特長をぐっと伸ばし、それが掛け算になれば、チーム力はきっと上がる。それはトップも一緒だと思う。技術のない子のミスを指摘しても仕方なくて、でもその子にボールを奪う特長があるなら、奪えない相手がいた時にもっと奪えるようにその特長を磨かせるほうが大事かなと。だから育成って自信を持たせることなのかなと思います。人を育てるというのはおこがましいことで、いいところに気付くことで勝手に成長していくと思うので、特長を気付かせてあげることが大事なのかなと思います。

トップチームとはどのような連携を図っていますか?

浮嶋 トップのトレーニングで大事にしていることを育成年代の子どもたちに伝えていくという趣旨で、曺監督やトップのコーチによる「スペシャルトレーニング」を行っています。スケジュールもあるのでコーチ陣にとっては大変なんですけど、今年は月1、2回を目安に考えています。

関口 「スペトレ」はかなり特徴的な取り組みですよね。

浮嶋 普通はまずトップの監督の理解を得るのが難しいよね。育成型クラブという認識をしっかり持っている監督でなければ成り立たない。

関口 トップの指導経験のある浮嶋さんや時崎悠U-18監督が育成に携わっているように、ベルマーレはトップとアカデミーのコーチの関係も近いと感じますね。

クラブは中長期計画として「SPRINT for2025」を掲げています。アカデミーの今後のビジョンを聞かせてください。

関口 スクールとしては普及と強化の両面をまずは拡充したい。また、もう少し先を見据えた時に、クラブとして大事にしている理念やサッカーのスタイル、コンセプトなどを誰が見ても分かるようにまとめたいと考えています。トップでやっているサッカーがアカデミーにもこれだけ浸透している中、アカデミーとトップと、現場に関わっている人間の力で、将来、人が入れ替わっても脈々と受け継がれていくものをあらためてつくりたい。人が替わってもブレないものをつくっていくことがクラブの継続的な育成につながっていくと思います。

浮嶋 トップに登録されるだけでなく、リーグ戦に出場する選手の中にアカデミー出身者が増えていくことが非常に重要だと考えているので、できれば毎年トップに上げていきたいと思っています。そこから逆算して、各年代の指導とスカウティングに大事なことは出てくるし、年代が上がるごとに技術や戦術面を含めて求めるレベルは上がっていく。育成には5年かかるんですよ。中学1年から指導して高校3年の頃にはだいたい進路が見えてくる。遅れは必ず5年後に出てくるし、取り組みの成果も5年後に表れる。サッカースクールの子どもたちのユニフォームは黄色ですけど、時間をかけ、年齢を重ねるごとにだんだん緑が入ってきて、最後トップに上がった時に鮮やかな黄緑になる。そんなイメージで、一人ひとりの特長を伸ばしながら選手の育成を図っていけたらと思っています。

■浮嶋 敏(うきしま・びん)
1967年9月4日生まれ、東京都出身。日産ファーム、富士通サッカー部で現役生活を送り、指導者としては横浜FCでジュニアユースやユースの監督などを歴任。2011年から湘南のトップチームコーチとなり、13年からアカデミーダイレクターを務める。

■関口 潔(せきぐち・きよし)
1969年1月15日生まれ、東京都出身。早稲田大学卒業後、リクルート、日本サッカー協会を経て横浜FCのフロントスタッフ、北マリアナ諸島代表監督、ラオスサッカー連盟技術委員長を歴任。17年2月から湘南のアカデミーサブダイレクターを務める。

[湘南ベルマーレ特集]共走-KYOUSOU-『Jリーグサッカーキング2017年5月号』

[主なコンテンツ]

3月24日(金)発売のJリーグサッカーキング2017年5月号では湘南ベルマーレを大特集! 曹貴裁(チョウ・キジェ)監督の下で6シーズン目を迎えた今年、変わらぬ信念を貫いてJ1復帰を目指すチームの“今”に迫ります。

  • 発売日:2017年3月24日

欧州リーグ順位表

チェルシー
93pt
トッテナム
86pt
マンチェスター・C
78pt
欧州順位をもっと見る
バイエルン
82pt
ライプツィヒ
67pt
ドルトムント
64pt
欧州順位をもっと見る
レアル・マドリード
93pt
バルセロナ
90pt
アトレティコ・マドリード
78pt
欧州順位をもっと見る
ユヴェントス
91pt
ローマ
87pt
ナポリ
86pt
欧州順位をもっと見る

Jリーグ順位表

C大阪
38pt
鹿島アントラーズ
37pt
川崎F
35pt
Jリーグ順位をもっと見る
湘南
47pt
福岡
46pt
長崎
41pt
Jリーグ順位をもっと見る
秋田
37pt
富山
32pt
沼津
31pt
Jリーグ順位をもっと見る