2017.05.28

【コラム】負傷してもなお期待させる男、試練に立ち向かう小川航基の覚悟

小川航基
イタリア戦を見守った小川航基 [写真]=佐藤博之
2013年までサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で編集、記者を担当。現在はフリーランスとして活動中。

 飛躍の大会となるはずの舞台を、FW小川航基(ジュビロ磐田)は1人先に去ることとなった。ウルグアイとの第2戦で負った傷に下った診断は、「左ひざ前十字じん帯断裂および左ひざ半月板損傷」。今大会どころか、今季全体、さらには来季開幕までも厳しい、そんな重傷である。心のダメージがなかったはずもない。

 だが、27日に行われたイタリアとの第3戦。スタンドで仲間たちに声援を贈った小川は、試合後に報道陣の前へと姿を現し、気丈に語ってみせた。「起きてしまったことはしょうがないので、何とか早めに切り替えて、やっていかないと」と語り、さらに報道陣から堂安律(ガンバ大阪)が得点後に小川のユニフォームを誇示してみせたことや、試合前にDF初瀬亮(G大阪)がスタンドの小川に手を振っていたことなどについて問われると、自然と表情をほころばせた。

「一緒に戦ってくれているというか、またリハビリ頑張ろうというふうに思えた試合だった」(小川)

 その上で小川は前を向く。「一流の選手というのは、ケガなく順風満帆にやってきたわけではないと思うし、前十字や半月板とか皆やっていると思う。今このタイミングで良かったと思って、前向きにやれればいい」とまで言い切った。「自分のサッカー人生を懸ける」とまで言っていた大会を棒に振ったわけだが、「東京五輪が3年後にある」と言う。

「もっと大きな大会があって、『五輪でなくて良かった』とポジティブに何とか考えて、東京五輪で爆発できるように、この期間を無駄にしたらいけない」(小川)

 無名だった自分を発掘して使い続けることで育ててきた恩師と言うべき内山篤監督とは2人で話したようで、「本当に深いことを話してもらって、自分も前向きになれた」と言う。その上で「このチームが躍進してくれれば、あいつらも頑張っているんなら、俺も頑張らないといけないと思うので、本当に本当に頑張ってほしいなと思います」とエールも送った。

 辛口で知られる磐田・名波浩監督をして「日本の宝になる」と言わしめたストライカーの資質を持つ男に訪れた突然の、そして重すぎる試練。ただ、木村浩吉年代別代表担当ダイレクターも「けがして良かったなんてことは決してないけれど、でも小川航基ならばこれを乗り越えて、もっとタフに大きくなってくれるはず」と期待を込める。サッカーから離れざるを得ない日々となるが、精神的にも肉体的にも成長することのできる時間である。もちろん、言うほど簡単なことではないのだが、小川ならばきっと大丈夫だろう。

 余談ながら、筆者はかねてより「ストライカーは高卒5年目に大成する」という説を唱えているのだが、小川が高卒5年目を迎えるのは2020年、オリンピックイヤーのこととなる。ちょっと遠回りをしながらも、しっかりタフになった小川航基という稀代のストライカーが、2020年の東京で輝くことになるだろう。これは非現実的な妄想などではなく、リアリスティックな予想である。もちろん「期待」がこもっていることは否定しないが、それだけの「期待」を持たせるだけの資質が、この男にはあるのだ。

文=川端暁彦

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