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日本代表の強化は「点」ではなく「線」…今後への価値を持ったイラン戦

2015.10.15

イラン戦で入場する日本代表 [写真]=兼子愼一郎

 代表チームの強化は、「点」ではなく「線」で考えるべきだ。

 前回のゲームで浮き彫りになった課題を、次のゲームで克服することができたのか。克服するには至らなくても、そのきっかけをつかむことはできたのか。選手のテストは進んでいるのか。選手層は厚くなっているのか。1試合という「点」に一喜一憂するのではなく、ターゲットとする目標への「線」の上で、その時々のゲームを評価していかなければならない。

 10月に行われた2試合は、その意味で悪くないものだった。

 8日に中立地(オマーン)で行われたシリア代表とのロシア・ワールドカップ、アジア二次予選は、3-0の快勝に終わった。前半はハイペースで挑みかかるシリアに押し込まれるシーンもあり、失点につながりかねないピンチに直面した。とはいえ、相手のオーバーペースを見越した選手たちの冷静な状況判断は、勝利への確かな布石となっている。0-0のまま好機を作れない前半のピッチには、GK西川周作の「我慢強く戦おう!」といった指示や、CB槙野智章の「(ボール回しを慌てずに)やり直そう!」という声が響いていた。

 3ゴールを奪った後半の変化には、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の戦術的アドバイスがあったと言われている。2列目がサイドに開いていた前半を受けて、本田圭佑原口元気がより中央へポジションを取り、アタッカー陣の距離感を短く改善した、というものである。試合後の選手たちも、ハーフタイムに指示があったと明かしていた。

 日本らしいパスワークを発揮するために、距離感が重要となるのは間違いない。

 その一方で、両サイドが開くことのメリットもある。日本選手の立ち位置に合わせて、相手守備陣もサイドへ開く。こちらは距離感の近いパスが難しくなるが、相手守備陣はチャレンジ&カバーの関係が成立しにくくなる。サイドに開くことにもメリットを、なぜ引き出すことができなかったか。引き出せないのであれば、前半のうちに距離感を修正する働きかけがあってもよかった。ハリルホジッチ監督の就任から半年強のチームは、攻撃のメカニズムを構築するにいたっていない。それでも、ピッチ上での柔軟な対応を求めたかったところはある。

 後半の得点パターンは示唆に富む。

 55分の先制点は、1本のタテパスから生まれた。シンプルなタテパスを織り交ぜることで相手守備陣を後退させ、それによって敵陣にスペースが生まれる。ショートパスが際立つ。先制のPKを生み出した岡崎のフリーランニングは、その後の攻勢の足掛かりにもなっていたわけだ。

 70分の2点目は、直接FKをきっかけとした。これまで得点機につながる確率の低かったリスタートからネットを揺らしたのは、3月のチュニジア戦から始まる「線」において、今後につながる変化であり好材料である。

 3点目はコンビネーションから生み出した。すでにオープンな展開となっており、敵陣にスペースを見つけやすかった。そのなかでも、清武弘嗣のスルーパスと本田のヒールパス、さらには宇佐美貴史のフィニッシュのいずれもが申し分のないものだった。

 5日後の13日に行われたイランとのテストマッチは、評価が分かれている印象だ。

 ハイライトシーンを抜き出せば、日本が相手ゴールへ迫ったシーンもある。だが、自分たちのペースへ持ち込めないと、ボールを回すことが目的化してしまう悪癖が、この日も顔をのぞかせていた。シリア戦はそれでもタテへボールを運べていたが、イラン戦は攻撃のスイッチを見つけられない印象を引きずった。

 相手の熱量を考えても1-1という結果は妥当で、幸運に恵まれたとも言える。武藤嘉紀の同点弾は、イランの“アシスト”に恵まれたものだった。

 個人的に評価したいのは、先発の顔ぶれである。

 左サイドバックに米倉恒貴、センターバックに森重真人、ダブルボランチに柴崎岳、2列目の左サイドに宇佐美貴史、1トップに武藤嘉紀と、ハリルホジッチ監督はシリア戦からスタメンを5人入れ替えた。シリア戦に出場した清武も後半開始から起用され、丹羽大輝柏木陽介も後半途中からプレーした。南野拓実をもう少し長く見たかったが、バックアップ層の見極めは進んだ。W杯予選突破という「線」の上で、イラン戦はこれから価値を持っていくだろう。

 収穫と呼べる選手が、必ずしも登場しなくてもいい。今後も戦力として見込める選手を探すと同時に、次回以降は違う選手をテストすべきポジションをはっきりさせるのも、テストマッチの目的に含まれるからである。

文=戸塚啓

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By 戸塚啓

スポーツライター。法政大学法学部法律学科卒。サッカー専門誌記者を経て、フリーランスとして20年以上にわたってスポーツ現場を取材。日本代表の国際Aマッチは、2000年3月からほぼ全試合を現地取材。

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