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“幻”の同点弾を悔やむ浅野「あれは自分のミス。しっかりミートしていれば……」

2016.09.02

UAE戦に後半途中から出場した浅野は惜しくもノーゴールに終わった [写真]=瀬藤尚美

 その瞬間、埼玉スタジアムが騒然となった。

 9月1日に2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選でUAE(アラブ首長国連邦)代表を迎え撃った日本代表。1点のビハインドで迎えた78分、FW浅野拓磨(シュトゥットガルト)の左足から放たれたボレーシュートはゴールラインを割ったかに見えたが、得点は認められず。待望の“同点弾”は幻と消えた。

「入ったかなと思いましたけど、審判を見てもゴールと言っていなかったんで……」

 浅野はそう言って、冷静にあの場面を振り返った。右サイドバックの酒井宏樹(マルセイユ)が上げたクロスを、ゴール前の本田圭佑(ミラン)が頭で落とす。ここで浅野が体勢を崩しながら左足を振り抜いたが、「自分でもミートはしていなかったと思う」と力は伝わり切らなかった。それでもボールは完全に枠内に入っており、GKハリド・エイサが必死にかき出す。日本代表のチームメイトもアブドゥルラフマン・アルジャシム主審(カタール)に対して得点を主張したが、判定はノーゴール。同点弾が認められず悔しい結果に終わった浅野は「もっとしっかりとミートしていれば、ネットを揺らしてゴールという判定にできたと思う。自分の技術のミス」と判定を言い訳にすることなく、自身の決定力不足を悔いた。

 21歳のストライカーにとって、この試合はW杯予選デビューだった。54分にPKで逆転を許し、追いかける展開でエース岡崎慎司(レスター)に代わってピッチに送り出された。大きなプレッシャーを感じながらも無心でゴールを狙い続けたが、結果を出すことはできず、試合後は「ホームだったので、必ず勝たないといけないと思っていた。本当に悔しい」と重い口を開いた。

 投入直後の67分には、8月のリオデジャネイロ・オリンピックをともに戦ったMF大島僚太(川崎フロンターレ)から“浅野専用フィード”と言わんばかりの鋭い縦パスが入ったが、その後はなかなか彼を生かすボールが続かなかった。日本はサイドからのクロスを中心にゴールへと迫るが、それでは浅野の武器であるスピードや裏への抜け出しは生きない。

「僕自身、裏はずっと狙っていましたけど、なかなか届かなかったり、途中で取られてしまう場面もあった。そこは味方ともっとコミュニケーションを取って、僕の動き出すタイミングも含めて、しっかりと改善していきたい。もっと相手の裏を取れたと思うし、シュートまで行けたと思う」

 一瞬でも「入った」と思ったシュートがゴールとして認められず、一番悔しかったのは浅野だろう。試合終了を告げる笛がなると、両手を腰に当てたまま、しばらく空を見つめた。中4日で臨むタイ戦に向けて、「しっかり勝ち点3を取ることだけを意識して戦わないといけない」と気持ちは切り替えた。アウェーで絶対に勝利が必要となる大一番。あとは今日の悔しさを晴らすために、“文句なし”のゴールを決めるだけだ。

文=高尾太恵子

By 高尾太恵子

サッカーキング編集部

元サッカーキング編集部。FIFAワールドカップロシア2018を現地取材。九州出身。

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