テヘラン市内でトレーニングを行った長友佑都 [写真]=元川悦子
文=元川悦子
8日の2018年ロシア・ワールドカップ アジア2次予選・アフガニスタン代表戦(テヘラン)に向け、5日に現地入りした日本代表。イラン2日目となる6日は、17時から同市内のパス・スタジアムで非公開練習を実施し、またしても引いて守ってくると見られる相手を想定した攻撃の戦術確認を入念に行った模様だ。
この日の現地は17時時点で陽の当たる地上の気温が43度まで上がる猛暑。湿度は計測不能となるほど乾燥していた。初日のトレーニング後、吉田麻也(サウサンプトン)ら数人が「喉がカラカラになる」と訴えていたが、その環境面が日本に立ちはだかる壁になるかもしれない。選手たちのアウェー適応力が今、ここで問われることになりそうだ。
3日のカンボジア戦(埼玉)では、本田圭佑(ミラン)と吉田がミドル気味のシュートを決め、香川真司(ドルトムント)がこぼれ球を押し込む形で3点目を奪ったが、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が強調していたクロスからのゴールは生まれなかった。前半は右サイドの酒井宏樹(ハノーファー)、後半は左サイドの長友佑都(インテル)が積極果敢に攻め上がって中に折り返したが、出し手と受け手のタイミングが合わずじまい。
同じ左サイドを争う米倉恒貴(ガンバ大阪)に「この前、初めて間近で見て、ホントに驚くくらい走っていたし、あれだけ最後にクロスを上げられるのはすごい」と言わしめた長友。だが、「もっともっと精度を高めたら倍以上取れた試合だったんじゃないかと。サッカーは難しくて、あれだけ引かれたら、実力差、1人1人のレベルが違ったとしても、難しい試合になるので、3-0というのは結果としてよかったけど、内容を見ると反省しないといけないと思います」と口をついて出るのは不完全燃焼感ばかりだった。
これを糧に次のアフガニスタン戦に臨むわけだが、長友には前回以上の破壊力を発揮してもらう必要がある。そのためにも、今回もタテ関係の陣取ると見通しの武藤嘉紀(マインツ)との関係改善は重要なテーマ。カンボジア戦以上にスムーズで息の合ったコンビネーションを見せなければならないのだ。
武藤は長友との連携について「後半になってからは左が空いてきたので、2人でどんどんボールに絡んでいこうと話しました。佑都君のDFがピッタリついていたので、自分が中にカットインして中にパスをするとか、そういう選択をしました」とコメントしていたが、その結果、長友が中に切れ込んでゴールを狙うような場面は減ってしまった。
「僕は前の選手が気持ちよくプレーできるようなサポートをしたいと思っていて、武藤にも『僕をおとりにしてどんどん入っていってシュートを打て』、『狙っていけ』と言っています。逆に自分が上がらない方がいい場面もあるし、そこはもっとコミュニケーションを取ってやっていきたい」と後方支援重視の姿勢を強めている。しかし、そのスタンスが彼の強引さや怖さを消している嫌いがあるのもまた事実だろう。
実際、直近の代表戦ゴールは2009年10月の2011年アジアカップ(カタール)予選・香港戦(清水)と6年近くも前。2008年に初キャップを飾ってからの1年半で3ゴールを奪ったが、その後は得点を叩き出すことがなくなった。「正直、ゴールはどっちでもいいんですよ。僕にとってはおまけなんで。チームに貢献できるように頑張ります」と本人はどこまでもフォア・ザ・チーム精神の強さを強調するが、同じポジションを争う国内組の米倉や太田宏介(FC東京)はJリーグの舞台で自らゴールを叩き出している。インテルで今季プレシーズンに複数ポジションにトライした長友だからこそ、より得点に直結する仕事をしてほしいのだ。
アルベルト・ザッケローニ監督時代、長友と香川が形成する左サイドは「日本の生命線」と言われた。それは2人が対戦相手に脅威を感じさせていたからだ。武藤と長友のコンビもそうならなければいけない。世界を知り尽くしている長友にはそのけん引役になってもらいたい。そういうインパクトの大きなパフォーマンスをアフガニスタン戦で示し、日本を大量得点勝利へと導いてほしいものだ。
By 元川悦子