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【注目選手】背番号17とキャプテンを託された青山敏弘「すべては勝つため」

2018.09.10

キャプテンを託された青山。森保監督のサッカーを理解し、体現する [写真]=兼村竜介

 新生日本代表の背番号が発表され、ワールドカップ・ロシア大会をもって代表引退を表明した長谷部誠(フランクフルト)の象徴だった「17番」を、青山敏弘サンフレッチェ広島)が引き継ぐことが決まった5日。札幌ドームで行われた練習前に、32歳のチーム最年長は森保一監督からさらに重要な役割を託されていた。

 南アフリカ、ブラジル、そしてロシアの3つのワールドカップを含めて、実に8年あまりにわたって長谷部が務めてきたキャプテンの継承。まずは指揮官から直接打診され、青山が受諾したことを受けて、チームメイトたちの前で発表された。

 広島のコーチ及び監督を務めた森保氏とは約8年間もの時間を共有した。この間に3度のJ1制覇に貢献した青山は、国際Aマッチ出場数がわずか8試合の自分に大役が託された理由を理解していた。

「自分が一番上の年齢ですし、森保さんともコミュニケーションが取れる存在なので間に立てるし、何かあればそのまま上に伝えられるような役割を自分ができると思っています。選手たちの思いをしっかり伝えたいし、逆に監督からの思いも伝えられれば。自分発信でもいいので、しっかりチームがひとつになるように。すべては勝つためなので、できることはすべてやっていきたい。何かを発信していくためにも、先頭に立たなければいけないという思いもあります」

 日本代表の戦歴をさかのぼっていくと、最後に青山がプレーした国際Aマッチは2015年3月31日まで見当たらない。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の就任2戦目でボランチとして先発フル出場した青山は、開始6分に敵陣中央でこぼれ球に迷うことなく右足を一閃。目の覚めるようなスーパーボレーで代表初ゴールを決めた。試合後の取材エリアで、青山は短い言葉の中に熱い思いを凝縮させている。

「ロシア行きの船に乗りたい」

 W杯で味わわされた悔しさは、W杯でしか晴らせない。しかし、その試合を最後に、日本代表で紡がれてきた青山の軌跡は突然途切れてしまう。次に招集されたのは今年5月中旬。実に3年以上もの空白期間が生じていた。

「今の広島を象徴している、と言っても過言ではないほど、キャプテン、中心選手、そしてチームの精神的支柱であると思っています。過去の実績と、間違いなく現時点で最高のパフォーマンスを披露している選手の一人であり、できることなら最終的にも代表チームに力を貸してほしい」

 西野朗監督は、ガーナ代表とのW杯壮行試合へ臨む日本代表に青山を選出した理由を、全幅の信頼を込めてこう説明した。しかし、好事魔多し。広島が首位を独走していたリーグ戦で右ひざを痛めた青山は、合流予定だった5月25日の練習前に無念の辞退を強いられてしまう。

 乗りかけたロシア行きの船から、降りることを余儀なくされてから3カ月半。新たに船出した森保ジャパンに名前を連ねた青山に、長谷部の象徴だった「17番」を与えることを決めた時点で、指揮官はキャプテンも託すことを決めていたはずだ。

 代表におけるキャリアを考えれば32歳の東口順昭(ガンバ大阪)や、今回のメンバーで唯一ロシアのピッチに立った31歳の槙野智章(浦和レッズ)がいる。喫緊の課題となる世代交代を考えれば、リオ五輪でキャプテンを務めた遠藤航(シント・トロイデン)も候補に入ってきたはずだ。

青山敏弘

約8年間もの時間を共有した二人は強い信頼関係で結ばれている [写真]=Getty Images

 それでも、森保監督は青山を指名した。日本代表およびガンバ大阪でキャプテンを務め、今シーズンの途中から同クラブの監督を務める宮本恒靖氏は、キャプテンに求められる資質をこう語ったことがある。

「キャプテンとは監督(の背中)を見ながら、チームの中でリーダーを務められる選手となる」

 監督を見るとは、極端な話、言葉を介さずともしっかり分かり合える関係にあるということ。その論理に則れば、広島時代に揺るぎない師弟関係を築き上げ、2014シーズンからは広島のキャプテンを務めている青山以外に適任はいなかったことになる。

「普段から青山がやっていること、オン・ザ・ピッチ、オフ・ザ・ピッチでいつもどおりの姿勢を示してもらえればという話はしました。それ以外は特に話していないと思います」

 札幌市内での練習を打ち上げた8日に、森保監督は青山のキャプテンに関してこう言及した。来月以降の親善試合ではロシア大会で主軸を担った海外組も順次招集され、来年1月にUAE(アラブ首長国連邦)で開催されるアジアカップを当面の目標にすえてチームを作り上げていく。だからこそ、キャプテンマークは託しても特別扱いはしない。広島で演じ続けているハイパフォーマンスを代表でも再現させるために、一人の選手として常にベストを尽くしてほしい、という厳しいエールも言外には含まれている。森保ジャパンで求められるのは中盤の底で攻守のバランスを司りながら、正確無比な長短のパスを前線へ供給するプレーとなる。

 青山自身も指揮官が言わんとすることを理解した上で、11日のコスタリカ代表とのキリンチャレンジカップ2018(パナソニックスタジアム吹田)へ静かに闘志を高めている。

「やっぱりいい試合がしたいし、勝ちたい。勝たないと伝わらないと思うので。そのためにはみんながひとつにならないといけない。メディアの皆さんもそうですけど、札幌で自分たちが大変な思いをした中で感じたものは絶対にあると思うし、サッカーを通して共有できるもの、同じ気持ちになれるものあると思うので。自分にできることは限られているかもしれないけど、このチームのみんなが力を合わせればできないこともできると思っている」

 次回のカタール大会までの4年というスパンを考えれば、32歳の青山のキャプテン就任には異論があるかもしれない。しかし、森保ジャパンが船出した直後という状況と、何よりも6日未明に発生した北海道胆振東部地震の影響でチリ代表との初陣が中止となったことを受けて、新生日本代表が背負った新たな使命と責任感を考えれば、プレーとメンタルの両方でけん引するのは青山しかいない。

文=藤江直人

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By 藤江直人

スポーツ報道を主戦場とするノンフィクションライター。

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