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長友離脱の左SBにフィテッセ太田が名乗り…超高精度の左足クロスでアピールを誓う

2016.08.29

フィテッセでプレーするDF太田宏介。28日から日本代表の練習に合流した [写真]=VI Images via Getty Images

 非常事態の最終ラインを救う救世主に、高精度の左足キックを誇るレフティが名乗りを上げた。

 ついにスタートする2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選。9月1日に埼玉スタジアムで行われるUAE(アラブ首長国連邦)との初戦を控え、日本代表が28日に埼玉県内で始動。昨年8月EAFF東アジアカップ以来の代表選出となった左サイドバックの太田宏介フィテッセ)は練習初日から合流し、いよいよ始まる最終予選に向けて「高ぶるものがある。オランダから来たからには試合に出たいし、自分の特徴を出していきたい」と意気込みを語った。

 帰国直後の太田を待っていたのは、左サイドバックでの出場が有力視されていた長友佑都(インテル)の負傷辞退というニュースだった。日本に着いてから一報を耳にしたという太田は「来たからには試合に出たい。しっかり準備をしようと思う」とUAE戦に目を向けた。

 太田と“長友離脱”で思い出されるのは、昨年6月に行われたアジア2次予選初戦のシンガポール戦だ。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督にとっては悪夢のスコアレスドロー発進となってしまったゲーム。この試合の前日練習で長友が左でん部に張りを覚え、急きょ太田がスタメン出場することになった。結果的にゴールを演出することはできなかったが、正確な左足でチャンスメーク。セットプレーキッカーも任され、CKやピンポイントクロスで決定機をもたらし、持ち味を発揮することはできた。

太田宏介

昨年6月のシンガポール戦では持ち味を発揮した太田宏介 [写真]=Getty Images

 今回のUAE戦は長友に加えて槙野智章(浦和レッズ)も負傷辞退を余儀なくされている。メンバーの入れ替えが必要となる最終ラインを踏まえ、太田は試合に向けての狙いと意識を「まずは守備」としながらも、「どれだけディフェンスがいても、ピンポイントで合わせられれば1点になる。そこは自信を持っているところだし、(自分の)クロスの質は必ず武器になる」と語り、「そこはずっと練習してきて自信を持っているところ。試合でも出せていけたら」とコメントしている。自慢のキック精度は日本代表においても一、二を争う存在であることは間違いない。その自信が今回も受けて取れた。

 それはハリルホジッチ監督も同じ思いだろう。指揮官はかねてから日本代表にセットプレーからの得点が少ないことを嘆いており、今回のメンバー発表会見でも「我々は(セットプレーからのゴールが)0.3パーセントしかない。その数字を伸ばさなければいけない」と言及していた。そして太田はその問題を解決する一つの大きなピースとなりうる存在である。昨年の東アジアカップ以来となる太田の選出に関しては「今回は(左サイドバックに)左利きの選手が必要だと思っている」と説明しており、高精度のクロスとセットプレーキッカーとしての活躍を含め、指揮官が太田の左足に寄せる期待は十分にうかがい知れる。

 もちろん太田自身も自分に求められているものは分かっている。「(メンバーに)入っていない時も代表の試合は見ていたし、なかなかセットプレーで入っていないのは実感している。予選では本当にセットプレーが重要になってくる。そこで自分の特徴を出せれば」と前を向く。

 ただし、決して順風満帆なわけではない。今回のメンバーでは酒井高徳(ハンブルガー)も左サイドバックに入ることができる。太田は所属のフィテッセで3試合出場がなく、ハリルホジッチ監督は期待を寄せると同時に「試合に出ていないので、出るかどうかは様子を見たい」としている。ハリルジャパンでの実績を考えれば、練習でのパフォーマンス次第で酒井高にチャンスが回る可能性は十分にある。もちろん太田も自らの置かれた立場を理解しており、「まずは試合に出られるように、明日の練習からアピールしていかなければいけない」と一日一日に勝負をかける覚悟だ。

「出番があるなしにかかわらず、しっかり準備をしてきた。簡単な試合は一つもないので、とにかく練習の中から一人ひとりが緊張感を持ってやっていかなければいけない。個人としてもチームとしても、しっかり結果を残したいという思いで日本に帰ってきた」

 昨年のアジア2次予選はシンガポールとの初戦で演じてしまったスコアレスドローの幻影を消し去るのに多くの時間を要した。ロシア行きの切符を勝ち取るために、ホームで行われる初戦で勝ち点3を得ることの重要性は言うまでもないだろう。流れの中で、そしてセットプレーで。一瞬で好機を生み出す彼の鋭い左足キックが果たす役割は大きなものとなるはずだ。

「舞台は整ったんで、頑張ります」と話してミックスゾーンを後にした彼の表情からは確固たる決意が感じられた。しっかりと試合で結果を出すために、希代のレフティがUAE戦に向けてのトレーニングで指揮官の目に自らの左足キックを焼き付ける。

文=青山知雄

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