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復帰へ膨らむ期待 柏木が停滞感に包まれる日本代表にもたらすものとは?

2016.09.04

負傷により別メニューで調整していた柏木。タイでの初練習でついに部分的に合流を果たした [写真]=JFA

 1日に行われた2018 FIFAワールドカップ ロシア アジア最終予選初戦のUAE(アラブ首長国連邦)戦(埼玉)でまさかの不覚を取り、黒星発進を強いられてから2日。日本代表は6日に行われる第2戦の地であるタイ・バンコク入りし、3日夕方に現地初練習を行った。

 この日は2005年6月に北朝鮮との無観客試合を制し、2006年ドイツ・ワールドカップ出場を決めた思い出の地・ナショナルスタジアムが練習会場となった。17時過ぎに現地入りした24人の選手たちは、タイ日本人学校の子供たち100人と記念撮影をした後、トレーニングをスタートさせた。

日本代表

現地のタイ日本人学校の子供たち100人と交流を図った

 気温33度・湿度60パーセントという高温多湿のコンディションの中、UAE戦に先発したフィールドプレーヤー10人とそれ以外の10人、GK3人、別メニューの柏木陽介(浦和レッズ)の4グループに分かれて練習が進んだ。2日のクールダウンを欠席した香川真司(ドルトムント)と岡崎慎司(レスター)も全メニューをこなすなど、負傷の影響はない模様だ。

 控え組10人とGKの東口順昭(ガンバ大阪)と林彰洋(サガン鳥栖)は最後に5対5+GKのミニゲームを消化。そこまで走りのみをこなしていた柏木がスパイクに履き替え、途中から加わった。

 8月30日の非公開練習時に左股関節に違和感を訴え、UAE戦を欠場を余儀なくされた彼はその後、ここまで慎重に回復の道筋を探ってきた。代役に急きょ抜擢された大島僚太(川崎フロンターレ)が2失点に絡んでしまったこともあり、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はパスセンスに優れる司令塔を次こそ先発起用したいと熱望しているに違いない。タイ戦は柏木と長谷部誠(フランクフルト)の経験豊富なボランチコンビが久しぶりに復活しそうな雲行きだ。

「しっかり相手を動かせること、中と外の使い分け、長短のパスの使い分けのところは今のメンバーでは自分が一番できるかなと。そこには自信を持っているんで」と本人が負傷前に語気を強めたように、緩急をつけながら相手を揺さぶっていける能力は、今回のボランチ陣の中では柏木が傑出している。大島も最大限努力しているものの、UAE戦では周囲との連携不足、受け手と出し手のタイミングのズレなどが重なって持ち味を全て出し切れなかった。そこが初戦黒星の一因になったと見る向きもある。柏木がいれば、中盤から前線への攻撃の組み立てがよりスムーズになるはずだ。

 ボランチの球出しが落ち着けば、UAE戦で存在感を示せなかった香川、岡崎といったアタッカー陣も活性化されるだろう。「よさは人それぞれ必ずあるし、誰が出てもお互いのよさを引き出しながらやれるのが一番の理想。ただ、陽介君の場合は展開力だったり、組み立てであったり、すごく大きな役割があると思っているので、そこを組み合わせてうまくやっていけたらいい」と香川もユース時代から同じピッチで戦ってきた同年代の仲間の復帰を大いに歓迎している。

香川真司

UAE戦にフル出場した香川。トップ下でプレーしたがいつもの存在感を発揮することはできなかった [写真]=Getty Images

 香川の特徴を熟知する柏木であれば、彼をもっと高い位置でプレーさせられ、ゴール前に有効なスペースを作るようなパス回し、サイドを使った組み立てなども可能だ。岡崎に対しても、6月に行われたブルガリア戦(豊田)の先制点の場面に象徴されるとおり、裏ヘの抜け出しを巧みに演出するボール出しはできる。こういった創造性豊かなパフォーマンスは、停滞感に包まれている今の日本代表に必要不可欠。そういう意味でも柏木への期待は大きい。

 柏木本人も全体での体幹強化の後、自ら進んで腹筋を繰り返したように、出遅れを取り戻そうと躍起になっている。そういう前向きな意欲と闘争心をみんなが強く示していかないと、日本が窮地を脱するのは難しい。それは本田圭佑(ミラン)も強調している点だ。

「僕自身、引っ張れるところは引っ張らないといけないですし、それは僕だけじゃなくて、他の選手たちも何人か経験のある選手は同じことを思ってるでしょうし、若手は若手で引っ張られてばっかりじゃダメだって、たぶん責任感も芽生え始めてるでしょうし、それが日本代表だと思うんで、全員が『自分が』っていう強い気持ちを持ってやるのが日本代表。そういう選手しか集まってないとおかしいんで、それをあとはピッチの中で表現して、結果として出すしかないですね」と大黒柱はチーム全員の意識改革を求めたが、今の柏木ならそれを率先してやれるだけの器が感じられる。28歳のレフティにはタイを粉砕すべく、持てる力のすべてを出し切ってもらいたいものだ。

文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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