ベネズエラ戦で得点した武藤(背)と喜ぶアギーレ監督 [写真]=Getty Images
アルベルト・ザッケローニ監督の日本代表は、前任の岡田武史監督が築いたチームを引き継いだモノだった。正確に言えば、南アフリカ・ワールドカップ前の方針転換以前に岡田監督が目指していたチームを引き継いだチームとなった。わずか半年後のアジアカップで大きな戦果をあげたのも、「継続」あってこそだったと言える。
その意味で言えば、ハビエル・アギーレ監督の新生日本代表は苦しいかもしれないとは思っていた。ブラジルW杯の日本代表メンバーの最年少は今年度に24歳となる大迫勇也や酒井高徳の学年だった。彼らが4年後に27、8歳であることを思えば、世代交代は必須の状況。メンバー入りを逃した選手にも、この下の世代がほとんどいなかったことを思うと、産みの苦しみが生じるのは半ば必然だ。
まずは世代交代を進めていく。そのメッセージはこの9月シリーズで強烈に残せたと言えるだろう。アジアカップも意識してベテラン組は残しつつも、新しい血を入れていく。その傾向は恐らく10月、11月のシリーズでも継続されるはずだ。いや、むしろアジア大会に臨むU-21代表メンバーをセレクトできる10月以降は、より急進的な選考もあるかもしれない。
ウルグアイ戦とベネズエラ戦で共通したのは、軸となるベテランを残しつつ新たな個性を織り交ぜるというバランスを意識したセレクションだった。これはあくまでアジアカップを意識しての布陣だと思うが、残りの4試合でそれを固めていくこととなりそうだ。
コーチとして間近でその指導を目撃したU-21代表の手倉森誠監督は「全部をいきなりやるのではなくて、段階を踏んで落とし込んでいこうとしている」と察していた。この9月シリーズで指揮官の戦術について云々するのは恐らく時期尚早で、見えてきたのはあくまでセレクションの基本方針ではないか。
まずは世代交代をしつつ、「残すベテランは誰か」を定めていく。そして残ったベテランは、「アジアカップ用に残す選手」と「4年後に向けても残す選手」へ、さらに選別されていくはず。日本代表は大きな過渡期を迎えようとしている。アギーレジャパンの初陣は、そんな印象をより強くするモノだった。
文=川端暁彦