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韓国に喫してきた負の歴史に歯止めを…勝利へ闘志を燃やす宇佐美貴史

2015.08.05

韓国戦の前日練習に臨んだ日本代表FW宇佐美貴史 [写真]=兼子愼一郎

文=元川悦子

 若手で挑んでいるなでしこジャパンが北朝鮮、韓国に連敗し、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いる日本代表も2日の初戦・北朝鮮戦で逆転負けを喫するなど、日本勢の大苦戦が続いているEAFF東アジアカップ2015(武漢)。負の連鎖にストップをかけるためにも5日に行われる男子の日韓戦では是が非でも勝利をもぎ取る必要がある。

 そんな日本代表は決戦前日の4日、武漢全民健身活動センター内の練習場で19時から1時間15分程度の軽い調整を実施。大一番への臨戦態勢を整えた。

 トレーニングは恒例の屋外ミーティングを約5分間行うところからスタート。今回も前日同様、北朝鮮戦に先発したフィールドプレーヤー10人とそれ以外のメンバーに分かれて練習が進んだ。前者はランニングや狭いエリアでのパス回しなど負荷の軽いメニューだけだったが、後者は5対5+GKなど実践的な内容を多く盛り込んだ。

 ハリルホジッチ監督は先に上がった宇佐美貴史ガンバ大阪)や武藤雄樹浦和レッズ)ら前者のグループの報道対応に注文をつけることはなかったが、興梠慎三(浦和)や柴崎岳鹿島アントラーズ)ら後者のグループには「早く引き上げろ」と指示。報道陣の要望に応えて自らが取材対応している間に選手をバスに乗せ、スムーズに帰ってミーティングを行えるように仕向けた。あくまでスケジュール的な事情とはいえ、突然の取材制限に踏み切り、しかも後者グループの行動に神経を尖らせたことを考えると、明日の韓国戦ではメンバー総入れ替えも十分あり得そうだ。

 その場合、スタメンはGK東口順昭(G大阪)、DF(右から)米倉恒貴丹羽大輝(ともにG大阪)、水本裕貴サンフレッチェ広島)、太田宏介FC東京)、ボランチ・米本拓司FC東京)、藤田直之サガン鳥栖)、右FW浅野拓磨(広島)、左FW倉田秋(G大阪)、トップ下・柴崎、1トップ・興梠という陣容が有力視される。それでも北朝鮮戦で先に交代した宇佐美貴史(G大阪)は先発、もしくは早い段階で途中出場する可能性が高い。指揮官が同選手を得点力不足解消の切り札と位置づけているのはほぼ間違いないだろう。

「(監督から)クローズアップされた部分はフィニッシュの部分と最後の守るところ。失点シーンを含めて簡単にやられている部分があったのでそのへんの修正と、攻撃では決定機は多く作れていたのでどう決めるかという話がありました。フィニッシュに関しては、試合前のアップがスタジアムでできないんで、シュートのフィーリングが前の選手にとってはすごく難しかったかもしれない。でも1試合やってる分、どういう当て方をすればいいかっていうのはだいたいつかんでるとは思う。この間の試合のみたいにはならないようにしたいですね」と宇佐美はより気合を入れてシュート精度を高めていく覚悟を示していた。

 韓国戦に対する意識も特別に強いものがある。宇佐美は同じ中国で開催された2010年10月のAFC・U-19選手権の準々決勝・韓国戦に先発出場したが、屈辱的な逆転負けを喫し、世界切符を逃す悔しい思いをした。さらに2012年ロンドン・オリンピック3位決定戦(カーディフ)でも後半20分からピッチに立ったが、切り札になりきれず、メダルを逃した。

「韓国には悔しい思いをさせられてますし、(年代別代表で負けた)その悔しさはやっぱり忘れてないんで、チームとして勝てるように。明日勝たないと優勝っていう目標も見えてこないんで、自分たちに優勝っていう選択肢を残す意味でも明日は絶対勝ちたいです。やっぱり韓国戦はいつも以上に熱く戦わないと相手に気持ちで飲まれてしまうところがある。まずは気持ちで上回ることが大事かなと。その中で技術でも戦術でも上回れれば勝ちは見えてくるわけで、でしっかり気持ちを見せた戦いはしたいなと思っています」と宇佐美は過去のさまざまな出来事を思い描きながら、しみじみとこう語っていた。

 自分自身が経験してきた負の歴史に歯止めをかけるのは今しかない。どういう形で出番が来てもとにかくゴールを奪う。それが宇佐美貴史に託された最大の仕事だ。


By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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