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【東京五輪・2020への予習ノート】U-20日本代表で唯一の“海外組”! 不思議な縁に恵まれながら、日の丸を背負うGK山口瑠伊/第4回

2017.05.15

186センチのGK山口、他の2人に刺激を受けながら本大会に向けて調整を続ける [写真]=三浦彩乃

 5月20日に開幕を迎えるFIFA U-20ワールドカップ。10年ぶりの大舞台に臨むU-20日本代表には一人だけ“海外組”の選手がいる。フランス・ロリアンFCでプレーするGK山口瑠伊(るい)である。

 中学年代に所属したFC東京U-15深川では廣末陸(現・FC東京)と、昇格したFC東京U-18では波多野豪(現・FC東京)と激しくポジションを争った過去を持ち、高校1年の途中からフランス人である父の勧めもあって、もう一つの祖国であるフランスへと旅立ち、ロリアンへの加入を果たした。「日本式」の育成を受けてきた選手だけに、当初は戸惑いもあったと言うが、毎シーズン選手がふるいにかけられる厳しい戦いの中でも着実にクラブ内でステップアップ。同時に高2の夏にU-17日本代表へ招集されたのを機に、年代別日本代表にもコンスタントに名を連ねるようになった。

 欧州のシーズンと日本のシーズンの違いもあって、招集が難しかった時期もあったが、U-20ワールドカップの1次予選にも山口は帯同している。先のドイツ遠征ではデュイスブルクとの試合にフル出場。安定したキャッチングに加え、かつて同じFC東京U-15深川でプレーし、U-17代表でまさかの再会を果たしたDF杉岡大暉(湘南ベルマーレ)をして「メチャクチャうまくなっていてビックリした」と驚愕させた足元の技術もある。日本を離れてから体も一回り大きくなり、GKとしての風格も出てきた。

 代表では杉岡に加え、1次予選で廣末とも再会。さらに先のドイツ遠征からは波多野とも再会を果たした。

「波多野とはFC東京のスクールで初めて会ってから、ずっとライバルとして意識しながらやってきた。(FC東京の)U-18でまた一緒になって、ここでもまた一緒。でも今はライバルというより、(小島)亨介を含めて誰が出てもいいように仲間としてやっている」

 かつて技を競い合い、共に戦った仲間と日の丸を付ける場で再会するという不思議な縁に恵まれながら、山口は今大会に向けての準備を進めている。正GKの小島が負傷からの復帰途上ということもあり、出番が来ても驚きはないし、そのための心構えはしっかりできているようだった。何より、山口には明確な目標もある。

 今大会の優勝候補として真っ先に名前が挙がる国は、欧州王者のフランスだ。母国を二つ持つ山口にとって、「やっぱり対戦してみたい」と願う特別な思い入れのある相手。そのチームと戦うためには、グループステージ突破が最低条件となる。熱い思いを胸に秘め、山口は静かに熱く、大会へ備えている。

文=川端暁彦

By 川端暁彦

2013年までサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で編集、記者を担当。現在はフリーランスとして活動中。

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