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“初戦のカギ”は日本代表の左サイド 長友不在で引いた相手を崩せるか

2016.09.01

日本代表を率いるヴァイッド・ハリルホジッチ監督 [写真]=Getty Images

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督のマネジメントがまさに問われている。

 1日にUAEとのロシア・ワールドカップ アジア最終予選を戦う日本代表に、長友佑都の姿がない。メンバー発表後に負傷が発覚し、招集できなくなってしまったのだ。左サイドバックの候補には、太田宏介が控えている。左右両サイドに対応する酒井高徳もいる。長友の不在が、致命傷になることはない。

 問題は攻撃のパターンをどのように構築するのか、である。

 アルベルト・ザッケローニが率いたチームは、「左で作って右で仕留める」のがゴールへの有効な手立てとなっていた。4-3-3を志向したハビエル・アギーレ前監督のチームでも、攻撃の重心が「左」にあるのは変わらなかった。

 埼玉スタジアム2002にやってくるUAEが、撃ち合いを臨んでくるはずはない。アウェイチームらしい戦術にして彼らが得意とするカウンタースタイルに、活路を見出してくるはずだ。

 ゴール前に二重の、ひょっとしたら三重のブロックをしいてくる相手守備陣を揺さぶるには、ピッチの横幅を無駄なく使いたい。そうかといって、ブロックの外側だけでボールを動かすわけにもいかない。

 ハリルホジッチ監督は4-2-3-1のシステムを基本とする。「3の左」は清武弘嗣か、宇佐美貴史か、あるいは小林悠か、それとも原口元気か。2列目の選手をサポートする左サイドバックは、経験と安定感を買って酒井高徳だろうか。いずれにしても、左サイドのコンビは「長友―香川」のラインほど成熟していない。

 2列目の左サイドに清武が入れば、トップ下の香川とのスムーズな連携が見込める。とはいえ、ブロックを敷いてくる相手を崩すために、3人目、4人目も絡んだコンビネーションが欲しい。ボールを追い越していく長友のようなランニングとそこからのクロスが、左サイドには求められるだろう。横への揺さぶりとタテへの切り込みの両睨みで、守備の穴を探っていかなければならない。

 あらためてメンバーを見ると、異質なオプションを用意しても良かったのでは、との思いが過る。ドリブルを得意とする原口と宇佐美、スピード豊かな浅野拓磨らの特徴よりも、豊田陽平やハーフナー・マイクのような高さが、今回のUAE戦には効果的だと思えてくる。ゴール前へクロスを放り込まれ、なおかつ目の前に長身の選手がいると、DFはそれだけで圧力を感じるものだ。空中戦に競り勝ってクロスを跳ね返したとしても、セカンドボールを拾われたら守備の時間は続く。競って跳ね返して、また競って跳ね返してという連続は、フィジカルだけでなくメンタルにも負担が大きい。やがて、小さなほころびが失点へつながる。

 ホームでスコアレスドローに終わったシンガポール戦で、ハリルホジッチ監督はパワープレーを使っていない。センターバックの吉田麻也と槙野智章が、ゲームの終盤に相手ゴール前へ張り付いて空中戦を挑むことはなかった。大迫勇也、原口、武藤嘉紀といった交代のカードを切り、4-2-3-1から4-1-3-2のような形へ選手の立ち位置を変えることで、ゴールを奪おうとした。

 同点のままゲームが推移し、力ずくでもゴールをこじ開けなければならないときに、ハリルホジッチ監督はどのような策を講じるのだろう。パワープレーなど必要のない展開へ持ち込むために、豊田もハーフナーも、ここ最近好調の齋藤学も選ばなかったのだとすれば、なおさら長友を欠く左サイドからの崩しが大切になってくる。

 さて、ハリルホジッチ監督はどうするのか──。

文=戸塚啓

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