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東京五輪金メダルへの構造改革…“飛び級招集”が変える日本サッカー界の未来とは

2016.03.11

大迫、橋岡、若原、伊藤(左上から時計回り)の飛び級選手がU-19代表合宿に参加[写真]=佐藤博之

 2017年のU-20ワールドカップ、そして2020年の東京オリンピックを目指すU-19日本代表が、3月6日から9日にかけて2016シーズン最初の強化合宿を東京都内で実施した。

 1997年以降に生まれた精鋭29名(MF佐々木匠/ベガルタ仙台は途中離脱)が集った合宿だが、このうち4名が1999年生まれの“飛び級”選手となった。日本サッカー協会の霜田正浩技術委員長が「リオ五輪代表も5世代から選手がピックアップされており、東京五輪も自ずとそうなる」という見立てもあって、飛び級での選手抜擢を積極的に行っていく方針。今回はGK大迫敬介(サンフレッチェ広島ユース)、若原智哉(京都サンガF.C.U-18)、DF橋岡大樹(浦和レッズユース)、MF伊藤洋輝(ジュビロ磐田U-18)の4選手が“飛び級”で招集されたが、今後も各世代の代表チームで下の年代から積極的に抜擢していく方針を固めている。

 U-19日本代表を率いる内山篤監督は「(飛び級は)普通のことなんです。これを継続してやっていくのが一貫した強化ということ」と言う。もちろん「呼ぶことがストレスになってしまうような(レベルの)選手を呼ぶつもりはない」(同監督)というのは大前提。ただ、似たような実力であれば、より伸びしろが大きい可能性の高い、下の世代の選手を抜擢していく流れは明確化されそうだ。9日に発表されたサニックス杯国際ユース大会に臨むU-17日本代表メンバーにFW久保建英(FC東京U-18)が飛び級で招集されているが、これもそうした流れの中にある施策だ。

 つまり“上級生”たちが下から突き上げを受けることになるわけだが、彼らに訪れているのはピンチではなく、むしろチャンスとも言える。合宿最終日の9日に行われた全日本大学選抜との練習試合には東京五輪ではなく、今年のリオ五輪を目指すチームを率いる手倉森誠監督も来訪。オーバーエイジならぬアンダーエイジ候補に熱い視線を送った。「当然、そこは意識していく」と公言してきたFW小川航基(磐田)は、ワンチャンスを確実にゴールへ結びつける先制点で猛アピール。リオ五輪ではトレーニングパートナーとして3名の東京五輪世代の選手がチームに帯同する予定だが、もちろんU-19世代にも正メンバー入りの門も閉ざされてはいない。

 ただ、そのために必要なのがJリーグでの活躍であることは言うまでもない。U-19日本代表ではエースストライカーとして結果を残し続けてきた小川も、磐田に戻ればベンチ外の選手に過ぎない。過去4大会連続して世界大会出場を逃している日本のU-19世代は、「高卒選手がJ入り後から公式戦に出られなくなる」という構造的な問題を抱えており、今回の世代も同様の問題に直面することが予想されている。まだ開幕2節を終えた段階とはいえ、出場機会を得ている選手はほとんどいない。DF初瀬亮(ガンバ大阪)の活躍といった明るい材料もあるが、早くも試合勘の低下を口にする選手もおり、全体としては不安もある。U-19代表が年明けから合宿を行わなかった理由も「まず新しいチームに慣れてほしい」(内山監督)という考えからで、レギュラーポジションを奪ってほしいという親心ゆえだが、そう簡単にはいかないのが現実だ。

 一つの解決策として、今季からFC東京、G大阪、セレッソ大阪の3クラブがU-23チームを保有して運用を始め、サテライトリーグも復活した。この効果がU-19代表についてどこまで出るかは、実に10年ぶりとなるU-20ワールドカップ出場権奪還に向けてのキーファクター。当然、金メダル奪取を目標に掲げている東京五輪での成否にも関わってくる問題だ。今回、下の世代にパイを広げたのは、プロ入り前の高校年代の選手ならば試合勘を失う心配がないという日本サッカー界のリアルな現実もある。

 もちろん、究極の理想はプロ入りした東京五輪世代の若手選手が続々とJリーグでレギュラーポジションを勝ち取っていくことであり、試合に出られない選手も意識高く日々を過ごしてもらってパフォーマンスを維持してもらえればいい。ただ、そう簡単にいかない可能性は高く、過去のU-19代表の敗北から学んでおく必要はある。大きく調子を崩すような選手が出た場合にも対応できる選手層を作りつつ、プロ入り後に新しく出てくる選手がいるなら積極的に取り込んでいく。東京五輪はもちろん、その先にある日本サッカーの未来のために、打てる手はすべて打っておくべきだろう。

文=川端暁彦

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By 川端暁彦

2013年までサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で編集、記者を担当。現在はフリーランスとして活動中。

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