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【コラム】最難関のアウェー豪州戦 先発有力な“スピードスター”浅野が世代交代を加速させる?

2016.10.07

イラク戦で途中出場した浅野拓磨 [写真]=瀬藤尚美

 山口蛍(セレッソ大阪)の後半アディショナルタイム劇的決勝弾で何とか勝ち点3を死守した6日の2018 FIFAワールドカップ ロシア アジア最終予選・イラク戦(埼玉)。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督のクビもつながった形だが、同日のサウジアラビア対オーストラリア戦が2-2のドローに終わり、UAEもタイを3-1で下したため、日本は勝ち点6ながら暫定4位。上位2位以内どころか、プレーオフ圏内にも入れない苦境を強いられている。依然として楽観は許されない状況の中、彼らは11日に最終予選最難関の一戦と見られるアウェー・オーストラリア戦(メルボルン)を迎えることになる。

 そんな日本代表はイラク戦から一夜明けた7日午前、オーストラリア移動を前に埼玉県内でトレーニングを行った。前日1トップで先発した岡崎慎司(レスター)が左足首ねん挫で回復トレーニングを回避し、前日の先発組10人がクールダウンに努めた。累積警告によりオーストラリア戦に出場できなくなった酒井宏樹(マルセイユ)もこの時点でチーム離脱が決まった。それ以外の12人とGK2人は8対4、5対5などの実戦的メニューをこなしたが、途中で長友佑都(インテル)が槙野智章(浦和)と衝突。脳震盪のような状態に陥って練習を打ち切るというヒヤリとする場面もあった。幸いにして、本人は1人で歩いてバスに乗っており、次戦への影響はなさそうだ。ただ、頭部の負傷は実際にオーストラリアへ移動してみないと分からない部分もあり、指揮官もメンバー選定に頭を痛めるのではないか。

 岡崎がケガということで、オーストラリア戦は浅野拓磨の1トップ先発の可能性が一気に高まってきた。9月のタイ戦(バンコク)では泥臭いプレーでダメ押しとなる2点目を奪い、チーム全体を安堵させたが、イラク戦では75分からピッチに立ちながら、終盤のパワープレーによる2度の決定機を決めきることができなかった。本人も「昨日もチャンスがある中で決めきれていれば、1つのアピールになって次につながった思いますけど、ああいうところで決めきれないのが今の実力なのかなと思います」と反省しきりだった。

 それだけに、オーストラリア戦は是が非でも結果が求められるところ。オーストラリアはサウジアラビア戦でかつて浦和レッズに所属していたマシュー・スピラノヴィッチ(杭州緑城)らが出場したが、開始早々の5分に左サイドのギャップを突かれて簡単に失点。その後、セットプレーなどで逆転したが、79分に2失点目を食らって勝ち点2を逃す形となった。ホームでの日本戦では必勝を期してくると見られるが、「長身の選手ほどボールウォッチャーになることが多い」と大型選手揃いのオランダでプレーしている太田宏介(フィテッセ)が指摘する通り、浅野が持ち前のスピードで相手を攪乱できる場面は少なくないだろう。

「僕はつねにスタメンを狙ってますし、いつ呼ばれてもいける準備はしてるので、次どんなメンバーになるか分からないですけど、先発でもいける準備はしておかないといけないなと思います。タイ戦で先発で出たのに(イラク戦で)スタメンを取れないのは悔しかったですけど、自分はまだまだ足りないところがあると自覚しています。次にチャンスが来たら、ポジションを奪うことに関して、少しでも近づけるように、ゴールという結果を出すしかないと思います」と21歳の若武者は改めて気合を入れた。

 原口元気(ヘルタ・ベルリン)、山口がゴールし、清武弘嗣(セビージャ)がトップ下で躍動するなど、イラク戦ではロンドン五輪世代の台頭が大いに目についた。世代交代が遅れていた日本にとっては非常に前向きな要素だったと言っていい。ここで浅野がアウェー2試合連続得点を奪えば、その流れがより一層加速すると言っても過言ではない。日本ではチーム最年少の彼だが、イラクでインパクトを残していた左サイドハーフのアリ・アドナン(ウディネーゼ)らは同世代。彼らがあれだけチームの中心として存在感を示せるのだから、アーセナルが目を付けたスピードスターも十分に際立った仕事ができるはずだ。

 若い世代が毎試合のようにゴールを奪ってチームを活性化していけば、B組4位という苦境に立たされる日本の風向きも変わるに違いない。かつて本田圭佑(ミラン)もつけた出世番号の背番号18をつける男への期待は高まる一方だ。

文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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