10月の代表戦に招集された柏木陽介。11月も選出されボランチ争いに名乗りを上げた [写真]=兼子愼一郎
11月に行われる2018年ロシア・ワールドのカップアジア2次予選・シンガポール(12日)&カンボジア(17日)のアウェー2連戦に向け、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いる日本代表が8日、千葉県内で始動した。この日は7日にJ1の試合を戦った国内組11人のみが参加。8日にJ2の試合がある山口蛍(セレッソ大阪)と欧州組11人は9日以降に順次、合流することになる。
冷たい雨の降るグランドに10時半少し前に到着した選手たちは、恒例の屋外ミーティングの後、25分間のランニングとストレッチを行っただけ。練習時間は1時間足らずという短いものだった。指揮官は少しでも選手たちと一緒に過ごす時間を設けたいと考え、1日早い招集に踏み切ったのだろう。練習前にはハリルホジッチ体制初招集の金崎夢生(鹿島アントラーズ)と林彰洋(サガン鳥栖)を呼んで個人的に指示を送る場面も見られ、コミュニケーションを重視する姿勢は相変わらずだった。
今回は新顔の金崎や林のほか、復帰組の遠藤航(湘南ベルマーレ)や丸山祐市(FC東京)、藤春廣輝(ガンバ大阪)らが加わり、チーム内のサバイバルは一層激化した。10月のシリア(マスカット)・イラン(テヘラン)の2連戦でハリルホジッチ監督に初めて呼ばれ、「ウラワと呼ばれている」と冗談交じりに語っていた柏木陽介(浦和レッズ)も、今回のチャンスを確実にモノにしたいと考えている1人。
「僕にとってはこのワールドカップが最後。前回の合宿からホントに全力を出してやって、ここに残ることを重視してやってきた。今回は残ることもそうですけど、出ることを中心にプレーしたい。自分のよさは前の練習では出せたと思ってるんで、今回も練習からしっかりやって、自分のチャンスが来るまでいい準備をしたいなと思います」と強い覚悟を改めて口にした。
2007年U-20ワールドカップ(カナダ)に出場した頃、柏木は日本のエースナンバー10をつける絶対的司令塔だった。香川真司(ドルトムント)や森重真人(FC東京)でさえ、柏木や梅崎司(浦和)らの間を割って入れずに控えに甘んじていたほどだ。それだけの逸材ということで、岡田武史監督(現FC今治代表)が率いた2010年1月のイエメン戦(サナア)で初キャップを飾るのも自然の流れだった。が、アルベルト・ザッケローニ体制移行後は、2011年アジアカップ(カタール)でトップ下に使われて思うような仕事ができず、それを境に代表から遠ざかってしまう。当時の柏木は心身ともに好不調の波が大きい印象が強かった。
「その時と今の気持ちは違うし、代表へのモチベーションも全然違う。今のサッカーに対する気持ちの方が当時より強いし、あの頃は『これくらいでいいや』って気持ちでやっていた。あんまりサッカーも楽しくなかったんじゃないですかね。今は楽しさを感じているし、やっぱワールドカップというピッチに立ちたいという気持ちでやってるんで。ポジションもアジアカップの時はトップ下だった。自分はボランチじゃないと代表の位置は取れないと思ってたし、こうやってボランチで選ばれるのが狙いやったから。今、それができたんで、頑張りたいと思います」と柏木は心境の変化を口にする。
日本代表ボランチはご存じの通り、キャプテンの長谷部誠(フランクフルト)が目下、第一人者で、2014年ブラジル・ワールドカップ全3試合出場の山口、U-22日本代表キャプテン・遠藤が追走する形になっている。そこに経験豊富で創造性溢れるレフティ・柏木が加わることで、チームに一味違ったバリエーションが生まれるのは確かだ。
「長谷部さんと蛍君を脅かす存在になりたいとは前から言ってますけど、陽介君とかいろんな選手が入ってきた方がチームにとってはいいと思いますし、僕もそれに負けないようにやるだけです」と遠藤も新たな刺激を受けている様子だった。
左利きのボランチの希少価値を前回以上にハリルホジッチ監督に認めさせられれば、柏木のロシア行きの道は確実に開けてくる。そういう方向に持っていけるように、この2連戦では彼の爆発をぜひ期待したい。
文=元川悦子
By サッカーキング編集部
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