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【コラム】酒井高徳が右サイド復帰へ 因縁の地・オーストラリアでSBの絶対的地位確立に燃える

2016.10.09

9日にトレーニングを行った酒井高徳。豪州戦では右SBでの出場が有力視される [写真]=JFA

 2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選3試合が終わって暫定4位という苦境に立たされている日本代表。ここで脱落しないためにも、11日のオーストラリア戦(メルボルン)は絶対に勝ち点を取って帰らなければならない。本田圭佑(ミラン)も「ある意味、決勝くらいのつもりで戦わないといけない」と大一番の重要性を強調していた。

 決戦を2日後に控えた日本代表は夕方17時半から前日と同じレイクサイドスタジアムで調整した。この日の当地は気温こそ上がったが、激しい強風に見舞われた。毎日恒例のヴァイッド・ハリルホジッチ監督による冒頭ミーティングが屋内で行われるほどの凄まじさだった。ミーティングは17分近くに及び、指揮官は選手たちの闘争心を今一度、かき立てるとともに、オーストラリア戦のポイントを伝授したと見られる。左足首捻挫の岡崎慎司(レスター)は練習場に姿を見せず、引き続き別調整となったため、本番欠場が濃厚となった。1トップは浅野拓磨(シュトゥットガルト)の抜擢が有力視されるが、彼を含めた攻撃陣の構成をどうするか、ハリルホジッチ監督も頭を悩ませているに違いない。清武弘嗣(セビージャ)と香川真司(ドルトムント)の起用法も気になるところだ。

 陣容が変わるのは前線だけではない。サイドバックも変更を余儀なくされるポジションだ。酒井宏樹(マルセイユ)、長友佑都(インテル)の離脱により、最終予選3戦連続左で出ている酒井高徳(ハンブルガーSV)が今回は右に回る可能性が高まったのは1つの事実だ。

 ハンブルガーSVでは右でコンスタントに使われている彼だが、日本代表では6月のボスニア・ヘルツェゴヴィナ戦(吹田)以来のプレーとなる。相手エースのロビー・クルーズ(レヴァークーゼン)が対面に来ると見られるだけに、まずはそこをどう封じるかが重要になってくる。

「知っている選手はやりやすいと思うんで、対応のところであんまりパニックになることはないと思います。ただ、相手も考えながらサッカーしているわけで、常にいい状態でポジションを取ったり、ボールに寄せたりしないと、向こうも上手にやってくる。そのへんは毎回毎回、集中しないといけないですね。オーストラリアの右にいる(マシュー・レッキー=インゴルシュタット)にしても今季開幕戦で、直でマッチアップしました。すごいパワフルでテクニックもあって、代表でも一番危ない選手かなと思います」と彼は警戒ポイントを口にした。

 クルーズとレッキーがポジションを入れ替えてくる可能性もゼロではないし、両サイドアタッカーにサイドバックも絡んで分厚い攻めを繰り出してくることも考えられる。実際、「相手の両サイドバックが非常に攻撃的に来る」と守護神・西川周作(浦和レッズ)も指摘していた。だからこそ、酒井高徳は相手左サイドバックであるブラッド・スミス(ボーンマス)、右サイドバックのマーク・ミリガン(バニーヤース)の動きも加味しながら、的確なポジショニング、攻守のバランスを取る必要があるだろう。

 サイドバック離脱者続出の今、唯一の2014年ブラジルW杯経験者である彼に託される部分は大きい。今回と同じオーストラリアで開かれた2015年のアジアカップ当時はまだ「ケガで辞退した内田篤人(シャルケ)の代役」という見方が根強く、メディアからも毎回のように「内田選手の穴埋めとしてどんなプレーをするつもりか」という質問が続いた。普段、温厚な本人が「僕は篤人君とは違うので」と語気を強めるほど、苛立ちを募らせる日々だったに違いない。あれから2年近い時間が経過し「内田の代役」という位置づけからは完全に脱した。昨シーズン移籍したハンブルガーSVでも完全にレギュラーに定着。代表での地位も着実に高まりつつある。

「代表で自分の立ち位置を探すというより、自分でどんどん結果を出して、周りが立ち位置を決めてくれればいいと思ってるんで、自分のやることはつねに変わらず、結果を残していくこと。責任感を持ってプレーすることを心がけたいですね」と彼自身も高い領域に上り詰めるために躍起になっている。

 内田、長友、酒井宏樹が揃って不在となるオーストラリア戦は「酒井高徳あっての日本のサイドバック」という立場を確立させる絶好のチャンス。そのためにも、6日のイラク戦(埼玉)のように相手とのヘディングの競り合いに敗れて失点に絡むようなミスは2度と犯してはならない。まずは完璧な守備で相手をつぶし、いい攻めにつなげていくことができれば、彼にとっても、日本にとっても理想的なシナリオだ。

文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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