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鉄板CBコンビの牙城を崩せるか…欧州で確かな進化を遂げた板倉滉

2021.05.31

ミャンマー戦に出場した板倉滉 [写真]=金田慎平

 森保一監督就任直後の2019年1月のアジアカップ(UAE)以来、2年以上にわたって連携構築が進む吉田麻也と冨安健洋の鉄板センターバック(CB)。その間、冨安はシント・トロイデンからボローニャ、吉田はサウサンプトンからサンプドリアへそれぞれ移籍したが、指揮官の評価が揺らぐことは全くなかった。コロナ禍に突入した2020年10・11月の欧州遠征3連戦(カメルーン、コートジボワール、メキシコ)で彼らを起用したのを見ても、絶大な信頼が伺える。

 2人の牙城を崩すべく、2018年ロシアワールドカップ組の植田直通(ニーム)や国内組の畠中槙之輔(横浜FM)、中谷進之介(名古屋)らがこれまで挑んできたが、なかなか構図が変わる様子は見られなかった。

 そんな中、28日の2022年カタールW杯アジア2次予選・ミャンマー戦で新風を吹かせた選手がいる。24歳の板倉滉だ。

 板倉は東京五輪に向けて、森保監督が2018年に本格始動させた当初からU-21日本代表の主要メンバーと位置付けられてきた。2019年1月にイングランドの名門、マンチェスター・Cに完全移籍。そこからフローニンゲンにレンタルされると、さらに期待値が高まり、同年6月のコパ・アメリカ(ブラジル)でA代表にも抜擢された。同大会はご存じの通り、A代表と五輪代表の混成チームではあったが、板倉は2戦目のウルグアイ戦で柴崎岳とボランチコンビを組み、ルイス・スアレスやエディンソン・カバーニらを擁する強敵にひるむことなく対峙。欧州での成長をのぞかせた。

 その後もオランダで着実に実績を積み重ね、19-20シーズンはフローニンゲンで22試合に出場。そして今季は開幕からフルタイム出場を続けた。クラブではCBとして重用されたが、同僚にアリエン・ロッベンがいるような高いレベルの環境下で持ち前のタフさや屈強さ、クレバーさを発揮し、リーグ戦全試合出場を達成。ファンが選ぶシーズンMVPも受賞するに至った。

「日本から欧州に来た当初より確実に体が強くなっている。それも1つ自信につながったポイントでもあります。もともとビルドアップが強みで、日本にいた頃はDFなのに攻撃のことばっかり考えていたんですけど、守備への考え方はすごく変わった。『まずやらせない』という意識は全く違うし、自分より強い相手、速い相手がたくさんいるので、そういう選手にどう対応するかの駆け引きも楽しんで取り組みました。『とにかく目の前の相手に勝つ』『絶対負けない』というところにフォーカスしして1年間やれました」と今回の代表合流時には充実感をにじませていた。

 目に見える進化が森保監督の目に留まったのだろう。冨安の負傷も追い風となり、板倉はロシア組の植田、同じU-24世代の橋岡大樹らを抑えてスタメン入り。キャプテン・吉田とCBコンビを組んだ。

 格下相手とはいえ公式戦。しかもA代表では初めて最終ラインに入るとあって、板倉自身も緊張感を覚えたの最初は硬さも見受けられた。

「滉は前半10分、20分くらいは横パスが多かったんですけど、途中からボールを前につけれるようになったし、スペースが空いていたら持ち上れるようになりました」と吉田も振り返ったが、時間の経過とともに動きがスムーズになり、組み立てやビルドアップで特長を出せるようになった。そして後半はハーフウェーライン付近まで出て攻撃参加するシーンも増えた。「現代サッカーでは、ただ横パスを出すだけじゃなく、自分で持ち上って展開できるCBが主流になってくる。そこにトライしていってほしい」とキャプテンに要望を出されるほどの伸びしろも感じさせた。

 さらに大きかったのが、後半アディショナルタイムの10点目。すでに大迫勇也の5発や南野拓実の2発などで戦意喪失気味になっていたミャンマー相手ではあったが、A代表初ゴールを得意のヘッドで叩き込んだのは、少なからず意味あることだった。

「(派手な雄叫びは)喜び爆発してたので(苦笑)。試合が終わってもみんなに言われましたけど、しっかり引き締まったゲームで得点を取れて勝てたのはよかった」と板倉自身もこの一撃に強い感情を込めていた。

「コパの時からA代表に呼ばれて、その後、何回か行っていますけど、今まで自分の中で納得できるプレーがなかなかできなかった。代表の1戦の重みをすごく感じていました。今回もそういった思いで入りましたし、とにかく勝ち点3を取ること、そしてスタメンを奪う気持ちで戦った。フローニンゲンで1年間CBで出たことで自信をもってやれましたし、失点ゼロで終われたことは評価できると思います」

 コパ・アメリカから2年越しでようやくA代表での力強い一歩を踏み出した板倉。吉田・冨安の間に割って入リそうな勢いも感じさせた。が、ここで満足しているわけにはいかない。ミャンマー戦に後半から出場した植田も今年1月のフランス移籍で成長の跡を示したし、次の段階からはロシアW杯レギュラー・昌子源も参戦してくる。最終予選、W杯本大会でピッチに立つまでの道はまだ長く険しい。板倉はこの1試合を糧にして、着実な進化を遂げていく必要がある。

 さしあたって彼がやるべきなのは、6月のU-24代表のガーナ・ジャマイカ2連戦で鉄壁の守備を見せること。3月26日のU-24アルゼンチン戦(東京)では、老獪な敵に1対1でぶっちぎられて失点を食らっている。このミスは本人の脳裏に焼き付いて離れないはず。今回は絶対に同じ轍を踏むわけにいかない。ポジションがボランチかCBかはわからないが、どちらに入るにしても安定感を見せて、チーム全体を落ち着かせることが肝要だ。そしてその先の東京五輪でメダル獲得の原動力になれれば、A代表レギュラーは自ずと近づいてくる。

 勢いに乗り始めた今を逃す手はない。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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