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【コラム】W杯メンバー落選で強まるゴールへの執着心、浅野拓磨が再スタートを切る

2018.09.12

得意の裏抜けで何度かチャンスを作ったものの、得点には至らず。悔しさが残った [写真]=Getty Images

 浅野拓磨が再スタートを切った。「満足はできないですけど、スタートとしては悪くなかったかな」。森保ジャパンの初陣となったコスタリカ戦での22分間をこう評価した。

 浅野は始動初日から全力で練習に打ち込んでいた。「また本当にここから。しっかりと結果を残せるように、全力でやるだけ」。意欲的な姿勢はこれまでも見てきたが、心なしか眼光が鋭い印象を受ける。絶対に生き残ってやる――。そんな気迫と覚悟が伝わってきた。

 サンフレッチェ広島時代の恩師である森保一監督の期待に応えたいという思いは強かっただろうし、新たなチームで心機一転を図りたいという気持ちもあっただろう。確かなのは、ワールドカップのピッチに立てなかった悔しさが成長へのエネルギーになっているということだ。

 ちょうど1年前のオーストラリア戦で先制点を決め、W杯出場の立役者となった浅野は、ロシアに大きく近づいたはずだった。しかし、最終メンバーから落選。23歳の快速ストライカーは「油断していたわけではないけど、それが許されないと強く感じた」と振り返った。

 実際、危機感を抱いていなかったわけではない。所属クラブで出番を失い、W杯前最後の欧州遠征に招集されなかった浅野は、シュトゥットガルトの練習場で一人黙々と自主練に励んでいた。「ここにきて、W杯がすごく遠いところに感じる」。その距離を少しでも縮めようと必死にもがいていた。

「試合に出ていないのは悔しいですし、なんでやっていう気持ちもあります。でも、先を考えた時に、今を100パーセントでやっていないと未来の自分がダメになってしまう。今がいいとは言えないですけど、良くないなら良くないなりのやり方をやっていかないと先には進めない。サッカー人生は今がすべてではないんです。先を見て頑張るしかない」

 しかし、陰の努力は報われなかった。「試合に出続けないといけない。まずは試合に出ないと、アピールできるチャンスも何もない」。結果を出さなければ、ロシアW杯へ導いた“ヒーロー”さえも忘れ去られてしまう。代表で生き残るためには同じ土俵に立ち、誰よりも結果を積み重ねるしかないと痛感した。

 W杯メンバーから外れたことで、浅野のゴールへの執着心はより強くなったように感じる。コスタリカ戦後は初陣を勝利で飾れたという安堵と、目に見える結果を残せなかったという悔しさが同居していた。「生き残れるストライカーになるために何が必要かと言えば、ゴールという結果だと思う。いつまでも結果を残せないようなら、ここにはいられない」

 浅野は昔から口癖のように「自分は伸びしろしかない」と言う。初陣で復活のジャガーポーズを披露することはできなかったが、「強みであるスピードを生かしたプレーや、チームのために走ることが一番求められている」と森保監督の要求が鮮明になったことで、何を一番に磨いてくべきかを再認識できたはずだ。「自分の特長、強みを出していくことだけに集中してやっていきたい」。まずは新天地のハノーファーで結果を出すこと。4年後の大舞台を目指して、浅野拓磨が再スタートを切った。

取材・文=高尾太恵子

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