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PK奪取でメキシコ撃破に貢献…攻守両面でフォア・ザ・チームに徹する相馬勇紀

2021.07.26

メキシコ戦に先発出場した相馬勇紀 [写真]=Getty Images

「(酒井)宏樹さんと練習から話していて、ペナルティエリア内での仕掛けが大事だと思っていた。その意識でやりました」

 25日の東京オリンピック1次リーグ第2戦・U-24メキシコ戦。久保建英の電光石火の先制弾直後に、左サイドからの積極的な仕掛けでファウルを誘い、VAR判定でPKを得たのが相馬勇紀だった。

 キッカーこそエースナンバー10の堂安律に譲ったが、半分は彼のゴールと言っても過言ではないだろう。終盤にFKで1点を返されたことで、結果的にこのゴールが決勝点になった。「勝負どころでいい仕事をする男」らしい働きで、相馬は極めて重要なメキシコ戦勝利に貢献したのである。

「東京五輪は高校3年からずっと目指していました。当時は代表に全く関わったことのない選手だったけど、『絶対に18人に入ってやるんだ』と思って、毎日毎日、積み重ねてきました。金メダルを取るために、チームのためにプレーするんだという気持ちでいます」

 最終登録メンバー発表前に大舞台への熱い気持ちを語っていた相馬。2020年のJリーグで三笘薫が大ブレイクしたことで左MFの序列が少し下がったのではないかと危惧されたが、森保一監督、横内昭展コーチからの信頼が揺らぐことはなかった。

 振り返ってみれば、東京五輪代表立ち上げ間もない2018年頃は、左MFのポジションはサイドバックとサイドハーフを兼務できる杉岡大暉や遠藤渓太らがリード。三笘でさえも2018年アジア大会(インドネシア)ではスーパーサブの扱いだった。当時、早稲田大学4年生で、名古屋の特別指定選手としてJリーグに出始めた相馬はそこまで高く評価される存在ではなく、代表にも縁遠かった。

 しかしながら、2019年にプロ入りしてから森保監督の目に留まり、6月のトゥーロン国際トーナメントに初招集される。夏には鹿島アントラーズへのレンタル移籍もあったが、12月のEAFF E-1選手権(釜山)にも参戦を果たす。2018年ロシアワールドカップ(W杯)メンバーの大島僚太や中村航輔らA代表組も加わるチーム編成の中、相馬は持ち前のドリブル突破力を前面に押し出し、決定的なチャンスを何度も作っていた。

「大学の頃から言っていたのは、最後に五輪のメンバーに入って活躍するのが一番大切だということ。チーム作りの途中で選ばれることじゃなくて、本大会で活躍できる実力をつけなきゃいけないということです。誰が見ても『呼ばなきゃダメ』と見られるくらいの実力をつけなきゃいけない」とこの時の彼は語気を強めていたが、1年半が経過した今、まさに有言実行を果たしたと言っていい。

 相馬の素晴らしいところは、「成り上がりたい」という野心をみなぎらせる一方で、フォア・ザ・チームに徹することができる点。昨年から繰り返し三笘と比較され、どちらがファーストチョイスかを争う構図で捉えられてきたが、本人は「薫とはお互いにどっちが出てても本当にタッグでやろうと。僕が最初に出ることになったら、相手選手が疲れ切るまでプレッシャーに行くし、仕掛け続ける。それでヘロヘロになったら代わろうと。逆も同じだし、日頃からいい話ができています」とあくまで“共闘体制”を重視しているのだ。

 実際、メキシコ戦でも相馬は体力を出し惜しみせず、途中交代覚悟で前からグイグイとプレスをかけにいき、相手のキーマンだったライネス封じに注力した。背後にいる中山雄太との連携も考えながら行くところ、行かないところを判断し、しっかり対応していた。そのうえで、PK奪取につながったドリブル突破にも果敢に打って出たのだから、その献身性には頭が下がる。65分間のパフォーマンスは大いに評価されるべきだ。今大会はスター性のある久保と堂安にどうしても世間の注目が集まりがちだが、相馬の要所要所での効果的な働きはやはり見逃せない。

 負傷で出遅れていた三笘が復帰したこともあり、28日のフランスとの大一番はどこで出番が巡ってくるかわからない。レフティの三好康児も含めてポジション争いはし烈だ。けれども、相馬の考え方はどんな状況でも変わらない。頭から出れば倒れるまで走って攻守両面で貢献する。途中出場ならジョーカーとしてゴールにつながるプレーをするだけだ。

 そうやって自分の役割をきちんと整理できるところは、さすが早稲田大学卒のインテリ。今年はシーズンオフに栄養面を抜本的に見直し、6キロの減量に成功。動きのキレや鋭さが増した点も理論的なアプローチの成果と見ていい。田中碧も「サッカーに年齢は関係ない。頭の中が勝負」と強調していたが、相馬もサッカーIQの高い選手。だからこそ、エゴに走ることなく、左サイドの仕事人として獅子奮迅の働きができるのだ。こうした武器も含め、持てる力のすべてを出し切ることで、彼は長年の夢である五輪金メダル、そして海外移籍に手が届くはずだ。

 ここから先の戦いでは、背番号16をつける小柄なアタッカーが大柄で屈強な外国人選手を巧みにいなしていくところをもっと見たい。相馬勇紀という興味深い存在を世界に轟かせてほしいものだ。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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