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序盤の苦戦しのいで8発大勝 あらためて「強さと可能性」を示したU-16日本代表

2016.09.19

序盤の苦戦をしのいで大勝を収めたU-16日本代表 [写真]=JFA

 開始32分、ようやく日本は初めてのシュートを放った。最初の決定機は34分に生まれた先制点とイコールのタイミングだった。「僕らもやっていて『あれ、おかしいな?』という感じだった」と右サイドバックの菅原由勢(名古屋グランパスU18)が振り返ったとおり、AFC U-16選手権グループステージ第2戦でキルギスと対峙したU-16日本代表は想定外の機能不全に陥っていた。

 逆に「キルギスには3回くらい決定機を作られてしまった」と振り返ったとおり、対角のサイドチェンジを起点に崩され、GK谷晃生(ガンバ大阪ユース)の好セーブに救われた19分の場面など、序盤から「相手の圧力を堪え忍ぶ展開になった」(森山佳郎監督)。

 ボールが動かなかった戦術的な理由は、相手の高さ対策で左サイドバックに本来はセンターバックの小林友希(ヴィッセル神戸U-18)を配置したものの、この布陣がフィットしなかったことが大きかった。2トップに棚橋尭士(横浜F・マリノスユース)と久保建英(FC東京U-18)というターゲットタイプではない二人が並んで前線に起点ができづらかったこともあり、日本の攻撃は停滞。相手のプレスをいなすこともできない流れになってしまった。

 だが、「全部が全部、うまくいくわけではない。(リオ五輪代表で手倉森誠監督が掲げた)『柔軟性と割り切り』ではないけれど、(うまくいかないときに)0-0でしのげていることに意味がある」(森山監督)。初戦大勝による精神的なゆるみも見え隠れした中で、悪い試合なりにセンターバックの瀬古歩夢(セレッソ大阪U-18)や谷を中心に我慢の戦いをやり切ったことは、むしろ今後に向けてはポジティブな材料だった。

 そして我慢の時間を乗り切れれば、一つのプレーで流れを変えられる選手たちが攻撃陣にそろっている。34分、ロングボールから相手DFに詰めた棚橋が相手のクリアボールを体に当てて、そのままペナルティーエリア内を進撃。強いシュートで相手GKのニアサイドを破り、鮮やかにゴールネットを揺らしてみせた。

 優勢だっただけにキルギス側のショックも大きかったことだろう。この隙を00ジャパンの選手たちは見逃さない。42分には久保が「(左足シュートを警戒して)食い付いてくるなと思ったので」と利き足をおとりに使っての右足シュートを沈めて、2-0。さらに43分には棚橋のスルーパスから抜け出したFW中村敬斗(三菱養和ユース)がGKとの1対1シュートを流し込んで、3-0。この3点目で、ほぼ勝敗は決した。

 後半は前半途中に投入されたMF平川怜(FC東京U-18)を軸に相手のプレッシャーをいなした日本の一方的な試合となった。52分に中村が、53分に棚橋が連続ゴールを奪うと、56分にはMF鈴木冬一も自分で奪ったPKをど真ん中に決めて、6-0。さらに80分には、棚橋がPKを決めてハットトリック。アディショナルタイムには久保の左足ミドルシュートも決まり、終わってみれば8-0の圧勝となった。

 図らずも我慢の時間帯となった前半30分と、その後のゴールラッシュ。単なる楽勝とは異なる試合展開の中で、若き日本代表があらためてその強さと可能性を示すゲームとなった。

取材・文=川端暁彦

By 川端暁彦

2013年までサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で編集、記者を担当。現在はフリーランスとして活動中。

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