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日本の救世主となれるか 宇佐美貴史、7年前に敗れたMFシャリルとの再戦へ

2016.09.05

 2018 FIFAワールドカップ ロシア アジア最終予選初戦から崖っぷちに立たされた日本代表にとって、6日のタイ代表戦(バンコク)は絶対に勝ち点3を確保しなければならない試合。2日に現地入りした彼らは現地適応を進めており、決戦2日前の4日夕方にはナショナルスタジアムで大雨の降る中、メディア非公開の戦術確認を1時間程度、実施した。

 公開された冒頭15分間のランニング、ウォーミングアップには柏木陽介(浦和レッズ)も合流。試合出場のメドが立った模様だ。前回ボランチで先発した大島僚太(川崎フロンターレ)が経験不足を露呈したこともあり、経験豊富なレジスタの復帰はチームに大きな追い風になりそうだ。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が1日のUAE(アラブ首長国連邦)代表戦(埼玉)と同じ「4-2-3-1」の布陣を採るか、より攻撃的な2トップを採用するかは未知数なところもあるが、本田圭佑(ミラン)、岡崎慎司(レスター)、香川真司(ドルトムント)の3枚看板以外のアタッカー陣に奮起が求められるのは間違いない。UAE戦で62分から清武弘嗣(セビージャ)に代わってピッチに立ち、68分には相手に倒されながらPKを与えられず無得点に終わった宇佐美貴史(アウクスブルク)もチームの勝利に貢献したい思いは強い。

「タイに関しては、僕は最初から弱い相手とかっていうイメージは全く持ってないですし、ACLとかでやる中でも、タイの選手たちの技量っていうのはもう経験済みなんで。何試合もしたことはないんで未知数ではありますけど、まあ不気味な感じというか、相手だなとは思いますね。

 1試合負ければいろんなところから風当たりは強くなる。でも僕自身は気にしてないし、むしろチャンスという感覚でやらないとチームとしての成長もない。ラッキーボーイでも何でもいいし、チームに数字(結果)をつけられるようなプレーをしていきたいですね」と彼は静かな口調の中にも並々ならぬ闘志を垣間見せた。

 宇佐美が警戒するタイ代表だが、1日のサウジアラビア代表戦で出場停止だったシャリル・シャピュイ(スパンフリー)が「4-3-3」のアンカーで先発復帰することが濃厚という。彼はスイス人とタイ人のハーフで、かつてグラニト・ジャカ(アーセナル)やハリス・セフェロヴィッチ(フランクフルト)らとともにU-17スイス代表の一員として2009年U-17ワールドカップ(ナイジェリア)に出場。1次リーグ第2戦で宇佐美擁する日本に4-3と逆転勝ちしているのだ。スイスは最終的に同大会で優勝。その後、タイ代表を選んだ彼は今のチームの中核選手になっている。

シャリル・シャピュイ

7年前にスイス代表の一員として宇佐美と対戦しているシャリル・シャピュイ

「あの日本戦は鮮明に覚えている。前半20分の時点で僕らは0-2で負けていた(日本は宮吉拓実=広島の2点でリード)。この20分間は僕のキャリアの中で最もクレイジーなものだった。その後、僕らは戦術を変えて修正を図り、最終的には4-3で逆転勝ちした。日本とスイスのいたグループにはブラジル、メキシコも同居していたけど、日本はこの中でも本当にベストチームだった」

 この話を宇佐美にぶつけてみると「もしかしたら右サイドバックの選手? でも覚えてないですね。対戦相手に成長した姿を見せつけたいという気持ちも全くないです」とアッサリしたものだった。だが、相手が因縁を感じて宇佐美を削ってくることは十分に考えられる。タイ代表の全員がかつてバイエルンに所属し、今シーズン再びドイツ・ブンデスリーガに挑戦したアタッカーのことを熟知しているだけに、マークはUAE戦以上に厳しくなるはず。そこで本領を発揮してこそ、宇佐美は真の救世主になれるのだ。

「左サイドには沢山の選手がいますけど、サイドで仕掛けるプレーだったり、仕掛けてから細かいパスワークやコンビネーションで崩していくところは、自分が一番あると思います。チョイスは監督がするわけなんで、僕はしっかりイメージを持ちながら準備するだけですけど、そういう部分では負けてる気はしないかなと。

 タイ戦ではサイドでどれだけはがせるかってところが大事になってくると思うので、誰が出るか分かんないですけど、出た時にそういうイメージを持ってやることですね。サイドに分散すれば、真ん中でできる選手はいっぱいいるんで、UAE戦のような同じミスをしないような意識も大事かなと思います」

 自分のやるべきことを明確に思い描いているだけに、背番号11はここ一番で大仕事をやってくれるかもしれない。ドイツ移籍後に取り組んでいるグルテンフリーの食事の効果もここで遺憾なく発揮して、因縁の相手のいるタイ相手に最高の輝きを見せつけてほしいものだ。

文=元川悦子

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