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長谷部の“相棒”候補に急浮上した大島僚太 リオでも輝いた自慢のタテパスでUAEを崩せるか

2016.08.31

リオ五輪でも得意のタテパスからアシストを記録した大島僚太(右) [写真]=兼子愼一郎

 日本の6大会連続ワールドカップ出場を賭けた第一歩となる9月1日の2018年ロシア大会最終予選初戦UAE(アラブ首長国連邦)戦(埼玉スタジアム)がいよいよ明日に迫った。8月28日から事前合宿をスタートさせ、着実に準備を重ねてきたヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いる日本代表だが、大一番を前に柏木陽介(浦和レッズ)が左股関節、昌子源(鹿島アントラーズ)が左内転筋の違和感をそれぞれ訴え、同31日夕方の前日練習で別メニュー調整を強いられた。

 長谷部誠(フランクフルト)とともにボランチで先発する可能性が高いと見られた柏木の離脱はチームにとって大きな痛手。これまでの序列であれば、山口蛍(セレッソ大阪)が出場するところだが、長谷部と山口では守備的になりすぎる嫌いがある。絶対に勝ち点3が必要なホーム初戦は、攻撃のスイッチを入れられるボランチの存在が不可欠だ。

 そこで急浮上するのが、リオデジャネイロ・オリンピックで異彩を放った大島僚太(川崎フロンターレ)だ。彼は30日の非公開練習でも長谷部と組んで主力組に入った模様で、スタメンの可能性は日に日に高まりつつある。本人もそれを自覚しているのか、ランニング後のウォーミングアップでは長谷部、吉田麻也(サウサンプトン)、森重真人(FC東京)の主力組に並んで先頭に立っていた。クラブの先輩・小林悠(川崎)は「あれは、たまたま並んじゃっただけだと思います」と軽く流していたが、日頃大人しい大島がアグレッシブさを前に出していたのは確か。ハリルホジッチ監督の期待に全力で応えようとしているようだ。

 大島が先発した場合、託される役割はズバリ、ゴールに直結するタテパスを前線に供給すること。かつてクラブの先輩・中村憲剛(川崎)が2010年南アフリカW杯出場を決めた2009年6月のウズベキスタン戦(タシケント)で岡崎慎司(レスター)にキラーパスを出し、決勝点をお膳立てしたように、若きボランチにも同じような思い切った仕掛けが求められる。リオ五輪でもタテへの意欲を強く押し出していただけに、A代表の最終予選でも十分できるはずだ。

中村憲剛

クラブの先輩・中村憲剛は2009年のW杯最終予選で重要なアシストを記録した [写真]=Getty Images

「明日、誰と組むかは監督も決めかねてる部分はあると今日のミーティングでも言ってました。自分が出た時にはパートナーとなる選手の特徴をできるだけ生かしてあげたいし、逆に自分もそれで生かされたいというのはあります。自分たち経験ある選手たちが落ち着いたプレーや態度を示せば、若い選手たちも伸び伸びとプレーできる。経験ある選手たちがどういうアクションを起こすかはすごい大事だと思います」とキャプテンの長谷部は大島と組んだ場合には、彼のよさを最大限生かすように仕向けるという。今回、ボランチには相手のエース、“オマル・アブドゥラフマン潰し”という重要な役割も託されるが、それは長谷部と左サイドバック、左サイドハーフの3人で対応し、大島の守備負担を大きくしないように配慮する考えだ。

 大胆抜擢が有力視される大島が不発に終わったとしても、原口元気(ヘルタ・ベルリン)や清武弘嗣(セビージャ)をボランチに使えるし、山口や遠藤航(浦和)も穴を埋められる。そのくらいのメンタル的な割り切りを持てるかが肝心だ。大島が新風を吹き込んでくれれば、停滞しがちだった日本代表も活性化するはず。リオ世代の代表としての意地と誇りを彼には示してほしい。

 ボランチ以外のところは計算できる面々が並ぶ見通しだ。4-2-3-1の基本布陣を想定すると、攻撃陣は1トップに岡崎、右サイドに本田圭佑(ミラン)、トップ下に香川真司(ドルトムント)というのは確実。左サイドは大激戦で、清武、武藤嘉紀(マインツ)の争いではないか。チーム合流日数では武藤に分があるが、代表経験や香川・本田を臨機応変に使える能力を考えると清武がやや有力。ただ、ハリルホジッチ監督は2日前に帰国したばかりの清武、原口の起用に慎重な姿勢を示しているだけに、当日のコンディション次第とも言えるだろう。

 中盤は上記の通り、大島と長谷部のコンビが濃厚。そして守備陣は最終ラインが右から酒井宏樹(マルセイユ)、吉田、森重、酒井高徳(ハンブルガーSV)の並びで、GKは西川周作(浦和)になるのではないか。酒井宏、酒井高も前回の最終予選を経験していて、大一番への入り方を熟知している。そこは非常に心強い部分だ。彼らを日本で最も経験豊富な両センターバックがサポートしてくれれば、2015年1月のAFCアジアカップ(オーストラリア)準決勝の二の舞にはならないはず。森重も「あの時の失点は自分たちの集中力の問題。そこが大きい。そこをしっかりやらないと。最終予選はしっかりと声をかけ合いながら、ディフェンスライン全員であったり、前のボランチだったりと喋りながらできればいい」と気を引き締め直していた。彼らが失点さえしなければ、相手が焦って前がかりになる展開に持ち込める。だからこそ、先に得点を与えることだけは避けなければならない。

「UAEはすごくいい選手がいますけど、守備はスペースもある。前半は難しい戦いになるかもしれないですけど、後半はスペースも空いてくると思うので、我慢の試合になる。早い時間に点がほしい」と清武もコメントしていたとおり、できるだけ早く先制点を奪えれば理想的な展開に持ち込める。その重要な一撃に若き新星・大島が絡んでくれれば、日本としてはベストなシナリオ。明日の埼玉では新たな歴史の幕開けをぜひ見てみたい。

文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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