独占インタビューに応えてくれた香川真司 [写真]=千葉格
ブンデスリーガ第12節終了時点まで全試合に出場して3得点、チームトップタイの5アシストと、今シーズン好調のドルトムントの爆発的な攻撃陣の一翼を担う香川真司。
マンチェスター・Uでの悔しさを胸に、栄光を手にした古巣へと帰還した昨シーズンは期待された成績を残せず、チームは7位に沈んだ。恩師であるユルゲン・クロップがチームを去り、新監督にトーマス・トゥヘルを迎えた今シーズンはチーム全体として、過去の輝きを取り戻すようなプレーを見せている。
ロシア・ワールドカップのアジア予選を戦う日本代表のエースとしても活躍が期待される香川真司に、『サッカーキング』では独占取材を敢行。その充実ぶりやブンデスリーガの戦い、さらにはプライベートまで幅広く語ってくれた。
短期集中の全5回でお送りする連載第3回のテーマは『自身のプレースタイル』『ライバルチーム』について。プレー中にどんなことを思考しているのか、最大のライバルであるバイエルンについてなどを語っています。
●インタビュー=岩本義弘
―――具体的なプレー面についてうかがいます。味方ディフェンスからボランチにボールが渡ったタイミングで、FWの近い位置に香川選手がいた時、まず何を考えてプレーしていますか?
香川 あまり考えてプレーすることはないですかね。基本的に考える時間を与えてくれないので。
―――後ろでボールが回っている時は、どういうポジションを取っているんですか?
香川 相手が嫌がるポジションを取ります。ビルドアップの段階ではボールを受ける必要がなく、どうすればボールを前に運べるかが一番大事なので、そのためのポジション取りですね。その中で、自分がボールを受けたほうがいいと判断すれば受けます。スペースを作る動きや、相手を引きつける動きが必要であればそうします。まずボールを前に運ぶために自分が何をするかですね。
―――ヨーロッパのリーグでも、スペースを作る動きをする選手は少ないと感じています。でも、香川選手は味方に対しても「こっちへ動いて、ここを空けろ」という指示をしている。それは特性だと思います。あえて相手にマークをつかせている、味方の人数が多い時には間に入っていくといった動きは考えているんですか?
香川 状況を見ての瞬時の判断ですね。今、どの選択肢が一番いいのかを考えてです。
―――考えるのではなく、体が覚えているということでしょうか?
香川 そうですね。練習の中で、そういったシチュエーションはくり返し出てくるので。その反復です。その場面に対しての技術があり、プレッシャーがあり。くり返して、イメージして、意識して、技術は後からついてくるので。
―――ブンデスリーガについてうかがいます。現在はバイエルンが強さを発揮しています。ブンデス最大のライバルであるバイエルンについて、香川選手から見て優れている部分、厄介だと感じる部分はどこですか?
香川 どこからでも攻撃ができますし、ボールの取りどころがない。さらに全選手が違いを作れ、ゴールも決められるので、誰がボールを持っても、相手チームにとてつもない緊張が走ります。実際、ここ1、2年のバイエルンと試合をする際は、なかなか味わえない緊張感を感じてますね。そういった試合をいつも経験できるなら、対策の立てようもあるのですが、年に数試合では対策を立てるのがすごく難しいのかなと。
―――とはいえ、マンチェスター・Uへ移籍する前はバイエルンを抑えて連覇を経験しています。当時と比較してバイエルンはレベルアップしていますか?
香川 当時もとてつもない強さを感じました。もちろん、(ジョゼップ)グアルディオラ監督になり、さらに質が上がっています。ボールの取りどころがないので、本当に隙がないですね。
―――世界で見てもトップクラスのクラブが同じリーグにいると、やりがいがある反面、厳しさもあります。
香川 大変ですね。そういう対戦で競った試合ができれば、リーグ全体ももっと楽しいものになると思いますし、そういった試合で内容も上回って勝てれば、最高の喜びにつながると思います。
―――ブンデスリーガとプレミアリーグを経験したからこそわかる違いは何ですか?
香川 個の力では圧倒的にプレミアが高いですね。ただ組織的には間違いなくブンデスです。攻守においてのプレスや、チームへの犠牲心、そういう組織力はメンタリティもそうですが、サッカーにおいても組織的にも統一されているので、日本人に向いているのかもしれません。
―――チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグといった欧州の戦いを見ても、相手が上でも、ドイツのチームは諦めません。
香川 そういう強さはあります。CLもELも最後の部分でブンデスのチームはやはり強いですね。結果を出し切るメンタリティを持っていると思います。