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確固たる価値を示したドイツ戦 菅原由勢、偉大な先人を越えていけ

2023.09.11

日本代表DF菅原由勢 [写真]=Getty Images

 強豪のドイツを敵地で4-1と粉砕し、敵将のハンジ・フリック監督を解任に追い込んだ日本代表。その衝撃的一戦から一夜明けた10日、チームは4日から1週間調整したヴォルフスブルクで最後のトレーニングを行い、12日のトルコ戦の地であるベルギーのヘンクへチャーター便で移動した。

 ドイツ戦で先発し、値千金の2点目を叩き出した上田綺世が負傷離脱するというアクシデントが起きる中、右サイドバックで奮闘した菅原由勢は疲れも見せずにクールダウンに努めていた。

「中2日で試合があるので、とにかくコンディション、メンタル面を100%に戻すことに集中したい。全員が100%戻れば、間違いなく昨日のドイツ戦のようなサッカーができると思うので、しっかり調整したいです」と、23歳の筆頭右サイドバックは冷静にこう言った。

 とはいえ、「自分の現在地を測れる試合」と意気込んでいたドイツ戦で伊東純也と上田のゴールをお膳立てしたことは、やはり大きな自信になったに違いない。

 2019年夏にオランダに赴いた彼は今季で5シーズン目。その間にヨーロッパリーグやカンファレンスリーグを通じて各国の強豪と戦ってきた経験値は大きな助けになったはず。対面にセルジュ・ニャブリがいる状況にも関わらず、菅原は開始早々から物怖じすることなく積極的に前へ出る。ドイツが三笘薫のいる左サイドを警戒して人数をかけた分、ニコ・シュロッターベックの陣取る右サイドはスペースが空きがちで、そこを伊東純也と菅原が巧みに使ったのだ。

 トップ下の鎌田大地も右寄りの位置でサポートしたことで、日本は厚みのある攻めを何度も繰り出せた。開始早々の11分には菅原のアシストから伊東が巧みな位置取りで先制点をゲット。22分にはまたも菅原の攻め上がりから伊東を経由し、上田が2点目を奪った。ドイツの右サイドバックに入っていたヨシュア・キミッヒ以上の存在感を示したと言っていい。

 後半は5バックにシフトしたことで守備の時間が多くなり、ニャブリとのマッチアップの場面も見受けられた。世界に名を馳せる相手に対し、菅原は冷静で鋭い1対1の対応を見せつける。さすが、名古屋グランパス時代は3バックの一角に入ったこともある守備力をアピール。84分間のプレーは見る者に安心感を与えた。

「攻撃面では、1つ2つじゃなくて、3つ4つというオプションを持ちながら攻撃ができたと思います。縦関係を形成するのが純也くんだろうが、(久保)建英や(堂安)律くんだろうが、誰と組んでも変わらない、面白くて効果的な攻撃ができると感じます。守備の時も前の選手がかなり相手を限定してくれたので、後ろとしては狙いを持って行くことができたし、(板倉)滉くんもズレてサポートに来てくれた。ニャブリ選手、(レロイ)サネ選手、(カイ)ハフェルツ選手などいろいろな選手が裏を狙ってくる中でも、本当に連動した守備ができていた。みんながポジティブに捉えていると思います」と菅原は攻守両面で一歩前進したと受け止めている様子だ。

 彼自身、今夏の移籍市場ではAZからのステップアップが叶わず、「そこは全部、自分の実力不足。それを認めなければいけない。ここから今年1年なのか、半年なのか頑張らなきゃいけない。世の中難しいですね」と悔しさをむき出しにした。だからこそ、今回のドイツ戦では「菅原由勢という存在を広く知らしめてやろう」という思いがどこかにあったはずだ。それを実際に果たしたことで、近い将来、格上リーグ移籍の道も開けてきそうだ。

 そうなっていけば、いつかは内田篤人や酒井宏樹といった右サイドバックの先人たちを越える日もやってくる。もともと菅原はU-15日本代表の頃から「内田の後継者」と評され、将来を嘱望されてきた。選手としての能力はもちろんのこと、オフ・ザ・ピッチでの表現力やコミュニケーション力も先輩たちを上回るだけのポテンシャルがある。サッカーを見る目も鋭いし、年齢に関係なく積極的に自らの意見を口にできる意志の強さも併せ持っている。そこは特筆すべき点と言える。

 そんな人材だからこそ、森保一監督は菅原に着目。今年3月の新チーム発足時から起用し続けている。ドイツ戦ではその期待に十分応えたが、1試合だけでは何も始まらない。高いレベルでコンスタントに攻守両面で結果を出すことが、彼に求められる重要タスクなのだ。

 トルコ戦はおそらく橋岡大樹か毎熊晟矢のいずれかが先発すると見られるため、菅原は外から試合を見ることになるだろう。そういった立場だったとしても、同じポジションの面々に提言やアドバイスをどんどんしていいはず。全員が切磋琢磨してこそ、日本の右サイドバックの選手層も厚くなる。

 菅原は一番若いが、決して遠慮する必要はない。自分らしいアプローチで自分自身を伸ばし、代表を引き上げ、最終的には「不動の右サイドバック像」を確立してほしいものである。

取材・文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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